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「ーー様、エリナ様」


侍女のロゼは窓の外をボンヤリと眺めるボンハーデン公爵1の姫(長女)エリナーミア•ボンハーデンを心配した面持ちで見つめている。

それをハタと気が付いたエリナは、ロゼを安心させるように小さく微笑み

「ごめんなさいね。大丈夫よ」

と寝起きの髪をかきあげた。


エリナの父はこの国の宰相を勤めている。上に兄が2人いて、18歳の長男は王都にある学園へ通い寮生活をしているのでボンハーデン家がおさめるグラハムの領地には月に一回あるか無いかで帰郷する。現在は母が領主の仕事をしているがいずれは家を継ぐつもりでいる。15歳の次男は剣の才に恵まれ、幼馴染の剣術の名門家系の長男と剣術の修行にはげんでいた。彼もまた王都の学園で寮生活を送っている。


「エリナ様、昨夜は何かありましたか?」

疑がわずにはいられないのは、以前のエリナはわがままが目立つ少女であったからだ。

今年で11歳になろうとしていたエリナは、末っ子で一人娘という事もあり甘々に育てられた。両親は勿論、兄2人も溺愛ぶりである。

次に父が邸宅に帰ってきたら、ロゼを外して、何でもいう事をきく、エリナに従順な侍女に変えてもらおうと考えていた。そんな悪さが神の耳に届いたのか「われてしまう」と思うほどの突然の頭痛に襲われ、ベッドに転がりもがいていた。七転八倒、この痛みに声も出せない。きっとくも膜下かも知れない。などと思った後、くも膜下って何よ。と突っ込む自分がいた。額から冷や汗が流れ落ち、あまりの痛さに気絶するすんでで、とある事に気が付いた。家族はどうなったのだろう?そう思った途端に、さっきまでのあの辛い痛みが、すーっと薄れていった。

エリナの以前の人生は52歳の主婦で1人娘と男女の孫に恵まれていた。その時期流行病のウイルスに感染し、重篤化となり死亡したのだ。

そして52歳の魂とエリナの魂は、かっこ悪い言い方で言えば、二つの魂が合体した事によってスーパー魂に変化し、お互いの記憶を共有しあえるスーパーエリナとなったのだ。

その結果、ロゼも含め他の従業員に対しての、わがまま放題が一気に後悔として思い返され、恥ずかしいやら、申し訳ないやら、今度はそんな思いでベッドの上をもんどり打っていた。


ロゼが言った「昨夜は何かありましたか?」の何かとは何とも苦々しい事である。

「ロゼそれより着替えを手伝ってくれる。朝食食べにいくわ」



「このエリナーミアはついこの間までわがまま放題、好き勝手にやっていた事は納得したわ。とんだお嬢様だわ」

綺麗に手入れをされた庭園の東屋にエリナは読書と称して、現状を頭の中で整理していた。

「ここ数時間観察していたけれど、エリナの評判はこの屋敷の中で中の下といったところ」

ロゼに用意して貰ったチョコチップクッキーと紅茶に手を伸ばすと、サクッと音をたててクッキーを噛み砕く。

「まぁ〜まだまだ挽回の余地はあるわ。何せまだ10代なんだもの。やり直しなんて何度だって出来るわ」

口元に小さく笑みを浮かべると、

「まずはーーー」

エリナは紅茶を飲み干し小さく「よし」っと呟いて動き出す事を決めた。



従業員の休憩時間。メイドのサラとリリは調理場からまかないのグラタンをトレーに乗せて休憩室にやってきた。

「ロゼから聞いたんだけど、お嬢様の様子がおかしいって」

席に座りながらサラは小声でリリに言う。

「そもそもお嬢様のおかしさは今に始まったわけじゃないでしょ?」

「そうなんだけど、あのわがままさが何がどうなってか、ロゼの助言を素直に聞くようになったって」

「今だけじゃないの?」

リリはグラタンのマカロニをフォークでさすと、ふーふーと冷ましながら口に入れた。そこへ 調理場のサリーがまかないの乗ったトレーを持って現れた。

「お嬢様には驚いたよ」

「またお嬢様の話?」

リリはため息をついている。

「で、お嬢様がどうしたの?」

サラは目をキラキラさせて いる。

サリーはイタズラっぽく笑うと

「チョコチップクッキーを作った人は誰ですか?って調理場までいらっしゃったよ。あのお嬢様が美味しかったから作り方を教えてほしいって頭を下げてきたよ」

「へー」

サラとリリは顔を見合わせて驚いた。

この話はここだけではなく、他のメイド達の間で囁かれる事となった。


「エリナ様。お茶の時間です」

ロゼは部屋に入ると、机に向かって勉強に励むエリナに声をかけた。

「ロゼ有り難う」

「エリナ様、休憩にしませんか?」

「うん、そうね」

伸びをしながらイスから立ち上がると、お茶とクッキーが用意されたソファーへと腰を沈める。

あの噂から数週間。エリナの計算だとそろそろエリナーミアという人間の評判は、以前の中の下から中の中くらいに回復しただろう。

「ロゼも一緒にお茶にしない?」

「いえいえ、私の事はお気になさらず。エリナ様はゆっくりなさって下さい」

「たまにはいいじゃない?私がいいと言っているのだから、気にせず付き合って」

という言葉に、申し訳なさげに

「ではお言葉に甘えて失礼します」

とロゼはソファーに腰を下ろす。

「ロゼには申し訳無い事ばかりしていたわ。今まで本当にごめんなさい」

エリナは目を潤ませると、ロゼに頭を下ろした。そんなエリナを慌てて

「エリナ様おやめ下さい。私が出過ぎた真似をしたせいです」

と止める。

「うんん。違うわ。私がわがままを言うたびに、間違いを正してくれたのに、酷い事ばかりあなたに言ったわ」

ロゼは柔らかく微笑みを作ると言った。

「もう済んだ事です」

「本当に許してくれるの?」

「許すも何も、エリナ様の侍女として、立場が違います。私は自分の位置を理解してますので、エリナ様が頭を下げる方がおかしいと思います」

エリナは申し訳なさでいっぱいである。

もぉロゼ、世界が違えば、今まで受けていたのはパワハラなのよ。コンプライアンスに訴えたら、エリナ確実に罰せられるわ。本来なら許しちゃダメなやつなのに、優しすぎやしませんか?

「ロゼ、分かった。有り難う。もうあの頃のような事はしない」

「はい、エリナ様」

こうしてロゼとの間にあったわだかまりを解消させたエリナは「エリナ」を始める為に今までの行いを回復させ、やっとの思いでスタートラインに立つ事が出来たのである。


そして、月日は流れ、エリナが15歳になり王都の学園に通う事になるのだ。

エリナの中の人 〜悪役令嬢と聖女編〜

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