テラーノベル
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40
・BEAST軸
・多分太中
・キャラ崩壊!!
BEASTの4巻だけ読んでないので結末が詳しく分っていません。
夜の首領室は、静かだった。
窓の外には横浜の灯り。
机の上には、開いたままの書類。
そして、空きかけの酒瓶。
中原はソファへ深く腰掛け、グラスを傾けていた。
向かいにはポートマフィア首領 太宰治。
いつもなら太宰はもっと煩い。
人を小馬鹿にしたみたいに笑って。
どうでもいい話を延々続けて。
中也を苛立たせる。
なのに今日は、静かだった。
酒を飲むペースも何時もより早く、最上階の首領室から見える横浜の街よりずっと遠くを見ていた。
「……おい」
太宰が此方を向く。
「ん?」
「随分と辛気臭れてるじゃねぇか」
「そう?中也は何時もに増してジメジメしているね。蛞蝓みたいだ。」
口調はいつも通り。
でも。
違う。
七年。
七年も此奴の相棒で居れば分かる。
太宰はもう直ぐで居なくなるのだろう。
喉の奥が重い。
嫌な予感が、ずっとしていた。
最近の太宰は、時々酷く静かだった。
まるで役目を果たした人造人間のような目をしていた。
酒を煽る。
アルコールが胃を焼くのに、全然足りない。
太宰は窓の外を見つめ直し、ぽつりと言った。
「中也」
「あ?」
「君は、私が居なくても生きていけるかい?」
中也のグラスを持とうとした指が止まる。
部屋が静かになる。
太宰は冗談っぽく笑った。
「いやぁ、ほら。首領業って大変だからさ」
中也は答えない。
ただ、じっと太宰を見る。
その横顔。
太宰の顔は安らぎと、少しの哀しみが混ざっていた。
中也はグラスを持ち上げる
それから、低く言った。
「……心配すんなよ」
太宰の視線が動く。
中也はグラスを見たまま続けた。
「組織は俺が導いてやるよ」
静かな声。
「丁稚と鏡花は探偵社に引き渡す」
太宰の目が、ほんの僅かに見開かれる。
中也は笑わない。
ただ。
震えそうになる喉を無理矢理押さえ込んでいた。
「全部、上手くやっといてやる」
だから。
そんな顔すんな。
そう言いたかった。
でも言えない。
太宰は数秒黙って。
それから、小さく笑った。
「……何の話?」
中也は舌打ちする。
「手前、そういう所ほんっとクソだな」
声が掠れる。
太宰は何も言わない。
部屋の静けさが痛い。
中也は俯く。
分かってしまった。
此奴は本気なんだと
もう戻って来ないつもりだ。
今の太宰は、役目を果たした人の顔をしている。
中也はグラスを強く握る。
力を入れ過ぎて、革手袋がギチギチと音を立てている。
「……なぁ」
掠れた声。
太宰が見る。
中也は顔を上げないまま言った。
「今くらい、感情ぶつけろよ」
その言葉で。
太宰の表情が止まる。
中也は唇を噛む。
泣きそうだった。
怒鳴りたい。
殴りたい。
死ぬなと言いたい。
でも。
太宰が何の為にここまで来たのか、少し分かってしまうから。
全部飲み込むしかない。
「一人で勝手に哀しんでる顔してんじゃねぇよ……」
震える声。
太宰は、黙ったままだった。
中也は俯いたまま続ける。
「手前が何抱えてるかなんか、俺には検討も着きやしねぇ⋯」
「でも……」
喉が詰まる。
それでも無理矢理、言葉を押し出した。
「七年も手前の相棒として隣に居たんだぞ……」
声が、崩れる。
「そのくらい……分かるに決まってんだろ……」
太宰は、しばらく何も言わなかった。
首領室には時計の音だけが響いている。
中也は俯いたまま、グラスを握っていた。
震える指を見られたくなかった。
太宰にこんな顔を見せたくなかった。
なのに喉の奥が熱くて仕方がなかった
「……中也」
静かな声。
中也は顔を上げない。
