テラーノベル
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「ハハハ、立派なストーカー発言だな」クライは笑うが、マークは真剣だった。「あなた本気で言っているの、こんな出来事は序の口で、もっと怖い目に遭うかもしれないのよ」セーレの物言いに、我慢と不満が爆発した。
「俺は『あなた』じゃない、マークだ! 君がその名前を呼ぶなら諦めるよ」
「ハハハ、上手いね。セーレの制約を逆手に取るなんて」
「笑い事ではないわよ。もう、私が人の名前を記憶できない制約を盾にされるなんて」
無邪気にクライは笑う。
セーレは、額に手を置き頭が痛いような仕草をした。青年は関係なく、制約の話を続けた。
「教えてくれ。君の『制約』ってやつは、一体何なんだ!」
「何でこうなるのよ。こんなことなら、早めに手を切っておくべきだった」
「頼む! 教えてくれ!」マークは諦めず、セーレを逃さない。
「……もん、仕方ない……この左手にある赤い蛇の刺青が原因なの」
「刺青? それは本を収納する魔法ではないのか」
「確かに、それも一面としては正しいけど。この刺青を施された者は、亡くなった人しか記憶できない呪いを負うの」 セーレは小さく頷く。
「けど、ヘーゼルさんやクライさんを名前で呼んでいるのは、なぜなんだ?」
「僕達は人智を超えた存在だよ。呪いを受けても、名前くらい呼び合える。つまり、一般人とは違うんだよ」
クライの角が立つ物言いに、少しマークはイラッとする。深呼吸して、呪いについての話を進めた。
「セーレ。呪いということは、かけた者がいる。それは誰なんだ?」
「そこまで踏み込む気なの? 別にいいじゃない、ここまでで!」
病室から追い出す仕草をする。しかし、マークに詰め寄られた。
「ダメだ! 俺は君のことが知りたいんだ」
「ふー、言論の自由を禁じた張本人であり、私たちがあと一歩で倒せなかった男――その名は……アドモスよ」
「アドモス?」
マークは、彼女から聞いたこともない男の名前を聞き「誰なんだ」と考え込んだ。
「彼を倒さなければ、言論の自由を勝ち取ることができない」
「セーレの言う通りだ。今は彼の名前と制約を知れたんだし、君も怪我を負って安静にしていなきゃならない身だ。この話はこれで終わりにし、君も回復カプセルへ戻ってくれ」
「そうだな。クライさん、わかりました。看護師さん、申し訳ありませんが、宜しくお願いします」
マークは、看護師に車椅子を押してもらい、その場を後にした。扉が閉まると、セーレは起き上がろうとした。
「ダメだよ」
クライは、彼女の首元へ鋏を向けた。
「あなたには関係ないでしょう」
「君の考えはわかる。黙ってこの場から立ち去ろうとしているんだね」
図星を突かれ、セーレは焦る。空気も読めないクセに、頭だけは無駄に良すぎた。
「だったら、何よ?」
「君も病人だし、経過観察が必要だ。それに旅には、足も必要だろう。あのバイクはプレゼントするから、もう少しマークを連れ回しても、旅に支障はないだろう」
「……」
「言論の自由を謳った僕達も、もう少し他者に対し、素直な面を見せても良いと思うよ」
セーレは、ベッドへ戻った。
「わかったわよ。もう寝るから、あなたも病室から出ていってくれる?」
「わかった。それと、逐一、経過観察担当が隣にいる。何かあったら、声をかけてくれ。それと解剖されたくなったら、すぐに呼び出しコールを……」
「早く、行け!」
クライを追い出すと、目を瞑り、深い眠りについた。
場面は変わり、暗い部屋。
大きなテーブルと四脚の椅子、その周囲には奇妙な銅像が並び、不気味な雰囲気を漂わせていた。
そこに、男二人と女一人が椅子に腰をかける。
「久しぶりだな、この会議をするのも。デロスよ、お前はいくつになった?」
「女性に年を聞くのは失礼よ。オラクレ! 今回はサーメスからの会議の呼び出しらしいけど、何の話だろう?」
「我ら四教団は信じる者は違えど、情報共有と連携は必須だ」
「勤勉だな、マーガル。おっと、来たな」
遅れて、サーメスが空席の椅子に腰をかけた。
「お待たせしてしまい、申し訳御座いません。まず遅くなりましたが、皆様にご報告します。セーレ様が天から地へ降り立ちました」
