テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……さっきの、あれ」
悠真が少し気まずそうに口を開いた。
「とっさに出ただけだ。ああ言えば、あいつも引くだろうと思って」
「……はい」
返事をしながらも、咲の胸は落ち着かない。
(“彼女”って……私のことを、そう呼んだ)
悠真は咲の顔を見て、小さく笑った。
「でも、本当に大丈夫か? 怖かったら言えよ」
「……大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございます」
震える声でそう伝えると、悠真はようやく安心したように頷いた。
「それより、探してた友達だろ? 一緒に探すか」
人混みの喧騒の中、二人は並んで歩き出した。
咲の心臓の鼓動は、祭囃子よりも大きく響いていた。