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これは、超絶かわいい王子と、その執事をしている俺の、ちょっぴりさみしい物語。
桃『赤様、失礼します…』
赤『………ぐぅ…』
桃『赤様?起きてください?』
桃『今日は予定が沢山ありますよ〜』
赤『…………すやぁ…』
桃『赤様?💢』
赤『…………zz』
桃『💢…赤?起きないとキスするよ?』
赤『んやっ…!』ガバッ
赤の取扱説明書①
朝は苦手なのでキスするよ、と言ってあげましょう。
赤は俺とのキスが超絶嫌なので、絶対起きさせることができます。
(呼び方を変えると尚良し。)
桃『起きてるじゃないですか…』
桃『僕だって起こしに来るの嫌なんですよ…』
赤『俺だって桃とキスするの嫌』
桃『それはあまりにも起きない時の最終手段です。』
赤『………今日の予定は?』
桃『今日は他国の王子との取引、国王からのお話…そして…赤様が大好きなお勉強があります』
赤『……いや!勉強の時間なくして!』
桃『これは決まっていることですので。僕の身分では変えることができません。』
赤『………今日の服選んで。』
桃『…わかりました。』
赤の取扱説明書②
機嫌の悪い日は服を選べと言ってきます。断るとめんどくさいことになるので選んであげましょう。
桃『赤様、これでどうですか?』
赤『ぅん、…』
桃『よかったです。お着替えなさったら食事の時間ですよ。部屋の外にいるのでこまったら呼んでください。では、失礼します。』
赤『……わかった…』
赤の取扱説明書③
少し寂しそうにしていても着替えの時は離れましょう。着替えを見ると、後々ぶち切れられます。
ガチャッ
赤『…終わった』
桃『似合ってますニコッ』
桃『さ、お食事の時間ですよ〜』
赤『……/』
赤の取扱説明書④
服を着終わった後は必ず似合ってるよ、と言ってあげましょう。
その後の仕事の調子が良くなります。
ちなみに言わないと勉強もやらないので気を付けてください。
桃『赤様、今日のご飯は何にしますか?』
赤『んー、これとこれとこれ。』
桃『わかりました、先に席に行ってていいですよ』
赤『わかった』
桃『気を付けてくださいね!』
赤の取扱説明書⑤
赤は俺と同じく偏食なので、食事は必ず選ばせてあげましょう。
ただ、我儘な子に育つのは嫌なので、1週間に一回は決められたご飯を食べさせてください。
桃『赤様、持ってきましたよ〜、』
赤『美味しそう…✨』
赤『いただきます、!』
桃『ふふっ…w』
赤『美味しい✨』
桃『そうですか、良かったです(笑)』
赤『はい、あ〜ん』
桃『あ〜、ん、美味しいですね!』
赤『でしょ〜?(笑)』
赤の取扱説明書⑥
自分の分のご飯は持ってこなくて大丈夫です。赤が食べさせてくれます。
自分の分を持ってくると、後でしゅんとした顔になります。
桃『さ、赤様。もうすぐお出掛けの時間ですよ。』
赤『えぇ〜…(´;ω;`)』
桃『そんな顔しても僕は動じませんよ。ほら、お部屋戻って準備しましょう。』
赤『んん…』
桃『はぁ…』ヒョイッ
赤『んぇっ!?』
赤の取扱説明書⑦
仕事に行きたがらないときは抱っこして部屋に連れていきましょう。
ちょっと気分が上がるみたいです。
〈他国の王子の部屋〉
赤『…………』
桃『赤様、緊張してます?』
赤『してないっ…』
桃『大丈夫です。話を聞くだけです。そこからどうするかは赤様におまかせします。』
赤『………っ、』
桃『大丈夫…』
赤の取扱説明書⑧
緊張すると犬耳が垂れ下がります。
敬語で話すと余計に緊張させてしまうので、この時はタメで大丈夫です。
王子『……っていうことなんですが。どうしますかね?赤王子。』
赤『えっとぉ…〜…ん〜…』チラッ
桃『落ち着いてください…大丈夫ですから。(小声)』
赤『僕は…こっちのほうが…いいと思います…』
王子『なるほど…!その考えもありますね…!』
赤『……ホッ』