上げたら、本当に泣きそうだった。
太宰は困ったみたいに笑う。
「君って時々、変な所で鋭いよね」
「うるせぇ……」
掠れた声。
太宰はグラスを手に持ち中の酒を揺らす。
臙脂色が静かに波打つ。
「私はね」
ぽつりと落ちる声。
「最初から、こうする為に生きてきたんだ」
中也の肩が揺れる。
「織田作が生きて、小説を書く世界」
太宰は窓の外を見る。
「それだけが、私の願いだった」
静かな声だった。
あまりにも静かで。
もう決め切っているのが分かる。
中也は奥歯を噛む。
嫌だった。
その声が。
置いていく側の声だったから。
太宰は薄く笑う。
「だから、後悔はしてないよ」
その瞬間。
中也が顔を上げる。
碧い瞳が揺れていた。
「嘘つけ」
太宰が止まる。
中也は睨む。
でもその目は、今にも泣きそうだった。
「後悔してねぇ奴が、そんな顔で酒なんか飲むかよ……」
部屋が静まる。
太宰は目を逸らした。
初めてだった、中也の前で逃げるみたいに視線を外した。
中也はそれを見てしまった。
だから分かってしまう。
太宰も、苦しいのだと。
全部割り切っている訳じゃないのだと。
中也は立ち上がる。
ふらつきながら太宰の前へ行く。
それから乱暴に、太宰の胸倉を掴んだ。
「だったら……っ」
声が震える。
「だったら、そんな顔すんなよ……!」
太宰の目が僅かに見開かれる。
中也はもう止まらなかった。
「俺ァ、手前が全部置いていくの見て、素直に納得出来るほど出来た人間じゃねぇんだよ……!」
二人の目が滲む。だか拭わなかった。
「織田作之助の為だとか、世界の為だとか……そんなの知るか……!」
胸倉を掴む手に力が入る。
「俺はっ……」
そこで声が崩れた。
中原は唇を噛む。
泣くな。そう自分に言い聞かせる
だが、そう思うほど目には涙が溜まる。
「……俺は、手前に生きててほしいんだよ……」
静寂。
太宰は何も言わない。
ただ中原を見る。
泣きそうな顔で。
怒って。
縋るみたいに自分を掴んでいる中原を。
平行世界の記憶が、脳裏を過る。
どの世界でも。
中原は、自分へこんな顔をしていたのだろうか。
太宰はゆっくり目を伏せる。
そして小さく笑った。ひどく、苦しそうに。
「……ずるいなぁ、中也は」
その声が今にも泣きそうだった。
太宰の胸倉を掴んだまま、中原は俯いた。
指が震えている。泣きたくない。
でも、もう喉の奥が限界だった。
太宰は何も言わない。
ただ静かに、中原を見ている。
その視線が中原には痛かった。
優しい訳でもないのに。
これが最後だと思うと涙が出そうになる。
中也は唇を噛む。
それから、掠れた声で呟いた。
「……でも」
息が詰まる。
「手前が、そう決めたんだろ……」
太宰の目が揺れる。
中也は笑おうとした。
だが失敗した。
歪な顔になる。
「なら……俺ァ、止められねぇよ……」
その言葉は諦めではなく、理解だった。
太宰が、どれだけのものを捨ててここまで来たのか。
どれだけ苦しんで。
どれだけ削って。
それでも此れが選んだ道だった。
七年隣にいたから、嫌でも分かってしまう。
だから「死ぬな」と言えなかった。
言ったらきっと、太宰はもっと苦しそうに笑う。
中原はそれが嫌だった。
太宰はゆっくり、中原の胸倉を掴む手に触れる。
昔なら振り払っていたかもしれない。
でも今はそっと包むみたいに握った。
「……中也」
ひどく静かな声。
中原は俯いたまま、小さく首を振る。
「喋んな……」
声が震える。
「今、手前の声聞くと……」
駄目だ。我慢が出来なくなる。
太宰は黙る。
中原の肩が、小さく上下している。
必死に堪えているのが分かる。
太宰は、その姿を見つめる。
胸が痛かった。
自分は、またこの子を傷付けている。
最後の最後まで。
太宰は苦しそうに目を細めた。
「……ごめんね」
