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Ryoのことで里中くんと打ち合わせをしているとおもむろに「ウッザー大丈夫ですか?残業とか一人で残るのは危ないですよ」と言ってきた。
「いくら何でも」
「いやいや、絶対ヤバいです。なるべく僕が一緒に残ります」
「それは悪いわ」
「大丈夫っす、奥山さんといると勉強になりますから」
やっぱりよくわからない子だけど、正直助かる。
リフレッシュルームでの宇座課長の態度を思い出すと鳥肌が立ってきた。
「Ryoさんとは契約書の取り交わしをしてからデザインに入ってもらうけど引き続き里中くんに担当してもらうね。それから、いい年してあれだけど課長の事はお願いします、実は」
自意識過剰かと思われそうだが、リフレッシュルームのことを話すと、里中くんの表情が一瞬険しくなった。
「ちゃんと記録をとった方がいいですよ」
ポケットからボイスレコーダーを取り出して見せながら「昨日買ったばかりだけど、早々に役にたったみたい」と答えると、里中くんは親指を立てると「ナイスっす」と言って笑った。
本当によくわからない子だけど、可愛いかもしれない。
里中くんと一緒に行動することが多くなり数日は宇座課長も言葉だけのハラスメントで済んでいる。
てか、それだって本当はダメだけど。
凌太からはほぼ毎日のようにラインが来る。
特に何かというわけじゃないが、大体はお疲れとかおやすみとかそんな程度だ。
私は就職が決まり凌太は語学留学の為にニューヨークへ行った。
あの頃の凌太は何かとても焦っているように見えて、語学留学と言いながらニューヨークを起点とした人脈作りのため忙しく飛び回ることになると言っていて連絡はあまり取れないが1年後には必ず戻ると言っていた。
私も、器用ではないから新入社員として仕事を覚えるので必死で毎日帰宅するとシャワーを浴びてベッドにダイブする日々だった。
最初の頃はそれこそおはよう、おやすみのラインをしていたけどいつの間にかそれもなくなった。
ただ、一年後には戻るという言葉を信じて、それまで私も必死に仕事を覚えて凌太が帰国する日には成田に迎えに行こうと思っていた。
凌太の母親が現れるまでは。
凌太にお休みとメッセージを送るとスマホをベッドヘッドボードの上に置くとベッドに潜り込んだ。
少しウトウトし始めた頃、バイブ音が響く。
木製のヘッドボードの為、よく響く。
アラームならばちょうど良いが、これから眠りにつこうと思う時には結構鬱陶しい。
凌太なら“おやすみ”と返した後は何も送って来ないはずだ。
誰だろう?
手を伸ばして見てみると正人からだった。
無視をして明日の朝に見ようと思ったが何となく気になってサイドライトをつけて見てみる。
[夜遅くにごめん]
[悪いと思ってるけど、どうしても話を聞いてほしい]
[おれなんかと会いたくないと思うけど会ってもらえないか]
[今でも瞳が好きだけど、復縁を求めたりしないから相談に乗って欲しい]
[本当にごめん]
[母さんのこともごめん]
遅くにごめんと言いながらこんなに連続して送ってくればうるさいに決まってるじゃない。
本当に自分勝手なんだから。
里子に言ったらきっと甘いと言われるんだろうな。
[明日の午後8時◯◯駅で、もう寝ているので都合が悪かったら明日の朝返事して]
それだけ送信してスマホをヘッドボードに載せるとサイドランプも消して寝る体制に入る。
ブブッカカカカッ
だから響くんだって、布団を頭から被るとその後も続くバイブ音を無視した。
朝めが覚めてスマホを確認すると
[ありがとう]
[瞳に合わせるから大丈夫だよ]
[色々とほんとごめん]
[明日楽しみにしてる]
最後の言葉にデートじゃねえし!とツッコミたい気持ちともう寝てるからと送ったにもかかわらず、短い言葉を連続で送ってきていたことに殺意が沸々と湧いた。