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「――俺の彼女に、何してんだ」
背後から低く響いた声に、男の手が止まった。
咲が振り向くと、浴衣姿の人混みの中に、悠真が立っていた。
鋭い視線を向けられた男は、気まずそうに肩をすくめて手を引っ込める。
「な、なんだよ……彼氏持ちかよ」
そう言い捨てて、雑踏の中へと消えていった。
「……っ」
咲の胸はドキドキと暴れるように高鳴っていた。
悠真は彼女を一瞥し、息を整えるように小さく吐息をもらす。
「悪い。遅れた。……怖かったろ」
咲は首を横に振ったけれど、顔の熱はどうしてもごまかせなかった。