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#バレンタイン
セレーネ「アラスターがおいでって」
チームVのタワーから離れたラジオ塔の屋上。
歓声とノイズが混じった電波が、肌にまとわりつく。
「地獄最強」「ヴォックス」「勝者」――
そんな言葉が、洪水のように流れ込んでくる。
「……はぁ」
嫌な予感は、大体いつも当たる。
しかも今回は、胸の奥が妙にざわつく。
理由は、はっきりしている。
アラスターがいる。
それだけで十分だ。
シャット「……また、面倒なことになってる」
彼が“大人しく捕まっている”なんて、
そんな都合のいい話があるわけがない。
シャット「それで?」
セレーネ「ヴォックスが、主のことに気づかなかった」
シャット「あとは? 他に何か言ってた?」
セレーネ「アラスターが、主を愛してる」
シャット「……」
胸が、ちくりと痛む。
理由は分からない。
――名前じゃない。
――魂でもない。
――契約でもない。
シャットは、指先で自分の喉元を押さえる。
昔からそうだ。
アラスターは、直接は言わない。
大事なことほど、
本人がいないところで、
相手を選んで、
刃物のように使う。
シャット「……ほんっと、性格悪い」
嫌じゃない。
むしろ――分かっていた。
あの男は、
自分を“守るため”じゃなく、
自分を“武器にするため”に愛を使う。
それが、アラスターだ。
シャット「……バカ」
小さく呟く。
指輪を握りしめ、薬指にはめる。
そういうところが、私も好きなのかもしれない。
シャットは、黒い翼をゆっくりと広げる。
その頃――
アラスターとヴォックスの戦いは、今やアラスターが優勢だった。
だが、ヴォックスのサメ型兵器“ショックウェーブ”が襲いかかる。
アラスター「こんにちは?」
ヴォックス「ショックウェーブ!」
アラスター「あーあ。やっぱりペットの助けがないとダメですね!」
ヴォックス「お前に言われたくねぇよ!」
ショックウェーブのしっぽが、アラスターに当たる――
ヴォックス「やめろ、私だ…!ゴブッ!」
吹き飛ばされたアラスターの視界に、カミラの作った兵器が迫る。
ヴォックス「カメラ目線で笑えよ!ビッチ!」
兵器がアラスターを捉え、放たれたビームが直撃しそうになるその瞬間――
黒い羽が、風を切って落ちる。
アラスター「…!シャル…?」
アラスターは兵器のビームに当たる覚悟だった。
避けても、地面に叩きつけられるのは確実だった。
だが――落ちなかった。
触れたのは、痛みや冷たい地面ではない。
自分が100年以上、そばにいて温めてきた――
その“温もり”だった。