中原の肩が跳ねる。
太宰は続ける。
「君を、一人にしてしまう。」
その瞬間、中原の顔が歪んだ。
とうとう耐え切れず、涙が零れる。
ぽた、と太宰の手へ落ちた。
中原は俯いたまま笑う。
酷く、弱い笑いだった。
「……今更だろ」
掠れた声。
「手前、ずっと勝手じゃねぇか……」
太宰が小さく息を呑む。
中原は涙を拭わない。
もう隠す余裕も無かった。
「俺の事勝手に拾って、勝手に利用して……」
喉が震える。
「勝手に傍置いて……」
そこで声が崩れた。
「何時も勝手だった癖によ⋯」
静寂。
太宰は、何も返せなかった。
返せる言葉なんて、持っていなかった。
ただ中原の涙を見る事しか出来なかった。
それが、あまりにも苦しかった。
太宰は中原の涙を手で拭うが、中原の涙は、止まらなかった。
ぽた、ぽた、と
太宰の手へ落ちていく。
それなのに中原は、声を上げて泣かなかった。
ただ俯いたまま、歯を食い縛っている。
その姿が太宰には、たまらなく苦しかった。
「……中也」
呼ぶ声が掠れる。
中也は首を振った。
「だから……喋んなっつってんだろ……」
震える声。
でも突き放せていない。
太宰は目を伏せる。
平行世界の記憶が、また脳裏を過る。
喧嘩する二人。
笑う中原。
隣へ立つ中原。
どの世界でもこんな風に泣かせたりしなかった。
少なくとも自分が死ぬせいで、こんな顔はさせなかった。
太宰はゆっくり口を開く。
「中也は、優しいね」
中原がぴくりと肩を揺らす。
「何処がだよ……」
中原は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、笑う。
「優しかったら……手前を殴ってでも止めてるさ……」
その言葉に太宰の胸が軋む。
中原は俯いたまま続けた。
「でも、止められねぇ……」
喉が震える。
「それが手前の出した物なんだろ……」
静かな部屋に、その声だけが落ちる。
太宰は何も言えない。
中原は、全部分かってしまう。
ずっとそうだった。
自分が隠したい所ばかり、見抜いてくる。
太宰は丁寧に中原の涙を拭っている。
でも次から次へ溢れる。
「……クソ」
小さく悪態を吐く。
「こんな顔、見せたくなかったのに……」
太宰の喉が詰まる。
本当に最後までこの子は、自分の前で格好つけたがる。
太宰は苦しそうに笑った。
「中也」
「……あ?」
「君、今すごく酷い顔してるよ」
中也が睨む。涙目のまま。
「うるせぇ……」
でもその声で、太宰は少しだけ安心してしまった。
いつもの中原が、まだ残っている。
太宰はそっと手を伸ばし、中原の頬へ触れる。
中原は逃げなかった。
ただ、太宰を受け入れるように目を閉じる。
太宰は、そのまま親指で涙を拭った。
「……ごめんね」
また謝る。それと一緒に中也の眉が歪む。
「謝んな」
「でも」
「謝られっと……許さなきゃいけねぇみてぇだろ……」
その言葉で。
太宰の呼吸が止まった。
中也は震える声で続ける。
「俺ァ、まだ手前に腹立ってんだよ……」
「仕事を放り出して何処かへ逃げ回ったことも」
涙が零れる。
「勝手に全部背負って、勝手に死のうとしてる事も……」
声が掠れる。
「全部、許してねぇ……」
太宰は目を見開く。
中也は泣きながら笑った。
「だから……」
喉が震える。
「次は勝手な真似するんじゃねぇぞ⋯糞太宰……」
二人は夜明けまでお互いの涙を拭い、お別れの言葉を言っていた。
その夜、太宰はポートマフィア最上階から飛び降り、この世を去った。
その後、中原はポートマフィア首領となり、太宰と交わした約束を守りながら組織を纏めていた。
疲れました。二度とこんな長文なんて書いてやるか。
2026/05/24 23:55
計4,988文字
コメント
2件
こんな長いの久しぶりに書いた。 殆ど改行のせいだけど。