テラーノベル
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「あの代表さん、何をしにここに来たの?」
結たちが帰っていくと、カウンターの中に入った翠が聞いた。
「暖人君の絵をグランプリに選んでくれたそうですよ」
「本当に? 暖人の作品が選ばれたの」
嬉しそうに翠は声を弾ませた。
「日曜日に暖人君に会いに、また来てくれるそうですよ」
だが、翠は不満そうに唇を尖らせた。
「あの女じゃダメね。いかにも苦労知らずのお嬢様って感じだもの、暖人が心を開くとは思えない。きっと相手にしないわ。恭平さん、暖人のことどこまで話したの?」
「詳しいことは何も。私から話すわけにはいきませんからね」
「暖人には才能があるのよ」
翠が力強く言う。
「けど、それを心無い奴らに利用されて、暖人の才能が潰されるのだけは嫌なのよ」
それには恭平も同感だった。
シンパシーとでもいうのだろうか。初めて出会った日、暖人の方から微笑みかけてくれた。初対面で懐いてくれたことに翠も悪い気はしなかったし、それから暖人のことを弟のように可愛がり気にかけてきた。
「夏夫さんは暖人の将来を考えてコンクールに応募したのよ。暖人が一人になっても、生きていける道を今のうちから探してるんじゃないの。あたしがいるから大丈夫なのに」
「翠(あきら)さん」
恭平の声は凪のようだ。声を荒げるところなど聞いたことがない。けれど、その声がいつもより声が低くなるときは、真面目に聞けと言われているようで翠は一度口を閉じた。
「いつまでもそう言えないのが人生です。安易に面倒を見るなんて言わない方がいい」
「わかってる。でも放っておけないのよ」
恭平にはよくわかる。情に熱く、正義感も責任感も人一倍強い。たくさんつらい経験をしてきた分、弱い立場の人に優しい。それが翠という人間だ。ずっと親代わりのつもりで、翠を見てきた恭平に言わせれば、翠には翠の人生を生きてもらいたかった。苦しんできた分、幸せになってほしいと願わずにはいられなかった。
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コメント
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第7話、読み終えました。翠さんの「暖人には才能があるのよ」という言葉と、それに対する恭平さんの「安易に面倒を見るなんて言わない方がいい」という諭しが印象的でした。翠さんの保護欲と恭平さんの人生観がぶつかる瞬間、両者の暖人への愛情の質の違いがにじみ出ていて、じんわり来ましたね。日曜日に代表さんが来てどうなるのか、気になります。