「その話は誠か、あの洗脳の女王セーレ様が生きておられたとは」マーガルは興奮気味な表情をした。
「はい、我が目でしかと拝謁しました。輝かしい銀髪、真紅の瞳に美しいお顔立ち。間違いなく、我が洗脳の女王セーレ様でした」
「セーレ様が生きておられたとは、我が爆発の女王シルカ様が聞いたら歓喜の言葉をかけるでしょう」
「そうですとも。セーレ様とシルカ様は、あの言論の対戦で輝いておられた御二人だ。故にマーガルには、セーレ様のお迎えを手伝っていただきたい」
「是非とも頼む」暑苦しい握手を交わし、気味の悪い笑顔でお互いを見つめ合った。
その顔を見て、デロスが発言。
「そう、二人で勝手にどうぞ。私はアーネス様、一筋だし。女性は信仰しない主義だから」
「え、美女二人とのプレイか。あぁ、妄想するだけで最高だ」
「貴様は不敬だぞ、オラクレ!!」
マーガルとサーメスは同じ言葉で注意を促した。
「そう、怒んなよ。我が魅力の男爵ルーサー様の教えなんだ。それぞれ意見がすれ違うんだ。仕方あるまいよ」
「ちょっと黙っていてください。では、セーレ様のお迎えは私、サーメスとマーガルが実行いたします。それで宜しいでしょうか?」
「異議なし」
三人とも異議を申し立てず、会議は終了した。
サーメスは、別室に移動し祈りを捧げた。
「偉大なる洗脳の女王セーレ様。貴方様には邪魔な虫が付いておられます。大いなる祈りを邪魔する虫は取り除き、必ずや貴方様を我が教団のもとへお招きいたします」
また夢。
ここは、私が十八歳の頃、戦場にいた記憶。
「さようなら」
敵の返り血を浴びて、銀髪から赤髪になったセーレ。彼女の真紅の瞳に映った敵を惨殺していく。目には大粒の涙を浮かべた。
「凄いね。うちも負けないぞ」
シルカの瞳が茶色から金色となる。敵に死の視線を送った。目が合ったものが、次々と爆撃でも受けたかのように爆散していった。
「ねぇ、シルカは今楽しい?」
「どうしたの、セーレ。つらいの?」
血に濡れた毛先から、雫がぽたりと落ちた。気分も下降気味となり、吐き出したい。
「敵を操るたび、その人の人生が流れ込んでくるの」
シルカは驚き、笑顔で詰め寄った。
「記憶を覗き込む、なんて凄いわ。これなら敵の情報を掴めるし、早く戦争も終わるね」
「でもね、そんな万能ではないの」
「どうして?」セーレに対し金髪の美しきシルカが質問する。
「他人の情報量が多すぎて、名前くらいしか記憶できないの」
月から溢れた雫達。堪えようにも、落胆した心。逃げ場もなく、沈む影は同じ絶望、恨みとつらみへ吸い込まれるだけ。
「そうだったんだ……無理に覚える必要はないわ。つらくなったらいつでも言ってね」
「シルカ……ありがとう」
彼女は優しく、セーレを励ました。
金髪、金の瞳と銀髪、赤の瞳が戦場を駆ける。筋肉つけ過ぎなお婆さん、黒髪のバランス良い体付きの男性がその姿を眺める。
「同年代の二人、息が合ってるな。なぁアーネスよ」
「あぁ、彼女らも奮戦している。最後の取り分ぐらいは出張らないとな」
「お前が出たらすぐに終わるだろうが」
「いや、二人に触発されたかな」
アーネスも戦場へ参加。敵が宙に舞っていく。
断末魔が響く。頭が壊れそう。逃げ出したい。
戦争は見ず知らずの命を多く奪う。セーレは、流れ出る涙を制御できず、吐き出し続けた。
「……また戦時下の夢か。最近嫌な夢が続くなぁ」
セーレが最牡に来て、二日目。マークと私はそろそろ退院だ。
病院内の記憶を思い返せば。
クライが夜に私の病室に忍び込んでメスを持っているところをナースに注意されたり「私の神器を見つけるためだ」と言って、血液検査の後に、手術室に搬送しようとするし破茶滅茶だったわ。
「やぁ、お目覚めかい」
「げっ、クライ……」
帰れ、と顔でセーレは主張した。
「嫌そうな顔しないでくれ」
「どの口が言うの?」
「それより、約束の物ができたんだよ」
クライは、セーレに眼鏡と収納ケースを手渡した。
「これは何?」
「この眼鏡を掛けると、半径一キロの神器に反応し、赤マーカーがつく探査機だ。しかも、光で動いているため、太陽光を充電すれば半永久的に使える代物だ」
「そう、ありがとう」セーレは要求通りの品に安堵した。
「後、君のマフラーを改修させてもらって、ペンダントにした。真ん中にあるボタンを押すと、君の能力のオン、オフが可能だ。さらに、オフ時は君のオーラも完璧にシャットダウンできる。勿論、太陽光充電でこれも半永久的に使える代物だ」