桃『(笑)』
赤の取扱説明書⑨
自分と違う意見を求められた時、自分の意見を言うことを怖がります。その時は必ず俺の方を向いてくるので、安心させる一言を言ってあげましょう。
王子『今日はありがとうございましたニコッ』
赤『…ありがとうございました…!』
王子『……(笑)』スッ
赤『……!?』
桃『すいません…うちの王子、握手はNGなのでニコッ』
王子『そうでしたか!すいませんでした…』
赤『いえ…!』
赤の取扱説明書⑩
赤は人と握手するのを嫌がります。
しっかり執事の口からNGということを相手の方に伝えましょう。
ぼふっ、
赤『やっぱ自分の部屋が一番だよ〜…』
桃『赤様、帰った瞬間にベッドにダイブするのはやめてください。』
赤『だってぇ…』
桃『これから国王様とのお話ですよ。髪の毛セットしてるんですから崩さないでください。』
赤『うぅっ…』
桃『今日は大忙しなんですから。』
こんこんっ…
メイド『失礼します』
ガチャッ
メイド『赤様、国王様がお呼びです。』
桃『ありがとうございます』
桃『ほら、赤様行きますよ。』
赤『ぁい…』
赤の取扱説明書⑪
家に帰ると必ずベッドにダイブします。
注意しましょう。
赤の取扱説明書⑫
国王様に会うのを嫌がります。
ただ、行かずに怒られると、その後必ず泣くので無理にでも行かせましょう。
赤『……、ゃだ…』
桃『嫌ですね。でもちょっとだけなので。頑張りましょう。』
赤『………お菓子、』
桃『食べましょう。』
赤の取扱説明書⑬
国王様との会談の際には、必ず一緒について行ってあげましょう。
そして、ご褒美を要求してきます。
終わったらあげましょう。
赤『俺頑張った!』
桃『頑張りましたねニコッ』
赤『お菓子ほしい…』
桃『ちゃんと用意してありますよ。』
赤『んふふっ、…』
桃『メイドには秘密ですからね?』
赤『はーい、ニコニコ』
桃『赤様、お菓子を食べ終わったら勉強です。』
赤『うぇ、…やだ…』
桃『今日は僕と勉強しましょうか。』
赤『今日、桃と?』
桃『はい、』
赤『やる…』
赤の取扱説明書⑭
疲れてる日は、先生ではなく自分と勉強をするか提案しましょう。
強制することではないので、あくまでも提案だけです。強制すると後で悔しくて大泣きされることがあります。
赤『今日図書館行きたい』
桃『お、行きましょうか。』
桃『なんのお勉強しますか?』
赤『今日は…気分!』
桃『気分ですか?(笑)』
赤『だから桃も勉強して!』
桃『わかりましたよ…』
赤『んへへっ!』
赤の取扱説明書⑮
自分と勉強するときには、場所、教科、分野。全て自由にさせてあげましょう。
そして、何を勉強していても口を出さないようにしましょう。
赤『今日は…これと…これと…』
桃『いっぱいやりますね…』
赤『今日は桃だから……』
赤『んっ、…あれとって!』
桃『……はいどうぞ』
赤『ありがとう!』
赤『桃は何勉強するの?』
桃『秘密です(笑)』
赤『えーずるーい!』
桃『王子にバレてはいけない執事の秘密ですよニコッ』
赤『そーなんだ…』
赤の取扱説明書⑯
自分が勉強する内容は教えないようにしましょう。
そして、図書館に行ったときには身長が低い赤には届かない本があるので、取ってあげましょう。
桃『赤様、そろそろ終わりにしましょうか。』
赤『はーい!』
赤『俺の今日の予定終わり?』
桃『はい、そうですよ。』
桃『あとは部屋でゆっくりしましょうね〜』
赤『俺今日も頑張った…!』
桃『はい、頑張りましたニコッ』
赤の取扱説明書⑰
1日の予定が終わったら、頑張った?と聞いてくるので、頑張ったと答えましょう。実際、本当に疲れている時があるので癒やしてあげてください。
桃『赤様、お風呂行きましょうか。』
赤『んー!』
桃『今日はなんのお洋服にします?』
赤『これ…!』
桃『わかりました、気をつけていってらっしゃい』
赤『はーい、』
赤の取扱説明書⑱
流石にお風呂一緒はNGです。
