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仕事を終えて帰宅した夜。
部屋に入った瞬間、山中柔太朗はソファに倒れ込んだ。
「疲れた……」
「おつかれ、柔太朗」
後ろから抱きついてきたのは、佐野勇斗。
ネクタイを緩めた勇斗は、会社で見せる完璧な社長の顔なんてもうどこにもない。
完全に恋人モードだ。
「重い……」
「充電中」
「スマホかよ」
くすっと笑った柔太朗の肩に、勇斗が顔を埋める。
「今日もかわいかった」
「会社でそれ言わないでって何回も言ってる」
「言ってないじゃん。ギリ耐えた」
「顔に出てる」
「柔太朗が悪い」
「は?」
理不尽すぎる言い分に柔太朗は振り返る。
すると勇斗がその隙を逃さず、軽くキスを落とした。
「……っ、急にするなって」
「ただいまのキス」
「子供か」
そう言いながらも、柔太朗は嫌がらない。
むしろ少しだけ勇斗の服を掴む。
その小さな仕草だけで、勇斗は簡単に甘くなる。
「今日、一緒に寝る?」
「毎日一緒に寝てるだろ」
「ぎゅーってして寝たい」
「……好きにすれば」
許可が出た瞬間、勇斗は嬉しそうに笑った。
その夜。
ベッドの中で、柔太朗は勇斗に後ろから抱き込まれていた。
「はやちゃん、暑い……」
「柔太朗が離れたらもっと暑い」
「意味分かんない」
首筋にキスされて、柔太朗がびくっと肩を揺らす。
「ん……」
「ここ弱いよね」
「うるさい……」
勇斗は楽しそうに何度も軽く口づける。
そのたびに柔太朗が小さく反応するから、かわいくて仕方ない。
「…明日も仕事なのに」
「うん」
「絶対寝不足になる」
「うん」
「……なのにやめないの?」
「柔太朗がかわいいから無理」
「……ばか」
結局そのあとも、キスされて、抱きしめられて、甘やかされて。
眠ったのは深夜だった。
──翌朝。
「柔太朗、起きて」
「……ん……」
勇斗に頬をつつかれ、柔太朗は重たい瞼を開ける。
「朝ごはんできてる」
「……眠……」
「昨日あんなかわいい声出してたのに?」
「っ!!?」
一瞬で目が覚めた。
「朝から何言ってんの!?」
「事実」
「言うな!」
真っ赤になった柔太朗を見て、勇斗が楽しそうに笑う。
そのまま二人で家を出て、並んで通勤する。
もちろん会社の近くでは少し距離を取る。
恋人だとバレないために。
けれど電車の中で、勇斗が何気なく耳元に近づいて囁いた。
「今日も首、赤くてかわいい」
「……っ!」
昨夜、何度もキスされた場所。
慌ててマフラーを引き上げる柔太朗を見て、勇斗は肩を揺らして笑う。
「隠すの遅い」
「誰のせいだと思ってんの……!」
「俺」
即答。
柔太朗は悔しくて睨むけれど、結局その優しい笑顔に弱い。
しかも昨夜のことを思い出すたびに、勇斗の腕の中の温度まで蘇ってくるから余計に恥ずかしい。
「……今日、俺らのオフィス来んなよ」
「え、無理」
「即答すんな!」
「だって柔太朗見たいし」
そんな会話をしながら歩く二人は、周りからしたらただ仲のいい社長と社員。
でも本当は——
昨夜、何度も「好き」って囁き合っていた恋人同士だった。
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