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最初こそ無差別テロかと、一課全体が色めき立っていた。
しかし、日にちが経つにつれて、どうもこれはテロとかそんな大きなヤマではないという捉え方が主流になってきていた。
まず、テロにある犯行声明が一向に出てこない。
使用された薬物も致死性のあるようなものではなかった事、被害者の症状も極軽度だったことが理由にあげられる。
だが大規模な薬物テロの予行演習という可能性も捨てきれない。
捜査本部は縮小しながら捜査を続けるという方針に決まった。
滝川は捜査担当に名乗りを上げた。
それはこの事件になにかを感じたからだ。
これはテロではないかもしれない。しかし普通の事件とも違う。漠然とだがなにか嫌なものを感じる。
事件発生時に薬物を所持していた高橋智花。
しかし彼女はそんなものに覚えはないと言う。
容器からは指紋が一切でてこなかった。
そして、高橋智花は同窓会が始まってから常に友人と一緒にいて、問題のスープの傍に近寄ってすらいない。
事前に仕込んだ可能性も調べてみたが、防犯カメラにそれらしい姿は見られなかった。
状況的に見て高橋智花に薬物を混入することは難しいというのが、かなり早い段階で捜査本部の考えになった。
その矢先に、ネットに薬物混入事件の犯人は高橋智花だという動画が流れた。
そして彼女は失踪してしまった。
滝川は高橋智花の周辺を調べるうちに、中学時代の友人が二人失踪していることがわかった。
時期も開いていて、三人の失踪はなんら関係ないことのように思える。
だが、滝川はこれらが繋がっているものだと思った。
根拠はない。
言ってみれば「刑事のカン」というものだろうか。
前時代的と思われがちだが、これまでの膨大な事件に関わって得た記憶が警鐘を鳴らしている。
積み重ねてきた経験に照らし合わせて、なにか引っかかるというものが「刑事のカン」だと滝川は思っている。
そして、そのカンは案外外れていないと。
行方不明の三人には、ある共通の繋がりがあった。
中学時代にある生徒をいじめていた。
そのいじめられていた生徒が、小川一華。
同窓会の会場は彼女が負担したと聞いた。
では小川一華はこの三人に現在どういう形で関りがあるのか。
滝川は小川一華のことも調べた。
小川一華は中学時代の一時期こそ彼女たちと同じクラスにいたが、父親の失踪と母親の自殺を契機に中学三年生になるころには転校している。
なお、父親に至っては今日に至るまで発見されていない。
生きているのか死んでいるのかもわからない状況だ。
その後は母方の祖父母の家で暮らし、芸術の才能を認められて高校を中退してパリへ留学。
そこでさらに才能を開花させて大成する。
その間、日本へは一度も帰国していない。
ただ、芸術家として成功してからは祖父母の口座へ定期的に小川一華名義で、二人が昨年亡くなるまで入金がされていた。
さすがにそのときは帰国しているが、葬儀を済ませると財産やその他のことは代理人に任せて急ぐようにパリへ帰っている。
次の帰国は家の購入のとき。
現在は都内の郊外に邸宅を構えているが、この邸宅購入の際も契約やそういったことは代理人任せで日本に帰ってきたのは不動産屋と物件を見に来たときと、完成した邸宅を見に来たとき。
いずれも滞在は一日程度だ。
そして同窓会の一カ月前に帰国して現在に至る。
二人の失踪はそれよりも前だ。
滝川には小川一華が日本への帰国を頑なに拒んでいるような印象を受けた。
それが日本にいたころの辛い記憶によるものなのか、他に理由があるのかは本人に聞かなければわからない。
滝川は小川一華と一度だけ面識があった。
それは薬物混入事件のとき、警察署で取り調べを受けている橋本千尋の潔白を証言したときだった。
これまで見たことのないような美貌の持ち主で、所作や話し方も非常に洗練されていたことが強く印象に残っている。
そして彼女が中学時代に唯一親しくしていたのが橋本千尋だった。
滝川の脳裏に千尋の屈託のない笑顔が浮かんだ。