タオルと服をそっと置いておきましょう。
桃『髪の毛乾かしました?』
赤『うん!』
桃『今日はお食事どうしますか?』
赤『今日は〜…いらないやっ!』
桃『承知しました。伝えておくので先にお部屋に戻っておいてください。後から向かいます。』
赤『あーぃ、』
赤の取り扱い説明書⑲
夜ご飯は食べないときがあるので毎日欠かさず聞きましょう。
無理に食べさせるのは翌日の朝食が食べられない原因になります。気をつけましょう。
こんこんっ…
桃『失礼します。』
ガチャッ
赤『もう寝る…!』
桃『そうですか、早いですね』
赤『今日はつかれたの。』
桃『お疲れ様ですニコッ』
赤『あのね…青ちゃんにね、会いに行くのいつになるかなぁ…』
桃『いつでしょうね…確認しましょうか。』
赤『うん、それでそれで…!』
赤『………zz』
桃『おやすみなさい。いい夢を。』
ガチャッ
赤の取扱説明書⑳
赤が寝るまで部屋にいてあげましょう。途中で抜けるのは駄目です。本人が承諾した時以外に、赤の部屋で寝るのも駄目です。
(定期的に青にも会わせましょう。)
桃『おしっ、こんなもんかな。』
遂に赤を手放すときが来た。
ずっと前からわかっていたことだ。
赤が1歳の頃。そのとき俺は14。
突然赤の執事になれと言われた。
まだ喋ることもできない。
歩くこともできない。
そんな子を1から育ててきた。
赤は今17。俺は30。
人生の半分であると言われている10代〜20代のすべてを赤にかけ、赤を成人直前の立派な王子に。
まるで自分の子供みたいだった。
初めて歩けるようになった日。
初めて”桃くん”と呼んでくれた日。
初めてトイレができるようになった日。
勉強が嫌だと言って、脱走した日。
雪まみれになって帰ってきた日。
熱を出した日。
一緒に寝た日。お風呂に入った日。
赤と一緒にいた日の全部が宝物で、
一生忘れることのない思い出。
ただ城の中を我武者羅に走り続ける日々。こんな日常も今日で最後。
赤がここまで大っきくなってくれたんだから、もう死んでも悔いはない。
俺の部屋は次の赤の執事の部屋になる。
思い出のものは全部おいていこう。
桃『あ、いちばん大事な事書き忘れた』
………赤の部屋で寝るのも駄目です。
赤をいちばんに考えること。
自分はその次。
あと、赤の前で泣くのもダメ。
執事の身分でも、赤のこと幸せにしろよ。
桃『ちょっと怖いかな…(笑)』
桃『まぁいっか、アイツだし?』
桃『赤の部屋行こ〜』
ガチャッ
赤『……すぅ、…すぅ…』
桃『んふっ、かーわいw』
あんなにちっちゃかったのになぁ…
寝顔はいつまで経っても変わらないね。
ごめんな。旅立つ日まで見てやれなくて。
桃『……赤。大好きだよ。』
赤のおでこにそっとキスをして、
桃『おやすみなさい。いい夢を。』
がちゃんっ…
赤のためだけに16年間着てきた執事のスーツを脱いだ。
こんこんっ…
?『赤様、失礼します…』
いつもとちがう声…なんかふんわりしてる…俺の小さいときから聞いてきた声じゃない…
赤『……ぱちっ、…』
ガチャッ
?『起きてたんですか。』
?『おはようございます赤様。』
?『新しい赤様の執事になりました。』
黄『黄と申します。』
桃くん…何処行ったんだろう。
赤『あっ……えっと…』
黄『…赤様…?』
赤『どちら…様ですか…』
黄『ぇ、もしかして…桃くんから話…聞いてないですか、?』
赤『……こくっ、…』
黄『何やってるんですかあのバカは…』
黄『少し確認してきますね!』
あの人…黄…さん…
これから…俺の執事…
赤『な、ん……で…』
僕の大切な友達。
桃くん。
そんな桃くんがずっと大切にしてたもの。
それが赤様。
赤様が旅立つまではここで働くって言ってたのに、どうして気が変わったのか。僕にもわからない。
赤様にも伝えるって言ってたのに全然伝わっていない。
矛盾が多すぎる。
黄『……チッ電話もでない…』
どういうこと…?
