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#掃除
月城 蓮桜音
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saza
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水羽
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セーレとマークは、最牡の正面入り口へ到着。にこにこ顔の整備士のコーンと再会を果たした。「おぅ、マーク。バイクを派手に壊したみたいだな」
「すみません、おやっさん」
マーク思わずスライディング、土下座。
「構うことはねぇ、頭上げろ。バイクは壊れるもんだ。壊れたらまた修理すればいい」
「おやっさん! さすがです」
男同士のやり取りを見て、セーレも「少しバイクの話を聞いてみよう」と耳を傾けた。
「いいか、バイク乗りに必要なのは心だ」
「はい、勉強になります」
聞き取ったことを、マークは日記帳に書き留めた。
「それでな、バイクは風と一体化することが大事でな」
「それは、自分も体験しました」
「それでよ……」
ちんぷんかんぷんだ、付いていけん。やっぱり好きになれなかった。
「……あのぅ、バイク乗りの心得とか、どうでもいいので。さっさと、私たちのバイクの引き渡しを済ませてください」
セーレの指摘を受け、コーンがサイドカー付きのバイクを工場から持ってきた。
「おやっさん、ありがとうございます」
サーメスとの戦闘で転倒した際の傷は補修され、表面は丁寧に研磨されていた。
「いいってことよ」
二人は握手を交わした。
その間にセーレは、バイザー付きヘルメットを頭に被る。立ち止まることなく、サイドカーへ乗り込んだ。そして、二人の話し込む姿を見ながら、縁に肘を置き頬杖をついた。
「では、お世話になりました」
「バイクを頼んだぜ」
「はい、おやっさん」
マークはバイクのエンジンをかけ、最牡の正面入り口から外へ走り出した。アスファルトを走るバイクは、太陽の光を受けて表面が反射し、輝いて見えた。
しばらく走ると、アスファルトの道から砂漠地帯へ変わる。ガタガタ揺れる長い距離を走行し、道とは呼べない道となった。
「さぁ、次は私の神器探しよ」
セーレはより一層元気になっていた。
「なぁ」
マークは気になることを尋ねた。
「何よ」
「君の神器はどんな形をしているんだ?」
彼女は即答した。
「うーん、見た目は槍ね」
「槍?」
「そう。穂は十文字、柄は赤色、石突には獅子がついているわ」
ぽん、ぽん、ちーん。マーク、閃く。女神アテーナーみたいだ。
「そうか、わかった。クライさんから貰った探査機に、反応はあるかい?」
「全くないわね」
眼鏡がよく似合うセーレを周囲を見回した。その間にも砂漠をバイクで走らせる。しかし、一向に神器の反応は掴むことができなかった。気がつけば、夕刻の時間であった。
「今日は、もうこれくらいにしよう。そろそろ野営の準備をしよう」
マークはバイクを止め、パーキングブレーキレバーを引き、エンジンキーを抜いた。
「えぇ、そうね」
セーレは、マークの鞄から四角い小さな箱を手に取った。
「それは何?」
「クライからもらった物」
セーレが箱を地面に置き、蓋を開ける。風船のように膨らんでいく。
やがて風船は四角形となり、二十畳くらいの大きさになった。そして、外観の表面は石と見間違えるほど硬くなった。何とも立派な簡易施設が完成した。
「これは、もはや凄過ぎて、クライさんの発明は何でもありだな」
「さすが、天才ね。これなら、朝方の炎天下でも快適に寝られるわね」
セーレは、施設のドアに手をかけ、中に入る。
室内のドアは四つあり、各々の部屋が構成されていた。一つの部屋を開けると、食材がびっしり入っていた。それもほとんどが固形食料だ。
「今日は、これ食べたら、さっさと寝ましょう」
セーレは固形食料を手渡した。
「そうだな」
マークが取った袋に入った食料の見た目は、ビスケットに近い形だ。一枚手に取り、食べてみる。その味は、苺そのもの。