クライから受け取ったペンダントをつけて、真ん中のボタンを押した。髪が黒く染まり、瞳の色も変化した。眼鏡の方は先端のスイッチを押したが、何も反応がない――「表示できません」と反抗された。
それを見て収納ケースへ眼鏡をしまった。
「さて、バイクだが、整備士のコーンが直接引き渡したいらしい。入り口付近にいるから、声をかけてくれ」
「わかったわ」
マークが病室を訪ねてきた。
すっかり、怪我も治り服装も新しくなり、腰に何やら武器を2つぶら下げる。
「クライさん、セーレ。二人とも揃ってるね」
「あぁ、マーク。どうだい、気に入ってくれたかい」
「それは、もうとっても、良い出来です」
その様子を見たセーレ。鼻高々で自慢げな大きな子供。「男って、単純」
「クライ、彼に何を渡したの?」
「あぁ、彼には服とトンファーを渡したんだよ」
服とトンファーの何が凄いのか、セーレはわからなかった。
「説明不足だったね。まず、服は防御陣を施している。前より受ける攻撃を三〇%カットしてくれる。そして、二つのトンファーだが、電撃が流れる。しかも、六五〇 Vを三回も流し込むことが可能だ。これを受けたら、常人は、まず立っていられないね」
感謝しかない。これで無職のマークいや足手纏いも卒業だ。
「ありがとう、これで俺も戦える」
「ちょっと。あなたは、戦いに参加させる気はないわよ」
ベッドから降りて、マークの瞳を見つめた。
マークは顔を赤くした。
視線を泳がせながらも、彼女の肩へ手を置いた。
「ちょっと……」
「大丈夫。君に迷惑は掛けない。だから、これからも宜しく頼む」
真剣な表情。何を言っても無駄か、と仕方なくセーレは折れた。
「足手纏いなら、その場に捨て置くわよ」
「望むところだ」
「それと……」
「それと?」
「いつまで、肩に手を置いているのよ」
セーレの拳がマークの頬にクリーンヒット。病室の廊下近くまで、蹌踉めく。本気のグーだった。マークは頬を押さえた。
クライが転んだ男の側まで、歩いて近寄ってきた。
「トンファーだか、一回使うと一日、光充電が必要だ。つまり、三回使い切ると、一日経たなければ使えない、ということだ。ここだ、ていうときの切り札だから、慎重にね」
「何から何まで、ありがとう、クライさん」
立ち上がり、二人は握手を交わした。
「ちょっと、着替えたいからアンタは出て行きなさいよ」
セーレの足蹴りを受けて、病室の外に締め出された。
クライに支給された服に着替え始めた。
上半身は白っぽい服。手には黒グローブ。黒スカートに黒のレギンスを履いた。
「因みに、その服にも仕掛けがあるんだよ」
「クライ、説明はいいわ。ただ身体能力向上とワープ能力がついた、だけでしょう」
昨日語って聞かせたが、説明の圧を感じる。
「そのワープ機能の原理が凄いのになぁ」
「あなたの話は長くなるし、あんまり難しい話はわからないわ。さてお別れね、クライ」
病室を出よう、と行動に移す。
「僕は話し足りないよ。それに、君を解剖できなかった。また必ず来てくれよ、セーレ」
「えぇ……考えとくわ」
セーレは、病室の扉を開け、マークと共に歩き出した。
コメント
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わあ〜第7話、めっちゃ情報量多くて読み応えあったよ😭💕 セーレの制約が「亡くなった人しか記憶できない」って、めっちゃ切ない…あの赤い蛇の刺青が原因だったんだね。戦場の記憶で「敵の人生が流れ込んでくる」ってセリフ、想像しただけで胸がギュッてなった🥺 四教団の会議シーン、それぞれ女王とか男爵とか呼び方が違って世界観広がったね!サーメスとマーガルがセーレ様迎えに来るって言ってて、もう一波乱ありそうでドキドキする… 最後のクライからのアイテム授与とマークとのやり取り、セーレのツンデレ具合が可愛くてにやけたよ!次回も楽しみにしてるね🌸✨
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月城 蓮桜音
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