執事を辞める理由も教えてくれない。
赤様に伝えてない。
連絡もつかない。
黄『とりあえず赤様優先…!』
ガチャッ
黄『赤様〜、』
赤『黄…さんっ、…ポロポロ』
赤『おれっ…桃くんがいいのポロポロ』
黄『っ…!』
困っているのは僕だけじゃない。
赤様だって混乱してる。
なのに…なにやってんだ。僕。
黄『国王様に確認してくるので、少し待ってていただけますか?』
赤『こくっ…、ポロ』
黄『ありがとうございますニコッ』
ちゃんと、確認しないと。
黄『どういうことでしょうか。』
王『どういうことというのはなんだね?』
黄『桃さんのことです。』
王『あぁアイツか。』
王『アイツはな…仕事はできるんだが…元々貧乏人の息子だった。』
黄『それだけ…ですか?』
王『王子の執事が貧乏人の息子なんて恥ずかしいだろ?』
王『だから、「あんたが辞めなきゃ赤を殺す。」と言って、無理にでも辞めさせたんだ。』
結局どの国行ったっていちばん大事なのは、命じゃなくて金だ。
桃くんが元々そこまで裕福じゃないのは知っていたこと。
だけど、これはひどすぎる。
黄『僕の身分でこんなことを言うのは大変失礼になると承知したうえで言わせていただきます。』
黄『あなた、バカなんですか?』
王『あ?』
黄『そんなに自分の子供が嫌いですか?』
黄『そんなに自分の使いが嫌いですか?』
王『そういうわけじゃ…!』
黄『大事なのは、その人の中身なんじゃないですか?』
黄『あなたは、その人の中身をみようとせず、周りだけでその人を判断する大馬鹿者なんですね。』
黄『このこと、他のメイドや女王様に伝えたらただ事では無くなりますよ。』
王『お前の分際で、…!』
黄『身分がどーのとか。』
黄『貧乏人だからこうとか。』
黄『この国を任せられないと思ったからこう言ってるだけです。』
黄『まぁ、大切な親友と僕の担当の王子が傷つけられたからっていうのも理由ですかね。』
王『っ…!』
黄『話はそれだけです。』
黄『失礼しました。』
悔しい。泣きたい。
たくさん泣いて叫びたい。
桃くんに会いたい。
会って、抱き締めたい。
そう思うのは、きっとこの世界の汚れた部分が見えてしまったからだろう。
ただ1つ、僕には任された人がいる。
僕の大切な人にとっての大事な人を、任されたから。
僕も大事にしたい。
泣いちゃダメなのに。
黄『っ、……ポロポロ』
涙が出てくるのはどうしてだろう。
黄さんが確認にしてくると言って、もうすぐ1時間が経つ。
こんなに、自分の部屋に1人でいたのは、人生で初めて。
それも、桃くんがここまで俺のことを大事に育ててきたからなのだろうか。
やっぱりちょっと寂しくなって、部屋を出てみる。
部屋を出て、城の中を散歩することに。
歩いていくと偶然にも着いてしまった、父さんの会議室。
今、ここで黄さんが話しているんだろうか。父さんは、何を言っているんだろうか。
少しの好奇心で、盗み聞きをしてみることに。
?『…………です…、…』
?『………か、…』
何を言っているのかはわからない。
でも、1つだけ、はっきりと聞き取れた。
?『だから、「あんたが辞めなきゃ赤を殺す。」と言って、無理にでも辞めさせたんだ。』
赤『っ……!』
俺を…殺す?父さん…?
“あんた”って…桃くんのこと?
俺は、戸惑っていた。
こんなにキレイな城の中で、こんなにも汚いことが起こっているのか。
それのせいで、俺の大事な人はいなくなったのか。
全部、許せなかった。
涙が止まらなかった。
そして、それと同時に思い出した。
俺がまだ、ずっとずっと小さかった頃の記憶。
赤『ももくーん!』
桃『んー?ニコッ』
赤『ももくんのおはなし聞いてねたい!』
桃『えー?(笑)俺の話かぁ…』
赤『ききたいっ!ききたいっ!✨』
桃『仕方ないなぁ…(笑)』
桃『……俺にはね、赤と同じくらい、大事な人がいるの。』
赤『えー?誰〜!』
赤『おかーさんとかおとーさん?』
桃『俺にはお母さんとお父さんはいないんだなぁ…w』
赤『そうなの?』
桃『そう、置いてかれちゃった(笑)』
赤『桃くん、かなし?』
桃『悲しくはないよ〜?赤と、俺の大事な人がいるからね〜』
赤『なまえ…!おしえて…!』
桃『名前はね、”黄”っていうんだよ。』
桃『いつかきっと赤のことを助けてくれるから。覚えてたら「黄くん」って呼んであげてニコッ』
赤『わかった…!』
桃『ん、(笑)』
赤『桃くんっ…』
赤『黄…くんっ…ポロポロ』
黄くん、俺のこと助けに来てくれたの?桃くんがいないから…?