どこか人を魅了してしまう不思議な魅力を感じる笑顔。
最初に橋本千尋と会話したのは、警察署の廊下でのほんのわずかな時間だったが、あの笑顔に一瞬魅せられたことを思い出すと滝川は赤面してしまった。
あのときは憔悴していたが、この前聞き込みに訪れたときは、はつらつとした健康的な美を感じた。
「ふう」と。ため息をつき気持ちを切り替えるように頭をふる。
「四人か」滝川は独り言つと、改めて考えた。
父親とクラスメイト。小川一華と関わった人間が四人も失踪している。これはつながっているものなのか。それとも全く関係のない偶然なのだろうか。
なぜか気にかかってしまう。
滝川は小川一華の父親失踪から調べてみることにした。
それが空振りなら捜査対象の可能性が一つつぶれるだけだ。
このまま、もやもやしているよりは遥かにましだと考えた滝川は、小川一華が当時住んでいた地域の所轄署に行くことにした。
警視庁内の人身安全課・行方不明者対策第一係で調べると当時の失踪届は豊島区の目白警察署に出されていた。
届人は小川美沙。おそらく小川一華の母親だろう。
この母親も後に自殺している。
日本での行方不明者は今や年間でも九万人に及ぶ。
内、十歳代が最も多い。十歳、二十歳代で全体の四割を占めるという。
九歳以下でも年間で千人以上。
滝川はそうした数字を見ていて暗澹たる気持ちになった。
目白署に着くと事前に要件を告げていたので、スムーズに資料に目を通すことができた。
「扱いは一般行方不明者ですね」資料を見ながら佐山が言う。
「年齢と状況から特異行方不明者にはならなかったようだな」滝川は失踪時の状況を読み込んだ。
失踪した小川博之は当時三十歳。仕事に行くと言って朝家を出て行って帰ってこなかった。
それから二週間後に届け出が出されていた。
なぜこんなに日にちが空いているのだろう?滝川は首を傾げた。
そう言った事情は書いていない。
担当者は定年していて話を聞くことはできなかったが、小川美沙の自殺を担当した刑事がまだ在職していたので、そこから話を聞くことができた。
会議室で待つこと十分。
「お待たせしました。目白署捜査一課の小野寺です」
五十代半ばといった初老の刑事が資料を抱えて入ってきた。
刑事は小野寺昇といい、短く刈り込んだ頭には白髪が目立つが、がっしりした体形と肌艶の良さからか、年齢ほど老いた印象はない。
「おいそがしいところ申し訳ございません。警視庁捜査一課の滝川と申します」
滝川に続いて佐山も挨拶をする。
「どうぞお座りください」
小野寺はにこにこしながら勧めた。
滝川たちが着席すると「小川博之の失踪時のことをお聞きになりたいとか」と、小野寺が切り出した。
「はい。お願いします」
「失踪届を出したのが遅かったのはなにか理由があるのでしょうか?」
「ああ、それは失踪届のことを知らなかったからなんです」
小野寺は苦笑いしながら答えた。
「知らなかった?本当に?」
「はい。話を聞いた限りでは。警察にやってきたのも、娘さんが学校で友達に教えて貰ったからだと言っていました」
友達。中学時代の小川一華の交友関係から考えて、友達とは橋本千尋で間違いないだろうが、念を入れて聞いてみた。
「友達というのは?」
「矢島千尋さんというクラスメイトです」
たしか橋本千尋の旧姓だ。
それよりも小野寺が資料を見ることなく答えたことに、滝川は驚嘆した。
さして重大事件でもない十数年前のことを覚えているとは。
「覚えてらっしゃるのですか?」
滝川が聞くと小野寺はうなずいた。
「小川美沙さんの自殺を捜査した際に、ご主人の小川博之さんの失踪届にも目を通しました。受付けた者からも様子を聞きました」
小野寺は続けた。
「小川美沙さんも娘さんも、人がいなくなったら警察に届出を出せるということを知らなかったのです」
「最近いますね。少し調べればわかることを知ろうともしない。こんな便利なものがあるのに」
佐山がスマホを手に取りながら言う。
「なにを調べればいいのかがわからない。そういう人もいますから。小川母娘もそうでした。言い方を変えればそこまで劣悪な環境だったのです」
