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きみの瞳に恋をしている 壱

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きみの瞳に恋をしている 壱

53 - 第53話 Y・DAY 弾道ミサイルは尖閣諸島南小島へ向けて放たれた

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2025年10月18日

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闇が覚めていく。
薄れゆく闇。


それは朝靄のように。


音もなく、ゆっくりと。


僕の隣でスヤスヤ寝息をたてていたハスミの、大きくて潤んだ瞳が僕を心配そうに覗き込んでいる。


「大河、大丈夫?」


「え。あ。うん。大丈夫」


「うなされてたよ」


「あ。うん。なんかヤな夢見てた気がー」


僕は夢を見ていた。


だけど、はっきりとは覚えていない。


確か。


公安とか、テロとか。キムとか。


時計の針は04:00をさしている。


まだ辺りは真っ暗だった。


ハスミの露わになった上半身を抱き締めながら僕は言った。


「なんか、忘れちゃった」


ハスミはコクリと頷いて、キスをせがむような顔をした。


「んッー」


おたがいの冷たい鼻先がくすぐったくて。


その感覚は魔法みたいで。


僕は夢のことなんかどうでもよくなっていた。


そして裸のまんま。


キスをした格好のまま。


僕たちは再び眠りに堕ちていった。


いつもの香りと甘い心に包まれながらー





大河とハスミは、買ったばかりのカウチソファーに腰掛けて情報バラエティー番組を観ていた。

日曜日の午前中、ふたりでゆっくりと過ごす時間は久しぶりで、バルコニーからは洗濯機がまわる音が聞こえている。

1LDK、3階角部屋の窓は全て開け放たれ、冷たい秋風が運んでくる金木犀の香りが心地良い。

ミルクティーに口をつけるハスミの頬はすこしだけ火照っていて、その身体からは石鹸のいい匂いもしていた。

大河は幸せだった。

何にもない時間が穏やかで、何でもない事柄も嬉しかった。

洗濯機のまわる音でさえもー

女性タレントが熟成肉のステーキに舌鼓をうち、司会者とコメンテーターがその店の評価についてトークを繰り広げている。

芸人達が『食わせろ』『どっちかと言うとラーメンが好き』『もっと気の利いたコメントを!』等々を囃し立て、スタジオ内の観客達からは笑いが巻き起こる。

見慣れた番組。

ありきたりなテレビの風景。

それでもハスミは楽しそうに笑っていた。


『ねえ、今度行こっか?』


ハスミの問いかけに大河が頷いた時、テレビの画面上部に速報が流れた。


『緊急速報 北 弾道ミサイル発射 落下予想地域 尖閣諸島 南小島近海』


大河もハスミも、速報の内容については興味を示さなかった。

遠い世界の関係のない事柄でしかなかったのた。

スタジオが報道フロアへと切り替わる。

ベテランの女性アナウンサーが同じ台詞を繰り返していた。


『たった今入りました情報によりますと、北がミサイルを発射した模様です。繰り返します。北、ミサイル発射。推定落下地域。尖閣諸島 南小島近海。到達予想時刻。11時35分。繰り返します。推定落下地域ー』


続け様に、九州、沖縄地方の地図が画面に映し出されて、東シナ海、尖閣諸島周辺の区域は赤枠で囲まれていた。

大河は呟いた。


『ヤバくない?』


袴田首相の緊急会見に場面は移る。

報道陣に一礼した後に淡々と語り始めた。


『国民の皆様。本日、11時28分。北が弾道ミサイルを発射致しました。核弾頭を搭載したミサイルです。どうか皆様、冷静な判断と行動をお願い致します。宮古島近海には現在。海上自衛隊のミサイル護衛艦しらね、あかつき、たてやまが配備されておりますがー』


ハスミは窓に駆け寄り空を眺めながら言った。


『見えるのかなあ、ミサイル?』


袴田首相の冷静な口調と、ハスミのいつもと変わらない声に大河は違和感を覚えていた。


『日本国民の皆様。我が国は現在戦争状態に有ります』


画面下部にテロップが流れ始める。


『中国ー北を猛烈に非難。日本に冷静な対応求める ー米国ー我々は同盟国日本と共にあるー台湾ー我々は宣戦布告を受けた!ーインド、オーストラリアー如何なる場合も日本の判断を支持するーロシアー日本への協力を惜しまないー』


テレビ画面は、宮古島市役所屋上から東シナ海を捉えたライブ映像へと切り替わった。

初めて耳にする『国民保護サイレン』の不快な響きとアナウンスの音が交互に鳴り響いている。


『弾道ミサイル発射情報 弾道ミサイル発射情報 当地域に、着弾する恐れがあります。屋内に避難し、テレビ、ラジオはつけたままにしてください』


きみの瞳に恋をしている 壱

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