なんで、俺にかまってくれるの?
聞きたいことなんて山程ある。
俺が今いちばん苦しいのは、
桃くんがいなくなったことでも、
代わりに黄くんが来てくれたことでもなく、
この世界を知ってしまったこと。
桃くんがいたら、すぐにそばに来て慰めてくれたのに。
赤『なんでかなぁ…(笑)ポロポロ』
少し経って、目から出る涙はもう無くなっていた。
こんなに泣いたのはいつぶりだろうか。
かれこれ2時間は経ってしまっている。
早く赤様の部屋に戻ろう。
そう思い、一歩足を踏み出した時、
小さい背中が丸まっているのが見えた。
近付くとそれは涙を流してる赤様で。
黄『赤様…?』
赤『っ、…ポロポロ』
黄『なんでこんなところにいるんですか…!』
赤『黄くんっ…ポロ』
衝撃だった。
今朝、会ったばかりなのにくん呼びされる。そんなのおかしい。
赤『黄くんだよね?』
黄『はい…黄です……』
赤『桃くんが言ってたの。ちっちゃい頃に。』
黄『前の執事さんがですか?』
赤『黄くんが桃くんの大事な人なんだって。』
黄『ぇ、?』
何言ってくれてるんだ。アイツは。
赤『黄くんの笑った顔見るとね、桃くんのこと思い出す。2人、すごく似てるんだよ。』
黄『そう…なんですね…』
桃くんと…僕が。
赤『……黄くん、一回だけでいいからさ…”赤”って呼んで。』
少しでいいから、桃くんがいなくなったことに踏ん切りをつけたい。
赤『……黄くん、一回だけでいいからさ…”赤”って呼んで。』
黄『僕がですか?』
赤『ぅん、』
俺のことを育ててくれた大事な人。
俺の大好きな人。
黄『……赤、ここじゃ寒いから、部屋戻るよ。』
大切な思い出は、全部心の引き出しに、しまっておこう。
赤『……うん。』
俺のこれからの人生を進めるように。
新しい執事との一歩を踏み出した。
桃くんがいなくなってから。
赤の執事になってから約1ヶ月。
自分の部屋を掃除していると、1冊の本のようなものがでてきた。
黄『なんだ。これ。』
桃くんのやつか?置いてったのか?
なんて考えながら手に取る。
“赤の取扱説明書”
赤なんて呼ぶの、僕か桃くんくらい。
これを作ったのは桃くんだろう。
中身を読むと、桃くんの今までの経験からの赤の生態がすべて書かれていた。
最後にちょこっと怖い一言も書いてあったが。
黄『絶対、変えてみせよう。』
1人でそんなことを呟いて、僕は赤との生活に戻った。
黄『赤様、起きてください。』
赤『やだぁ…まだ寝るぅ…zz』
黄『赤様?💢』
赤『んぅ?zz』
黄『起きないと殴るよ?💢』
赤『やめてください。起きます。起きます。』
赤の取扱説明書①
朝は苦手なのであまりにも起きなかった場合には、「殴るよ?」と言ってあげましょう。絶対起きます。
威圧感を出すと尚良し。
黄『起きてるじゃないですか…』
赤『だって眠いもん。』
黄『それだから赤様は…』
赤『うるさいうるさいっ…』
黄『赤様が起きないのが悪いです。』
赤『だからって毎朝殴るよって言わなくてもいいじゃん…』
黄『赤様が起きなかった時の最終手段です。』
赤『ん”ぅ…っ…』
黄『………赤。』
赤『なに。』
黄『今日散歩行く?』
赤『うん…!』
赤の取扱説明書②
機嫌が悪い日は威嚇してきます。
「散歩行く?」と聞きましょう。
秒で機嫌が治ります。
赤『今日なにするの?』
黄『今日は特になにもありませんが…』
赤『………✨』
黄『お見合いのために服を特注で頼みに行きます。』
赤『………しゅん、…』
黄『1日中部屋に籠もるのは健康に悪いですよ。ちゃんと体も動かしましょう。それで今日の予定が終わるので。』
赤『……頑張る。』
黄『頑張りましょうニコッ』
赤の取扱説明書③
朝の段階では今日の予定を省いて伝えましょう。少しでも仕事への気分を上がらせるためです。
黄『赤様、今日のご飯は何にしますか?』
赤『んー、これとこれとこれ。』