たしかに警察に限らず、行政の支援等は存在すら知らない人がいる。
思い返せば滝川の周りにもいた。
そうした人達は「存在しないと思っている」から、調べるという発想が生まれない。
コロナ禍のときがまさにそうだった。
行政支援は多岐に渡ってあったが、あることすら知らない人達がいた。
「他に届出が遅くなった理由は、小川博之さんは仕事で一日、二日は帰らないことがたまにあったようです。そのときも仕事と言って家を出ていきました。三日すぎた頃に奥さんは電話をしてみたが電源が入っていないため繋がらない。五日経っても音信不通なので、何かあったのではと思いはじめた。本人はそう言っていました」
「小川博之さんはどういった仕事を?」
資料には小川博之の職業に触れていない。
「ざっと言えば無職です。まあ、日銭を稼ぐ仕事を必要に応じてやっていたようですが」
「よくそんな状態で結婚しようと思ったなあ」
佐山が呆れ半分に言う。
滝川もそれは思った。相手の小川美沙は子供もいる。
そんな不安定な収入でよく決断したものだ。
「まあ、我々もそう思いました。もちろん奥さんの前では言いませんがね」
小野寺の話によると、小川美沙の実家はかなり裕福らしく、博之が小川の籍に入って結婚したのは、そこらへんも理由にあるのではと考える者もいたそうだ。
だが、小川母娘の生活環境は裕福どころか、貧困だった。小川美沙は前の夫と駆け落ちするように家を出たので、両親とは上手くいっておらず、連絡すらとっていなかった。
「話を聞いた限りでは事件性がないものと判断されたようで、これといった捜索もしなかったと記憶しています」
小野寺は残念そうにため息をついた。
「どうされたのですか?」
聞いてきた滝川の方へ視線を向ける。
「なにか気にかかると感じたのは、奥さん……小川美沙さんが自殺したときでした」
「なにかおかしなところがあったのですか?事件性があったとか」
滝川の問いに小野寺は「これは全く私の主観にしか過ぎない、なんの根拠もないことなのですが」と、前置きしてから「似つかわしくなかったんです。人が自殺した場所に一緒にいると言うのに、その、娘の一華さんからはなにも感情の機微が読み取れませんでした。私も話しましたが、人間と話しているような気がしませんでした。あまりのことで放心している、状況が飲み込め切れていないのだと、その時は思ったのですが。そしてもう一人、一緒にいたクラスメイト。さっきも名前が出ました矢島千尋さん。この子が不自然なほどテキパキしていました。こちらの質問にも実に明朗に答えていた。最初に私が現場に到着した際、矢島千尋は我々に向かって笑顔を見せました。今でも覚えていますが、愛くるしく人を魅了する笑顔です。それが全く事件の惨状にそぐわないちぐはぐしたものでした。それが何とも異様で」滝川と佐山をまっすぐ見つめながら小野寺は言った。
滝川は先日聞き込みの際に会った橋本千尋の顔を思い浮かべた。
あの笑顔。
「それは友達が大変な状況にある中で、自分だけでも気丈に振舞おうとして空回りしていたのでは?」
佐山の言葉に小野寺は苦笑いしながら短く刈り込んだ頭をかいた。
「そうなんでしょうなあ。あの年頃の子にしては精一杯だったのでしょう。ですが私のように捻くれた質の者はどうしても訝しんでみてしまう」
小野寺刑事は十数年前の、言い方は悪いがさほど大きな事件でもないものを正確に覚えている。それが小川一華と橋本千尋の印象によるものに起因しているのは滝川の目からも明らかだった。
「どうして友達が現場に?」
「学校が終わって、二人で小川一華さんの家で勉強する予定だったそうです。母親の惨い現場を見て小川一華さんは放心状態、警察への通報は矢島千尋さんからでした。彼女が家に上がろうとする一華さんを家の外にいるように諭したそうです。警察が来たとき、千尋さんが一華さんを抱きしめていたそうです。おかげで現場はきれいなままでした」
人の遺体を見て取り乱すことなく中学生の子供が、現場保存にまで気を回して行動できるものだろうか?
