メイが所属する軍隊は都、武蔵帝都へと足を踏み入れた。
彼らが帰る場所は「武蔵帝都軍(むさしていとぐん)」と書かれた堂々たる軍の施設。
部隊が施設に到着すると、部隊長の蓮がメイに近づき、
淡々と命じた「おまえは、医務室で見てもらえ。」
メイは「はい」と返事をした。
蓮は隊員に向かって、「本日は大臣が会食のために訪れる。
周辺の警備は万全を期すように!それでは、解散」」と言い残し、足早に立ち去った。
翔太がメイに声をかける。「メイ、俺は先に部屋に戻る。また後でな。」
メイは小さく返事をした。「うん...」
施設の地図を確認し、メイは医務室への道を探した。
(広いなぁここ、なんか学校みたい)
「あ、あった」そして、医務室のドアを開ける。
ガラガラ
「あの~」
奥からナース服の女性が来た「はーい、今日は何ですか?ケガ?それとも...♡」
出迎えてくれたのは、妙に色っぽい女性看護師だった。彼女はメイの首に腕を回し、
顔を近づけてきた。メイは戸惑いを隠せない。「えっと..あの..」
その時、奥から男性の声がした。「こらこら、アイちゃん青少年をからかうなよ。」
声の主は白衣を着た、白く長い髪を持つ、非常に美しい顔立ちの男性だった。
メイは思わずドキッとして、下を向いてしまう。
看護師のアイはからかうように言った。「あれ?私より和真(かずま)先生を見て顔が真っ赤になってるぅ!」
和真は優しく言った。「もういいから、さあ今日はどうしたの?」
メイは部隊長の蓮に言われて医務室に来たが、どう説明すればいいのか分からなかった。
自分が一度飛び降りて、気づいたら部隊の中にいたなんて...誰が信じるだろう。
メイは何も言えず、下を向いたままだった。
和真はメイの様子を見て、「どこもケガはなさそうだね。一応診察だけしとくね。上着を脱いで。」
緊張で声が震えるメイが、「え、は、はい」と小さく答えた。
和真の端正な顔立ちを見上げると、心臓が早鐘のように打ち始め、頬が熱くなるのが自分でも分かった。
彼女は上着のボタンに手をかけたが、恥ずかしさで指が震え、なかなかボタンを外せない。
和真は医師としての落ち着きを保っているが、メイはそんな彼を前にして、思春期特有の
照れくささと戸惑いに包まれていた。彼女は自分が恥ずかしがっている姿を和真に
変に思われてしまわないかと心配しながらも、何とかボタンを外そうともがいていた。
アイがため息をつきながらボタンを外してくれた。「もう、何やってるの。」
そして、和真の聴診器がメイの胸に当てられた。メイはふと和真の後ろにある鏡を見た、そこには
自分ではない誰かが映っているのを見て、思わず立ち上がり、鏡に向かって叫んだ。
「誰?う、うそでしょ。」
鏡に映っていたのは、上半身裸の少年だった。紛れもなく、それは自分自身だ。
メイは震える声で言った。「私...男の子に...」
アイは和真に向かって心配そうに尋ねた。「先生、この子どうしたのかしら?」
和真は静かに答えた。「...混乱しているようだね。」
その瞬間、メイは力尽きて床に倒れてしまった。
メイは頭の中が混乱していた。彼女は確かに、学校の屋上から飛び降りたはずだった。
その瞬間の感覚は、彼女の記憶に鮮明に残っている。しかし、目を覚ました時、
彼女が見たのは軍隊の中だった。そして、目の前に魔獣が現れ、その次は、
自分が男の子の体であることに気づく。
これはきっと夢に違いない──。頭の中で何度も繰り返しながらも、メイは目の前の現実から目をそらせなかった。
なぜ、自分の体はこんなにも大きくて、ゴツゴツとした男の体になっているのだろう?
もし、これが夢じゃなかったら……? 私は、全く知らない世界で、これから男として生きていくことになるの?
そんな信じられない思いが、とめどなくメイの心に押し寄せた。
どうすればいいのか分からず、ただ混乱するばかりだった。
しかし、その時、メイの心の奥底から、ふつふつと何かが湧き上がってくるのを感じた。
それは、昼間、森で出会った恐ろしい魔獣の目を見た瞬間に感じた感覚によく似ていた。
怖さだけではない。それは、自分がまだ知らない、自分の中にある「何か」が目覚めようとしているような感覚だった。
それが何なのかは分からなかったけれど、この状況にも負けない、
新たな勇気のようなものが内側から湧き上がってくるのを感じたのだ。
「この感覚は、いったい何なんだろう?でも……」
もし、本当にこのまま目覚めて、自分が全く新しい存在としてこの世界に立つこと
になったとしたら。今の自分は、過去の自分とは違う。この新しい体、
この新しい感覚を持って、自分は過去の自分を超えて、新しい自分を見つけ出すことができるのだろうか……?
様々な思いが頭の中を駆け巡っていると、突然、部屋のドアが開く音がした。
そこには、看護師のアイが立っていた。
「あ、目が覚めたね。先生が今日の会食の護衛は休みなさいって」
メイは返事をする前に、もう一度鏡を見た。そこに映っているのは、確かに自分だったが、
昨日までの自分とは全く違う姿だった。「いいえ、私、行きます。」そう言って、メイは上着を着て医務室を出た。
新しい体、新しい世界、そして新しい自分。全てが未知であるが、メイはその一歩を踏み出す勇気を見つけた。
これからの彼女の物語は、まだ誰も知らない。
人物紹介
氷室 和真(ひむろ かずま)24歳
氷室和真は、医師兼医務官で、優しく穏やかな性格を持つ。
その美しい顔立ちは見る者を魅了し、彼の存在にはある種の儚さが漂う。
患者に対しては常に心を込めた治療を行い、その専門知識と共感性で心身ともに
癒しを提供する。氷室和真の落ち着いた対応と細やかな気配りは、同僚からも尊敬されている。
白石 アイ(しらいし あい)
白石アイは、氷室和真のもとで医務室で勤務する看護師。
彼女の可愛らしい外見と愛嬌のある振る舞いで、軍隊内の男性たちから圧倒的な
人気を誇り、まさにアイドル的存在。患者への優しさとプロフェッショナルなケアで
同僚からも尊敬されている。白石アイの明るさとエネルギーは、医務室の雰囲気を和らげ
患者たちに安心感を与えている。
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