黄『わかりました、先に席に行ってていいですよ』
赤『わかった』
黄『気を付けてくださいね!』
赤の取扱説明書④
赤は偏食なので、食事は必ず選ばせてあげましょう。
ただ、お見合いのために、1週間に一回は決められたご飯を食べさせてください。
黄『赤様、持ってきましたよ〜、』
赤『美味しそう…✨』
赤『いただきます、!』
黄『ふふっ…w』
赤『美味しい✨』
黄『そうですか、良かったです(笑)』
赤『はい、あ〜ん』
黄『あ〜、ん、美味しいですね!』
赤『でしょ〜?(笑)』
赤の取扱説明書⑤
自分の分のご飯は持ってこなくて大丈夫です。赤が食べさせてくれます。
自分の分を持ってくると、後でしゅんとした顔になります。
黄『ほら赤様。そろそろ行きますよ。』
赤『えぇ…やだぁ…(´;ω;`)』
黄『そんな顔しても僕は動じませんよ。』
赤『(´;ω;`)✨』
黄『…チッ』
赤『………!ゾワッ』
赤の取扱説明書⑥
仕事に行きたがらないときは袖をまくって、拳を見せましょう。
怯えた顔で部屋に戻ります。
〈専属の洋服屋さん〉
店員『どれにしますか?』
黄『赤様、どれにします?』
赤『んん…っ…』
黄『好きなの選んでいいんですよ。』
黄『なんでも似合いますから。』
赤『じゃぁこれ。』
黄『これでお願いしますニコッ』
店員『かしこまりました。』
赤の取扱説明書⑦
決断するのが苦手なので、少し声をかけましょう。頑張って選択肢の中から選んでくれます。
赤『〜〜〜♪』
黄『赤様、次は国王様との会談ですよ。』
赤『は〜い♪』
赤の取扱説明書⑧
散歩中の気分がいい時に次の予定を話しましょう。何でも了承してくれます。
赤『今日の予定でこんなこと話してなかった!』
黄『失礼しました。忘れていたもので。』
赤『絶対嘘。』
黄『……嘘だと思われて結構です。』
赤の取扱説明書⑨
実はこのやり取り毎日してます。
赤『なんで父さんと話さないといけないの…』
黄『仕方のないことです。』
赤『っ………』
黄『赤様、緊張してます?』
赤『してないっ…』
黄『あー強がっちゃうんだ。終わったらご褒美あげようと思ったのになぁ…』
赤『うっ………がんばる。』
黄『はいっ…』
赤の取扱説明書⑩
国王様と会うのを嫌がります。
ご褒美を用意しておくといいでしょう。
ぼふっ、
赤『やっぱ自分の部屋が一番だよ〜…』
黄『赤様、帰った瞬間にベッドにダイブするのはやめてください。』
赤『だってぇ…』
赤の取り扱い説明書⑪
部屋に戻ると必ずベッドにダイブします。
注意しましょう。
赤『俺頑張った!』
黄『頑張りましたねニコッ』
赤『お菓子ほしい…』
黄『ちゃんと用意してありますよ。』
赤『んふふっ、…』
黄『メイドには秘密ですからね?』
赤『はーい、ニコニコ』
黄『赤様、お菓子を食べ終わったら勉強です。』
赤『うぇ、…やだ…』
黄『今日は僕と勉強しましょうか。』
赤『今日、黄と?』
黄『はい、』
赤『やる…』
赤の取扱説明書⑫
疲れてる日は、先生ではなく自分と勉強をするか提案しましょう。
強制することではないので、あくまでも提案だけです。強制すると後で悔しくて大泣きされることがあります。
赤『今日図書館行きたい』
黄『あ、行きますか。』
黄『なんのお勉強にされるんですか?』
赤『今日は…気分!』
黄『気分ですか?(笑)』
赤『だから黄も勉強して!』
黄『わかりましたわかりました。』
赤『んへへっ!』
赤の取扱説明書⑬
自分と勉強するときには、場所、教科、分野。全て自由にさせてあげましょう。
そして、何を勉強していても口を出さないようにしましょう。
赤『今日は…これと…これと…』
黄『いっぱいやりますね…』
赤『今日は黄くんだから……』
赤『んっ、…あれとって!』
黄『……はいどうぞ』
赤『ありがとう!』
赤『黄は何勉強するの?』
黄『秘密です(笑)』