逆に、子供だからこそ余計なことを考えずにテレビかなにかで得た知識を総動員して行動できたのだろうか?
滝川には断定しかねることだった。
「遺書はあったのでしょうか?」
「はい。正確に言うと、遺書のようなものですね。メモ書きのようなものですが「一華ごめんなさい」と。筆跡は間違いなく小川美沙さんのものでした。上層部も遺書として扱いました」
滝川の質問に小野寺は答えると、捜査資料を見せた。
滝川と佐山はしばらく資料に目を通す。
「ちょっと失礼します」と、言って小野寺は部屋から出て行った。
滝川と佐山は失踪届の際の聞き取りと、自殺の捜査資料を読み込んでみたが事件性は全くと言っていいほど無い。
「これって今度の事件と何か関係があるんですかね?」
佐山が資料を閉じて言う。
「わからん。ただ失踪した高橋智花。他の二人も小川一華と関わりがあったというだけだ」
「でも十三年も前ですよ。今回のことにつながりますかね?しかも高橋智花はともかく、他の二人の失踪が薬物混入事件とどう関係あるんですか?仮に薬物混入がいじめの復讐だとしても、自分も口にしてぶっ倒れてるんですよ。人に罪を被せたり、失踪までさせるような計算をできる人間が間抜けすぎませんか?」
「可能性の一つだよ。潰れれば今後の対象から外せる」
佐山の言うことは滝川ももっともだと思った。
薬物混入事件と失踪事件に繋がりがあるという根拠は全くない。
一課全体を見ても、この事件に対する関心は薄く、捜査員の中には滝川を変わり者扱いしている者までいる。
そうしたことは滝川も承知していた。
自分でも実になる捜査とは思えないと弱気になるときもある。
我ながら損な質だと思った。
しばらくすると小野寺がお茶を持ってきた。
「いかがでしたか?」
お茶を滝川と佐山の前に置いてから小野寺が聞く。
「我々が見ても、失踪と自殺から事件性があるとは思えません」
滝川が言うと小野寺がうなずいた。
「そうです。失踪の方はともかく、自殺の方は事件性が皆無なことは現場の痕跡が証明していました。いくら私が訝しんでみてもすべての状況が自殺で疑いようがありませんでした」
「動機はなんでしょう?」
「小川美沙さんの周辺では金銭的、人間関係のトラブルはありませんでした。遺書とみられるものにも娘さんへの謝罪の言葉だけで、他にはなにも書いてありません。唯一あったのはネットによる誹謗中傷から起きた嫌がらせです。ご主人の失踪が実は殺人事件で、その犯人が奥さんだと。そして娘である一華さんに虐待をしていたことが実名と住所付きでネットの掲示板に書かれたのが発端です。それから実生活でもドアやアパートの塀に落書きをされたりと、嫌がらせはエスカレートし、大家にも苦言を呈されていたそうです。そうした心労がたたって自殺したのではないかという見方もありました。ですが決定的な動機は今でもわかりません」
「あのう、失踪が殺人だったとは?」
「正直な話、本当のところはわかりません。ネットの書き込みを根拠に捜査なんてできませんからねえ。それに失踪に事件性がないと判断したのは他ならぬ警察ですから」
小野寺は一旦、お茶の入った湯呑に口をつけてから続けた。
「ただ、虐待の方は本当だったようです。周辺や学校への聞き込みから、どうも小川一華さんはネグレクトの被害者だったようです。育児放棄ですな。当時の一華さんは食事も満足に与えてられなかったと聞きます。それがいじめの一因にもなったと聞きました」
「育児放棄ですか。ひどい話ですね」
佐山が憤慨したように言った。
「他にも暴力を振るわれたりとかもあったそうです。ただ、ほとんどは失踪した博之氏によるもので、美沙さん自身も暴力にさらされていたそうです。これは小川一華さんから直接聞いたことです」
