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 アイリスディーナが通う魔法剣士学園。

 談話室。

 そこで黒崎創建は王都再建の指揮を取っていた。総勢1000名の星十字騎士団の顔を隠した精鋭兵士達を隊長に任命して、10000名の一般兵が王都再建と治安回復をさせていた。


 王都内は白い制服を着込み、顔を隠した殲滅者達が巡回するのが当たり前になっていた。

 一通りの仕事を終えて、時間ができると黒崎創建にずっと疲労がのしかかってきた。

 トントン、とノックがされる。


「どうぞ」

「失礼します」

「………」


 ドアからはキルゲ・シュタインビルドと首に鎖、魔力封じの手錠された金髪エルフ。アンダー・ジャスティスの副リーダー、エーゼ・ロワンが現れた。

 彼女は最初のライナーによる救済者であり心酔者である。アンダー・ジャスティスの勢力拡大をもっとも手助けした人物だ。

 エーゼ・ロワンは地面に鎖で繋がれ、犬なようなポーズになる。


「キルゲ先生、お久しぶりです」

「お久しぶりです、創建くん。真世界城での陛下の後継者任命式典以来ですね。ちゃんと元気にやってますか? 修練はしてますか?」

「はい。体調管理も、殲滅術式の修練もかかしてません」

「素晴らしい」

「お茶を淹れます」

「ええ、お願いします」


 白いコップにお茶が注がれる。良い匂いが部屋を満たした。キルゲ・シュタインビルドと黒崎創建は部屋のソファにお互い対面になるように座ると、キルゲ・シュタインビルドの方から話を切り出し始めた。


「この金髪のエルフ、エーゼ・ロワンさん。彼女はアンダー・ジャスティスの一員です。彼女には我々のスパイとなって、情報をこちら側へ流すようにしてほしい」

「誰がそんなことをするか! 私を侮らないことね! どんな拷問にも屈しないわ」

「はい、それはもちろん。ですが、私達としては一番地位があり、信頼も厚い貴方が、我々に協力してくれることが望ましい」

「そんなことしない」


 そこまで話を聞いていた黒崎創建は眼鏡をクイッと上げた。


「なるほど、そこで僕の力ですか」

「ええ、【Ⅰ】の聖数字。『逆さ磔の反転成立』指定した2点の間に“既に起きた”出来事を“逆転”させる。彼の能力で、アンダー・ジャスティスの仲間やライナー・ホワイトに関する感情を反転させることで、我々、光の帝国に心酔させることも可能なのです。そして、改変された、という記憶も反転してなかった事になる」

「なっ」

「自分の意志でスパイになるか、能力を使われてスパイになるか、二つに一つ。どうしますか? エーゼ・ロワンさん」

「…………わかったわ。貴方達のスパイになる」

「ハァイ! そんなこと言われても信用できるはずがありませんねぇ! 自らスパイとなり欺瞞情報を流すことを考えたのでしょうが、そんなことさせません! 貴方には心から私達に尽くしてもらい〼!」