赤『えーずるーい!』
黄『なにがなんでも秘密なんですよ💢』
赤『そ、そーなんだ………』
赤の取扱説明書⑭
自分が勉強する内容は教えないようにしましょう。
そして、図書館に行ったときには身長が低い赤には届かない本があるので、取ってあげましょう。
黄『赤様、そろそろ終わりにしましょうか。』
赤『はーい!』
赤『俺の今日の予定終わり?』
赤『もう…追加してこない?』
黄『はい、そうですよ。』
黄『あとは部屋でゆっくりしましょうか。』
赤『俺今日も頑張った…!』
黄『はい、頑張りましたニコッ』
赤の取扱説明書⑮
1日の予定が終わったら、頑張った?と聞いてくるので、頑張ったと答えましょう。実際、本当に疲れている時があるので癒やしてあげてください。
黄『赤様、お風呂行きましょうか。』
赤『んー!』
黄『今日はなんのお洋服にします?』
赤『これ…!』
黄『わかりました、気をつけていってらっしゃい』
赤『はーい、』
赤の取扱説明書⑯
流石にお風呂一緒はNGです。
タオルと服をそっと置いておきましょう。
黄『髪の毛乾かしました?』
赤『うん!』
黄『今日はお食事どうされますか?』
赤『今日は〜…いらないやっ!』
黄『承知しました。伝えておくので先にお部屋に戻っておいてください。後から向かいます。』
赤『あーぃ、』
赤の取扱説明書⑰
夜ご飯は食べないときがあるので毎日欠かさず聞きましょう。
無理に食べさせるのは翌日の朝食が食べられない原因になります。気をつけましょう。
こんこんっ…
黄『失礼します。』
ガチャッ
赤『もう寝る…!』
黄『そうですか、早いですね』
赤『今日はつかれたの。』
黄『お疲れ様ですニコッ』
赤『………zz』
黄『おやすみなさい。いい夢を。』
ガチャッ
赤の取扱説明書⑱
赤が寝るまで部屋にいてあげましょう。途中で抜けるのは駄目です。本人が承諾した時以外に、赤の部屋で寝るのも駄目です。
がたんっ、
黄『ん?』
こんこんっ、
黄『赤様、失礼します。』
ガチャッ
黄『眠れなかったですか?』
赤『黄…くん…』
黄『眠れなかったら言ってくださいといつも言っているでしょう。』
赤『なんで…こんな時間まで起きてるの。』
黄『赤のためです。』
赤『…………っ』
黄『ほら、寝ますよ。』
赤『……うんっ、』
黄『…………』
赤『ねぇっ…、』
黄『まだ起きてらっしゃったんですか。』
赤『黄くん…いなくなったりしないよね?』
黄『大丈夫ですよ。ずっといますニコッ』
赤の取扱説明書⑲
眠れない夜は、一緒に寝てあげましょう。不安で寝れないことがあります。
理由はあまり聞かないようにしましょう。
赤『zzz』
黄『おやすみなさい。いい夢を。』
がちゃんっ…
赤の取扱説明書⑳
赤様が寝たことを確認してから部屋を出ましょう。そして、眠れなかった日の翌日は、仕事がない限り、あまり早く起こさないように心掛けましょう。
“赤の取扱説明書 未成年ver.(桃)”
“赤の取扱説明書 成人ver.(黄)”
青『なんだ。これ。』
end…?
追記
この連載の3話目に続きを書かせて頂いてます!よかったら見ていってください!
コメント
10件
桃くんが執事のときはにこにこしながら見てたんですけど、黄くんに変わってまた取扱説明書が始まったとき、苦しいぐらいにボロ泣きでした笑😭 もうほんとだいすきです。。。涙止まりませんでした😿 ブクマ失礼します!!!👀💓 これ番外編みたいな感じで青くんverとか続き的なの出すの考えてますか…??少しでも考えてたら、わたしはめちゃめちゃみたいです…!!!もうほんとに最高でした🙌🏻💞
読み終わった後に色々考えすぎて自然と涙が、、、😭個人的にさと💗くんの時が好きです、待って普通に涙止まらない😭
最高すぎる… 出会いも別れも一瞬ということを改めて感じさせられる素敵な作品でしたありがとうございますm(__)m