「母親は虐待の加害者でもあり、同じ被害者でもあったわけですか」
父親は赤の他人でも母親とは血がつながっている。
小川一華と母親には父親の博之にはない絆のようなものがあったのだろうか。
滝川は薬物混入事件のさいに見た小川一華を思い浮かべた。
華やかな彼女からは想像できない陰惨な過去。
やりきれないようなため息をついてから、滝川は小野寺に質問した。
「誰がそんなことを書き込んだのですか?」
「一華さんをいじめていた生徒です。高橋智花、小田茉莉、田島紅音の三人です。彼女たちは小川美沙さんに自分たちがいじめをしていたことをネットや進学先の高校にバラされると思ってやったと言っていました。そうした噂が当時クラスの間で流れていたのは事実です」
ネットの情報から生活環境が破綻する。
高橋智花の件に似ていると滝川は思った。
もっとも小川美沙は自殺。高橋智花は失踪と、大きな違いはあるが。
「書き込みをした生徒はなにか罰を受けたのですか?」
「いえ。彼女たちは何一つ個人が特定できるようなことは書いておりませんでした。触発された人間がどんどんエスカレートしていったというとこでしょうか。ネットの特性を熟知してうまく利用したと言ってしまえばそこまでですが」
「小川一華はどうでしたか?法的にはどうあれ母親を殺したのは同級生ということになる」
「それが達観しているというか…… 恨み言の一つもなく、済んでしまったことはどうにもならないと」
滝川は内心驚いていた。
実の母親が、直接でないにしろ自分をいじめていたクラスメイトのせいで死んだのだ。
それなのに無反応とはどういうことだろう?
小川一華にとっては、母親も所詮はDVの加害者でしかなかったということなのだろうか。
その後も小野寺と当時の事件についてやりとりしたが、滝川が期待していたような成果は得られなかった。
小野寺は滝川たちを署の玄関まで見送りした。
「すみません。わざわざお越しくださったのに大した話もできず」
小野寺が頭を下げる。
「いえ。お気になさらないでください」
自分よりもはるかに先輩の小野寺に頭を下げられると滝川としては恐縮してしまう。
「滝川さん。私はさっきも言ったように、失踪と自殺という一連の事に疑問を抱いたのは事実です。ですが警察として事件性がないと決定した以上、捜査はできませんでした。小川一華にも矢島千尋にもその後の話を聞くことはできません。ですが――」
小野寺は一旦区切ってから「我々は小川一華に、あんなことがあったのだからセラピーを受けてはどうかと勧めました。なんといっても母親の遺体を見てしまったわけですし、それまでの環境のこともある。精神的ケアが必要だと感じたのです。警察には犯罪被害者の精神的ケアを担当する精神科医を紹介することもできますから」と、言った。
「それはわかります。特に多感な年頃ですし」
滝川も同意見だった。
「その後の小川一華の様子が気になった私は、彼女にセラピーを紹介した者に聞いてみました。彼女のその後の様子を」
「どうでした?」
「小川一華は紹介した精神科医のもとには行かなかったそうです。なんでも自分で相手を見つけたとかで。どこの精神科医とか、そういうことは聞いてもなにも言わなかったそうです」
「そうですか」
中学生がどういう基準で自分が信頼できる精神科医を見つけられたのか滝川には興味があった。しかし、それを聞いても得られるものはないというのもわかっている。
滝川と佐川は小野寺に礼を言うと、目白署をあとにした。
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