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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第五十八話 「一枚の、その先へ」
「写真は、誰かを忘れないためにあるのかもしれない。」
一月下旬。
雪の日から、一週間が過ぎた。
それでも湊の頭の中には、
公園で出会ったおばあさんの言葉が残っていた。
『写真は、時間を思い出に変えてくれるものよ。』
カメラを持つたびに、その言葉を思い出す。
*
放課後。
写真部では、
来月の校内作品展に向けて準備が始まっていた。
「今回のテーマは『想い』です。」
顧問の先生が黒板に大きく書く。
「景色でも、人でも構いません。」
「写真を見た人に、何か一つでも伝わる作品を撮ってきてください。」
部員たちは静かにメモを取る。
「神崎なら、どんな写真を撮る?」
蓮が聞く。
湊は少し考えてから答えた。
「まだ決めてない。」
「でも、見た人が誰かを思い出せるような写真を撮りたい。」
その言葉に、美桜は優しく微笑んだ。
「湊らしいね。」
*
その夜。
紬から一枚の写真が届いた。
雪が積もる街角。
一人の老夫婦が、
手をつないで歩いている後ろ姿だった。
《今日ね、この二人を見つけたの。》
《なんだか見てるだけで温かくなって、思わず撮っちゃった。》
湊は画面を見つめながら、小さく笑う。
《すごく紬らしい写真。》
《ありがとう😊》
《神崎くんも最近撮った写真、見せて?》
湊は迷った末、
公園で撮った「雪の足跡」の写真を送った。
少しして返信が届く。
《足跡だけなのに…。》
《なんでこんなに泣きそうになるんだろう。》
その一文を見た瞬間、湊は胸が熱くなった。
写真に込めた想いが、ちゃんと伝わった。
それだけで十分だった。
*
翌日の休日。
湊はカメラを持って川沿いを歩いていた。
冬の空は澄み渡り、冷たい風が頬をかすめる。
橋の近くで、小さな男の子がしゃがみ込んでいた。
「どうしたの?」
声をかけると、男の子は少し困った顔で答えた。
「飛べない…。」
見ると、小さな紙飛行機を飛ばそうとしている。
風が強くて、何度飛ばしてもすぐ落ちてしまう。
そこへ、お父さんが近づいた。
「貸してごらん。」
二人で向きを変え、風が弱まるのを待つ。
「今だ!」
紙飛行機は、青空へ向かって大きく飛んでいった。
「飛んだー!」
男の子は満面の笑みで走り出す。
その隣で、お父さんも嬉しそうに笑っていた。
カシャッ。
湊は静かにシャッターを切る。
そこに写っていたのは、紙飛行機ではない。
“一緒に挑戦する時間”だった。
*
帰宅後。
撮った写真を見返しながら、湊はふと思う。
写真に写るのは、人や景色だけじゃない。
言葉にならない気持ちも、一緒に残せるんだ。
そのことを、
少しずつ理解できるようになってきた。
📷 Photo.058『飛び立つ想い』
撮影日:1月22日
写真に写るのは、
目に見える景色だけじゃない。
誰かを信じる気持ちも、
一緒に未来へ飛んでいく。
コメント
1件
ああ、もう…今回も素敵な回でしたね。特に紙飛行機を飛ばす親子のシーン、湊くんが「一緒に挑戦する時間」を切り取ったところがぐっときました。おばあさんの言葉が少しずつ彼の中で形になっていくのが伝わってきて。紬ちゃんとのやりとりも、足跡の写真に「泣きそうになる」って返すところがすごく紬ちゃんらしくて好きです。写真って確かに、見えない気持ちも残せるんだなって改めて思いました。