「や、やめっ! ライナー! いやっ、嫌よ! 誰か! 助けて」

「創建さん、お願いします」

「わかりました。【Ⅰ】の聖数字『逆さ磔の反転成立』を実行』


 瞬間、エーゼ・ロワンは気を失い倒れた。

 キルゲ・シュタインビルドは拘束を外し、自らの横に寝かせる。キルゲ・シュタインビルドは慈愛の瞳でエーゼ・ロワンを眺める。

 美しい顔だ。


「私、長い間生きてきましたが、ペットを飼うもいうのは初めてなんですよね。ちゃんとお世話でき〼かねぇ」

「キルゲ先生なら大丈夫ですよ。ペットいっても自立した人間並の知能がありますし、キルゲさんは優しいですから、きっとペットになれて彼女も幸せに感じると思いますよ」

「そう言われると照れますねぇ」

「そうだ、一つご相談がありまして」

「仕事の話ですね。何でしょう」

「これについてです」


【アンダー・ジャスティスを恐れよ!】

【アンダー・ジャスティスによる裁き!】

【アンダー・ジャスティスによって殲滅者の圧政は終わる!】

【殲滅者、を憎むものよ集え! アンダー・ジャスティスへ!】


 複数枚の紋章が書かれた紙を黒崎創建は取り出してキルゲ・シュタインビルドに見せた。

 それは全てアンダー・ジャスティスを名乗る組織が、黒崎創建の統治下である王都で犯罪をおかしている証拠と自らの正体を誇示する宣伝だった。


「これは十中八九、偽物です。陰に潜み戦力を蓄えたい状況でありたいライナー・ホワイトが表舞台に組織を出すわけがない。これは敵対組織、可能性としてはニャルラトホテプ教団が一番でしょう」

「なるほど、それで創建くんはこれについてどう対策を?」

「提案は二つあります。一つは完全に殲滅してしまうこと。それによってアンダー・ジャスティスは安心して勢力を拡大できますが、ニャルラトホテプ教団という対立仮想敵を失ったアンダー・ジャスティスは緩やかに解散されてしまうでしょう。何故ならリーダーであるライナー・ホワイトがそもそもアンダー・ジャスティスという組織に拘っておらず、たまたまそこにあったから使っているという態度で、勢力拡大に励んでいたエーゼ・ロワンが我々の手に落ちている」

「道理ですね。ライナー・ホワイトは人知れず人を守れる実力者でありたいという衝動は自己愛性人格障害や強迫性障害に近い。そしてそこに仲間は必要としていない。敵と観客は必要としていても、自分一人で完結している」

「道理ですね。二人つ目は?」

「無干渉です。アンダー・ジャスティスの問題はアンダー・ジャスティスに解決させる」

「なるほど、しかし王都を統治する者としてそれはまずいのではないですか? 光の帝国の威光に傷がつく可能性があります」

「はい。それは考えてました。なので妥協案として、エーゼ・ロワンとアイリスディーナ王女を通したアンダー・ジャスティスの間接的な支援が落とし所と考えてます。アンダー・ジャスティス勢力の実質的なリーダーであるエーゼ・ロワンが指揮を取れば光の帝国への憎しみより偽物のアンダー・ジャスティス撲滅を優先するでしょう」

「素晴らしい! 私と同じ結論に至るとは。いやはや、子供の成長というのは早いものですね」

「やめてください、キルゲさん」


 黒崎創建は若い殲滅者だ。数千年生きているキルゲ・シュタインビルド達とは違い、およそ17年しか生きていない。しかしその潜在能力は高く、習得修練開始から7日で完聖体をマスターした。またキルゲ・シュタインビルドと同じく、聖数字に頼った戦い方ではなく、あらゆる武装や基礎技術を使った戦い方をする。これは師匠であるキルゲ・シュタインビルドの教えもあるが、黒崎創建自身が選んだ道だった。


 なのでキルゲ・シュタインビルドと黒崎創建は仲は良好だった。お互いに聖数字を持ちつつも基礎技術を疎かにしない殲滅者らしい殲滅者としてお互いを誇りに思い、尊敬する間柄だった。


「う、うう」

「おや、エーゼ・ロワン。起きましたか?」

「キルゲ様、申し訳ありません。こんなところで寝てしまうなんて」

「いえいえ、アンダー・ジャスティスへの潜入任務は気苦労が多くて大変でしょう。ゆっくり休んでください。命令はこれまで通り、アンダー・ジャスティスの勢力拡大に力を注いでください」

「了解しました」

「それでは私は失礼します。久しぶりに会えて良かったですよ、創建君」

「僕もです。キルゲ先生」


 扉が閉まる。

異世界侵略部隊隊長キルゲ・シュタインビルトの華麗なる活躍

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