「何だこれ、見た目はビスケットなのに。まるで生の苺を食べているようだ」
「美味しいわね、気にせず、どんどん食べちゃって」
暴食女、セーレの大食漢が止まらない。
「こんなペースで食べていたら、食料はあっという間に無くなるんじゃないか? 今後のためを考えて、食料の節約も必要なんじゃないか」
「大丈夫よ」
彼女は食料庫から小さな冷蔵庫を持ってきた。中を開けると、袋詰めにされた固形食料がこれでもか、とびっしり敷き詰められていた。
「クライが定期的に補充してくれるから。これで食料に困ることはないわね」
「そうだった。大総統でもあったな。うん、ところで……ワープって、どんな技術なんだ?」
夜な夜な耳元で説明された、セーレの嫌な記憶は即座にシャットダウン。
「ほら、そんなこと気にせず、明日の活力のために食べな」
セーレは、彼の口にビスケットを投げ入れた。
投げ入れた当人は大笑いした。男心としては「もう少し、あーん」の可愛げぐらいほしい、とマークは反抗心をもった。
「じゃあ、私寝るから。アンタもいつまでも、起きてるんじゃないわよ」
「あぁ、おやすみ」
彼女が簡易施設のノブに手をかけようとした瞬間、その手が止まった。周囲には深い霧が発生し、何やら不気味な呻き声が響いた。
「声が聞こえる……誰かしら?」
「どこにいるんだ? セーレ! また優勢思考の連中かもしれない。警戒を!」
マークの声は近くに聞こえる。
『ぎぃー、がぁー』という声が周囲を包み込む。しかし、誰がどこにいるかは判断できない。
「ふふふ……やっと見つけた」
霧舞う中、薄ら見えた黒髪で若めの女性の声だ。
「また優勢思考かしら?」セーレは問う。
「いいえ、違うわ」
「なら誰よ!」
黒髪のボサボサ女が、殺意を露わにした。
「私はビィシャア=エドモンド! あなたを絶対に許さない。あの戦争でパパを殺した、殺人鬼をこの手で仕留めてやる!」
セーレは、戦争の夢を思い出し、少し引きつった顔になった。
「エドモンド!? まさか、あなたの父親は私達の補助をしてくれた」
「えぇ、そうよ。殺人鬼セーレ! 無関係な人間を巻き込んだ、あなたを私は絶対に許さない。覚悟しろ!」
「エドモンド!? そんな、彼の娘だなんて……」
「パパの敵だ。死ね!」
ビィシャアは手に持った鎌の先端をセーレの胸にめがけて振り下ろした――と同時に、ガキィン、と金属音がした。
「何やってるんだ。早く洗脳の力を!」
先端を二本のトンファーで、受け流したのはマークだった。
「何だお前は! 邪魔をするな! 我がクリチャーよ、そいつをやっちゃえ!」
ボサボサ頭のビィシャアの後方から、霧を跳ね除け二体のクリチャーが姿を現した。その魔物はインプとオークと呼ばれていた。
インプは頭に四本の角があり、耳が長く、やや小振りな羽を持つ。約三メートル宙に浮いていた。オークは豚の顔をしたゴリマッチョで、棍棒を振り回している。二体とも身長は二メートルはありそうだ。現実には見たことのない生物だった。
「何だ、こいつらは?」
マークは戸惑うが、敵対者の女性には関係なかった。
「さぁ、やっちゃえ」
霧の中から飛び出し、セーレだけを狙い襲いかかってきた。
「先にお前だけでも倒す!」
マークは、ビィシャアの鎌にトンファーをぶつけて、電流のボタンを押した。けれど、オークの棍棒で殴られて引き離されてしまった。
「あれ? 思ったより、痛くない?」
マークは攻撃を受けたが怪我ひとつない。
衣服が汚れる程度だった。クライが開発した服の防御陣が効力を発揮しているようだ。
「おい、何をしているんだ」
マークは声を張り上げる。セーレには届かない。放心状態で追い詰められていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
彼女の瞳から涙が溢れ出ていた。
「涙? ふざけんな、殺人鬼! お前がいくら泣こうが事実は変わらないんだよ!」
「ごめんなさい……」
「どうしたんだ、早く力を使ってくれ」
血走った目のビィシャアの鎌がセーレに向かう。マークはインプとオークの足止めを受け、フォローできない。
「こいつら、邪魔をするな!」
