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第五十七話 雪の向こう側
「見えないものほど、大切だったりする。」
一月中旬。
朝、カーテンを開けると、
街は真っ白な雪に包まれていた。
「積もった……。」
湊は思わず窓を開ける。
冷たい空気が部屋に流れ込み、頬を優しくなでた。
今年初めて見る、本格的な雪景色だった。
*
登校すると、
校庭は雪遊びをする生徒たちで賑わっていた。
雪合戦をする人。
雪だるまを作る人。
スマートフォンで写真を撮る人。
「神崎!」
蓮が手を振る。
「今日は絶対カメラ持ってきてるだろ?」
「もちろん。」
湊がカメラを見せると、美桜が笑った。
「写真部エースの出番だね。」
「エースは言い過ぎ。」
そう言いながらも、自然とカメラを構えていた。
*
放課後。
雪はまだ静かに降り続いていた。
湊は一人で近くの公園へ向かう。
辺りには誰もいない。
雪の上には、まだ誰の足跡もなかった。
「きれいだな……。」
白一色の世界。
静けさまで写真に残せそうだった。
その時。
ベンチに一人のおばあさんが
座っているのが見えた。
肩にはうっすら雪が積もっている。
湊は少し心配になり、近づいた。
「大丈夫ですか?」
おばあさんは優しく笑った。
「ありがとう。」
「少し休んでいただけよ。」
その手には、一枚の古い写真があった。
「それ……。」
湊が尋ねると、
おばあさんは写真を見つめながら話し始めた。
「主人と初めて雪を見た日の写真なの。」
写真には、
若い頃の二人が雪だるまの横で笑っていた。
「毎年、雪が降るとここへ来るの。」
「主人との約束だから。」
湊は静かに耳を傾ける。
「もう会えないけれど……。」
「この景色を見ると、隣で笑っている気がするのよ。」
その言葉に、胸が熱くなった。
*
「写真って、不思議ですね。」
湊がそう言うと、
おばあさんはゆっくりとうなずいた。
「ええ。」
「写真は、時間を止めるものじゃない。」
「時間を、思い出に変えてくれるものよ。」
その言葉は、湊の心に深く残った。
*
別れ際。
おばあさんは微笑んで言った。
「あなたも、大切な人をたくさん撮ってあげてね。」
「きっと、その写真が未来で誰かを笑顔にしてくれるから。」
湊は深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
*
帰り道。
雪は少しだけ弱くなっていた。
湊は誰も歩いていない雪道を振り返る。
そこには、
自分とおばあさんの足跡が並んで続いていた。
カシャッ。
今日最後の一枚。
写っていたのは足跡だけ。
でも、その写真には確かに、
人との出会いが残っていた。
📷 Photo.057『雪の足跡』
撮影日:1月14日
雪は、やがて溶けてしまう。
それでも、
誰かと歩いた足跡は、
心の中で消えることはない。
#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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コメント
1件
いや〜、クラリスさんのこのエピソード、めっちゃ良かった……! 写真が「時間を思い出に変える」ってフレーズ、ガチで刺さったわ。おばあさんと湊の出会い、雪の静けさまで伝わってくる描写で、最後の足跡の写真でじんわり来た。バトルものばかり読んでる俺でも、こういう心温まる話は別枠で好きだな。次も楽しみにしてる🔥