テラーノベル
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ナポリの裏路地。湿った石畳に、血が細く流れている。
「……チッ、また逃げたかよ」
少女は壁にもたれ、舌打ちした。
短く切った黒髪、ラフなシャツに細身のパンツ。
年齢は十代半ば――だが、その目は妙に冷めている。
彼フィリッポ・エンス。
組織にも属さない、“はぐれ”のスタンド使いだった。
「腹、減ったな……」
その瞬間、背後の空気が歪む。
現れたのは、
白くひび割れた仮面のような顔を持つ異形――
『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』。
骨のように細い体。
だが、その口だけは異様に大きく裂け、闇を覗かせている。
「……ダメだ。まだだ」
エンスは低く呟く。
だがスタンドは応えない。
ぐるり、と首を傾け――路地の奥を“嗅いだ”。
「おい、待てって言ってんだろ」
その先には、
さっき取り逃がした男が、壁に手をついて息を切らしていた。
次の瞬間。
ゴッ
風が裂ける。
スタンドが一瞬で距離を詰め、
男の肩に“噛みついた”。
「ぎゃあああああッ!!」
肉が裂ける音。
しかし――それだけじゃない。
スタンドの腕が、変形する。
筋肉が膨張し、獣のようにしなやかに。
「……またかよ」
は顔をしかめた。
「取り込みすぎるなって言ってんだろ……!」
だが止まらない。
“食った”分だけ、強くなる。
そして同時に――飢える。
スタンドの呼吸が荒くなる。
目の奥が、ギラつく。
次に向いたのは――
「……は?」
エンスだった。
「おい、冗談だろ」
スタンドが一歩、近づく。
その動きはもう、命令を聞いていない。
「チッ……クソスタンドが」
エンスは笑った。
恐怖じゃない。諦めでもない。
“慣れてる顔”だった。
「来いよ。
その代わり――」
彼女は拳を握る。
「喰われる前に、ぶっ壊してやる」
スタンドが跳ぶ。
同時にエンスも踏み込む。
“自分のスタンドを殴る”という、ありえない戦い。
ナポリの夜に、骨がぶつかる音が響いた。
しばらくして。
路地には静寂が戻る。
エンスは壁に座り込み、肩で息をしていた。
スタンドは消えている。
「……ほんと、最悪だな」
口元に血を拭いながら、空を見上げる。
「強いだけの力なんて、
腹の足しにもならねぇっての」
遠くでサイレンが鳴る。
彼女は立ち上がると、影の中へ消えた。
――飢えを抱えたまま。
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