マークの言葉を聞いたセーレは、我に返りビィシャアを見つめた。鎌の先端が目に近いが、軽い足さばきでかわした。怒った彼女は鎌を乱暴にブンブン振り回すが、髪の毛先すら当たらない。
「あなたの父親、エドモンドの遺言があるの」
「そんな作り話、信じる訳ないでしょう!」
ビィシャアは、強張った表情で叫んだ。
「お願い、私の話を聞いて」
「殺人鬼の話なんて、どうでもいい!」
説得が失敗したセーレの髪は白から銀へと変わった。
ビィシャアは、鎌を投げるがセーレは右側へ走り、避ける。そこを狙い彼女の腰に突進。両手で掴みかかった。
セーレは、背中から倒れ込んだ。流れる動作で、ビィシャアの腰にぶら下げた短剣を掴む。
「死ね、セーレ!!」
振り上げた短剣。セーレの動きを封じるようにマウントを取った。迷うことなく、頭に剣を突き立てようとした。
「ごめんなさい。動きを止めよ。Freeze!」
セーレの力で短剣が静止した。動きを止めた敵対者は、目が充血し、顔全体が赤く興奮している。
「クリチャーよ。私を巻き添えにしても構わない。セーレを攻撃しろ!」ビィシャアも血気盛んだった。
その頃、マークはオークの顔面をトンファーで殴り、電流を流した。六五〇Vの電撃を浴び、怪物は気絶した。
続けて、インプを止めようと走り出したが、飛行能力には追いつけない。
「やれ! 我がクリチャー!」ビィシャアの指示にインプは口から火を吐いた。
危険を察知したセーレは、拘束力で二体の生物を縛った。しかし、火の攻撃を止める手段がない。やるしかない。
「弾け飛べ! Punishment of sin」
「終わりだ! 地獄に落ちろ」
失神したオークと火を吐くインプの体はみるみる膨れ上がり、風船のように爆散した。
「後は、あなただけよ」
セーレは体を揺らしたが、ビィシャアの関節技により、逃げ出すことができない。
「お前はここで、私と死ぬんだ」
ならばとセーレは、右手の黒グローブを前に突き出した。青い光が溢れる。その光が螺旋状となり、二人が光に包まれていく。
マークも慌てて、その光に入ろうとする。
一歩遅れて、二人はどこかへワープしてしまった。
「セーレ〜! 俺を置いて行くなよ! 絶対、見つけ出すからな」
その声は砂漠の風にかき消されていった。
青い螺旋状の光が、オアシスの水面の上に現れた。その光から、二人の影が落下。その人物は、セーレとビィシャアだった。
「ぶはっ――」
水の上から、銀髪のセーレが顔を覗かせた。水は浅めだが、足がつかない深さだった。キョロキョロし、異変に気付く。慌てた様子で水の中に顔をつこんだ。
なんと、ビィシャアが洗脳の力で拘束されたまま泳げずに沈んでいた。慌てた様子で彼女を救出し、腰を抱えて陸へ引き上げた。
「ごほ、ごほ……なぜ、助けた?」
「あなた、本当に死にたかったの?」
ビィシャアは嫌味に聞こえたため、観念したふりをした。
「眷属は潰され、武器はない。お前の拘束も解けない。これでは、何もできない」頭を伏せ、反省した仕草がワザとらしかった。その様子を見たセーレは拘束を解こうとする手を止めた。なぜなら、左手に短剣が握り締められていたからだ。
「こんな拘束意味がない、すぐに解け!」
「解いたら、私の話を聞いてくれる?」とセーレは言ったが、それに対してビィシャアは即座に反論した。
「聞くものか、今度こそ止めを刺してやる」
「なら、あなたの拘束を続けるわ」
ビィシャアは濡れた黒髪の裏に狂気を隠している。そう、標的が油断を晒したら牙を立てるつもりだ。準備は万全だが、月の光に照らされ、今の彼女は蹲っている。
「くそ、お前が憎い!」
セーレの顔を長く見るだけで、復讐心が煮え繰り返る。
「そうよね、憎いわよね……でも私はエドモンドに本当に感謝している。そして、あなたの父親を助けられなくて、ごめんなさい」
セーレはビィシャアを拘束したまま、エドモンドとの出会いや戦争の話を始めた。
コメント
1件
第8話読みました…。ビィシャアの憎しみが痛いほど伝わってきて、胸がぎゅっとなったよ。セーレの『ごめんなさい』、過去の戦争の影が重い…。それでも水から助けたのは、優しさだよね。今度こそ、遺言を聞いてくれるといいな。次回も楽しみ🌙