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「リイちゃ~ん。」
「どうしたのだぞ?ディーテ。」
そう呼ばれると、アプロは驚くような仕草をみせる。
「もう、わかったの~。すご~い!」
褒められると、リイはお世辞にもあるとはいえない胸を張る。そう、アプロ、本名ディーテは世界の頂点・聖魔神の一人であった。
ディーテはリイの唇に指をそっと当て、
「でも、ここではアプロって呼んでね。」
と、妖艶に微笑んだ。その顔は普通の男なら一瞬で恋に落ちてしまうほどだった。
「じゃあアプロ、どうしたのだぞ?」
「あのねぇ、ルウゼスくんがリイちゃんに話したいことがあるらしいの~。」
「わかったぞ!」
「じゃあ、私はここで待ってるわぁ。」
ディーテは笑顔でリイを見送った。
「ルウゼス、話したいことってなんだぞ?」
「いや、……あの……」
ルウゼスはなかなか言い出せず、口をモゴモゴさせている。リイは不思議そうにその様子を見ていた。ルウゼスは、ぎゅっと手に力をいれ、思いっきり空気を吸い込んだ。
「なあ、何で俺を助けたんだ?俺はお前にひどいことを言ったんだぞ。」
「ひどいこと?何のことだぞ?」
「目のことだよ。あれ、冗談じゃなくて、リイが傷つけばいいと思って言ったんだよ。」
リイは目を見開いて驚いている。そして、「そうか。」と言った。その声には怒りがこもっていた。
「すまなかった。」
ルウゼスは頭を下げて謝罪した。悪ガキが初めて心から謝った瞬間だった。中等部の彼を知っている者だったら信じられなかっただろう。
「わかったぞ。」
一言、そう言った。なので、ルウゼスは困惑した。(これはどっちなんだ!?……許さないほうか?)
そんなルウゼスの気持ちを察した様にリイは言葉を付け加えた。
「すまないぞ。これはいいよってことだぞ!」
その声にはもう、怒りはなかった。ルウゼスは心の底から安堵した。そして、理由を聞くことにもどる。
「確か、助けた理由だったか?」
「ああ。」
「助けたかったからだぞ!」
死神が言ってたことと全く同じことだった。
「死神の言ってた通りだな。」
リイは『死神』という言葉にピックっと反応した。
「どういうことだぞ?詳しく教えてほしいぞ!!」
リイは興味津々にルウゼスに聞いた。ルウゼスはリイの高すぎる好奇心に若干引きながら、生死をさまよっているときに会った死神の黒髪の美女の話をした。
「そうか。黒髪の美女だったのか……。」
そう呟くリイは、どこか嬉しそうで、どこか淋しそうだった。
「なあ、リイ。」
「なんだぞ?」
「何で、目を馬鹿にしたときだけあんなに怒ったんだ?」
リイの目が淋しい色に染まる。悲しみやむなしさなど色んな感情が混ざった色に。
「この目は大事なものなのだぞ。我の唯一ある、家族との繋がりだぞ……」
「……そうか。」
ルウゼスはこれ以上聞かなかった。いや、聞けなかった。リイの表情が淋しさで溢れていたからだ。
ルウゼスは死神の黒髪の美女を思い出していた。(何で、リイの言うことがわかったんだ?)
記憶をたどってみるが、顔がよく思い出せなかった。(チッ、クソっ……)
なので、特徴を思い出すことにした。黒髪で髪の長さは腰くらいでリイもそのくらいだった。そして、顔つきもリイによく似ていた。思い出せば、思い出すほどリイとの共通点が見つかる。
目は……!。
目は、リイの右目と同じ赤い目に黒の縦線が入っている目だった。