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嘉村堂

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嘉村堂

8 - 第8話 疑惑

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2023年09月09日

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「疑問」

4限目の授業が終わり、僕は教科書を片付けて昼食に向かおうと席を立った。

「お~い、晴斗。学食行こうぜ。」山内の大きな声が教室に響いた。

山内の隣には岩田もいて、何やら酷く慌てていた。

「早く行こうぜ~。B定食がまた食べられなくなるじゃん。あれ、めちゃくちゃ人気なんだからよ~。」

「わかった、行こうぜ。」

僕達は食堂に向かおうと廊下に出た。

「うわっ!!」

山内が廊下に出て、右手に曲がろうとした時に誰かとぶつかったみたいだった。

「ごめんなさい。前、ちゃんと見てなくて。」

山内とぶつかった相手は体を少しよろめかせながらそう告げた。

「って佐藤さん?!」

山内が相変わらず大きな声を出した。

「ご、ごめんなさい!!怪我とかしてない?」

佐藤さんは少し困った様子で「大丈夫だから。ごめんね。」と言って教室に入って行った。

佐藤さんは何処か元気が無いように見えた。

勘違いだと良いけど。

「やっぱり佐藤さんは良いなぁ~。優しいし、人気者な理由が裏付けるよな。」

山内が岩田に佐藤さんの話題を話している。 それにしても佐藤さんはやっぱり人気があるな。

「まぁ、でもあんなにモテるんならもう彼氏ぐらい居てもおかしくないだろ。」

「やっぱりそうなのかな~。」

「あっB定食!!」

山内がまた大きな声を上げた。

それから僕達は足早に食堂に向かった。


ホームルームが終わって僕は山内達と挨拶を交わした後、教室を後にした。

僕は一人で階段を下り、生徒玄関に向かった。

それから僕は下駄箱を開けて靴を履き、校門に向かって歩いた。

「いち~に~いちに」

野球部がランニングをしている声がグラウンドの方から聞こえてくる。

次第にその声が大きくなってきて、野球部員達が僕の前を通り過ぎっていった。

僕は再び歩き出し、野球部員達の掛け声が聞こえ無くなった頃に校門にたどり着いた。

校門から出て右手に回り、坂を下ろうとすると背後から声を掛けられた。

「やっと来た!!遅すぎ~。」

振り返るとそこには佐藤さんが立っていた。

「どうしたの?佐藤さん。今日は嘉村堂へは行かないよ。」

佐藤さんが少しだけ気まずそうに答えた。

「晴斗くんにさ、聞きたいことがあって。この前のおじさんのことなんだけど。」

僕が昼休みの時に佐藤さんに感じた違和感はその事が原因みたいだった。

「それでどうしたの?」

「ほら、おじさん言ってたじゃない。和哉さんって人のことが心残りだって。それに、おじさんはその人の親代わりだって言ってたからどういうことかなぁって気になって。」

やっぱり和哉のことか。

佐藤さんから聞きたいことがあるって言われてから、なんとなく見当はついていた。 

「って他人の私が聞くようなことじゃ無いよね」

「分かった、此処で話すのは何だから。 どっかに移動しよっか。」

僕らは公民館の隣にある小さな公園に来た。

もう日が暮れそうな時間になっていることもあるのか遊んでいる子供は居なかった。

外灯のそばにあるベンチに腰を下ろし、僕らは一息ついた。

「何か飲み物いる?」

「じゃあ私は炭酸のジュースで」

僕は自販機に500円玉を入れて、お茶と炭酸のボタンを押した。

ベンチに座っている彼女に炭酸のジュースを渡す。

「ありがとう。」

僕は小さく頷いて彼女の隣に座って、お茶を一口飲んだ。

それからゆっくりとなるべく丁寧に和哉とおじさんのことを話した。

「和哉とは、小さい頃とか良く一緒に遊んでてさ。いつも和哉はおじさんに連れられて嘉村堂に来てた。菊さんと僕とおじさんと和哉で夕食なんか食べたりしてさ、楽しかった。僕が小学校3年生くらいの時かな?急に二人とも来なくなったんだよ。後から分かったことなんだけど、その時に和哉の両親が交通事故で亡くなったらしい。それからおじさんが和哉の親代わりになったんだ。おじさんは奥さんを早くに亡くしてたら、男手一つでとても大変だったみたい。それから何度か和哉は嘉村堂に顔を見せにきたよ。中学生になってからは全然見なくなったけど…..。」

僕は自分の知ってることを赤裸々に話した。

まるで佐藤さんに投げつけるみたいに。

「そうだったんだ…..。」

佐藤さんはしばらく下を向いて黙り込んでしまった。

しばらくて佐藤さんはベンチから立ち上がった。

「ありがとう。話してくれて。」

佐藤さんはそう言うと、両手を挙げて体を伸ばした後「帰ろっか」と僕に言った。

「あ~ごめん、寄るところあるからさ先に帰ってて。」

「えっ、でも次の電車が最後だよ。」

佐藤さんが心配そうにしている。

「大丈夫だよ、嘉村堂で泊めて貰うから。」

それから僕は彼女と公園で別れた。

僕は目的地に向かいながら、菊さんに連絡した。

菊さんは曰く「いつでも泊まりにおいで」との事だった。

それから僕は大通りに出て、街の中心部を目指して歩いた。

辺りは暗く、建物の光だけが街を照らしていた。

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