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嘉村堂

9 - 第9話 理由なんか聞かない

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2023年09月19日

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「理由なんか聞かない」

僕は街の中心部にに来ていた。 周りにには小さなビルが沢山そびえ立っていて看板の光だけで町を照らしているかのようだった。

僕が町中を歩いていると途中で3人組の男達が前方から近づいて来る。

「うぇ~い、飲んだな~」

「ああ飲んだ、飲んだ!!」

酒臭い、どうやら酔っ払いのようだ。

その3人組がどんどん近づいてきてすれ違いそうになった。

すると僕と左端の男の目が合った。

「う~ん?あんちゃん。学生じゃないか?危ないぞ。こんなぁところで~一人なんて。」

「ええ、この先に少し用があって。」

僕が返すと別の男が僕に話し出した。

「そういや、最近よく若い奴ら見るなあ~。柄の悪い奴らと一緒に歩いてるののも良くみるし。あんたもそいつらのツレか?」

「いえ、違います。それより本当に若い人達が居るんですか?」

「ああ、多分あいつら学生なんじゃないかな。3駅前の駅で乗ってきてこの町の駅で降りたのを見たからA高校の生徒だと思うぜ。」

「その人達いつも何処に居るか分かります?」

男は顎髭を触りながら面倒くさそうに答える。

「この先を右手に曲がって暫く歩いたところでよく見るよ。」

「教えて下さってありがとうございます。」

男達はまた歩き出し、さっきの男が振り向いて「気をつけるんだぞ~、警察が最近見回りしてるみたいだから。」と言った。 僕が軽く頭を下げると男達は大きく手を振り返した。

僕は男達と別れ、再び町を歩き出した。 僕は言われた通りに十字路を右手に曲がり、歩いて行った。

少し歩いていくと街の雰囲気がガラッと変わった。 それはいかにも夜の街という感じで自分が来るような所では無いことがすぐに分かった。

僕がそのまま歩いていると若い人達の5人組のグループが見えた。

「えっ」

その中に見覚えのある男が見えた。

「和哉!?」

その5人組は立ち止まり、僕の方に目を向ける。

「もしかして、お前晴斗か?」

その中の一人が僕に尋ねる。

「ああ。」

和哉は驚いた表情を見せた後すぐにそれを隠すように下を向いた。

「和哉~あいつ、お前の名前呼んでたけど。知り合い?」

大柄な男が和哉に尋ねる。

「うん、そうなんだよね。こいつ昔からの知り合いでさ~。」

「ふ~ん。」

「ごめん、忠平くん。先に行っててくれない?後でちゃんと戻って来るからさ。」

和哉はその男に頼み込んでいた。

「遅れんじゃねえぞ。」

そう言うと『忠平くん』と呼ばれていたその男は他の奴らを引き連れて何処かへ行ってしまった。

それから僕と和哉は近くのコンビニに向かった。 僕らは駐車場の端で壁に寄りかかって、コンビニで買ったジュースを口にした。

「晴斗、お前何しに来たんだよ。」

少し不機嫌そうな口調に思えた。

「何って、本当は分かってるんだろ?僕がお前に会いに来た理由なんて……..。」

和哉は何も言わず、黙り込んでしまった。

「何してんだよ。おじいさん心配してた!!お前のこと。」

「晴斗には関係ないじゃねえか。」

「そうかもな、僕はお前の血縁じゃないし、それでも僕はお前のことを本当の兄弟のように思ってる。」

和哉はまた黙った。

「理由なんか聞かない、でもお前のことを心配している人が居ることを忘れるなよ。それが言いたかっただけだ。」

僕は吐き捨てるように和哉にそう言った後、和哉に背を向けた。

「じゃあな、和哉。」

僕はそれから振りかえずに歩き続けた。 和哉が何を思ってあんなことをしてるのかは知らない。 それでも僕は伝えたかった。 僕達の気持ちを。



僕は嘉村堂のドアをゆっくりと開ける。 座敷に上がると菊さんが座ってテレビを見ていた。

「お帰り、早くご飯食べな。」

菊さんはまたにっこりと笑ってそう言った。 それから僕は風呂に入って、夕食を食べた。 僕は今日あったことをひと言も話さなかった。

それから僕は嘉村堂の2階に上がり、布団に潜った。 布団は菊さんが敷いてくれたようだ。

『和哉があんなことをするには何か理由があるんじゃないか』と心の何処かでそう思っている自分が居た。

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