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諸々の事情により最近、YOASOBIの『三原色』のMVを基にした短編小説を書いたので、ここにも載せようと思います!
あくまでMVのみを参考にして、私の考察も含まれるので、実際にある小説との内容は違うと思いますが、ご了承🙏
YOASOBIの著作権について一応調べて大丈夫かな、と思ったので投稿しているんですが、ダメだったら教えてください、一瞬で消します
『会いたい!』
物語の続きは、それから始まった。
「・・・会いたいなあ。」
バスに揺られながら言葉をこぼした。待ち合わせの時間が待ち遠しい。 今日は再会の日。大切な二人、離れ離れになってしまった親友ともう一度、会える。
『じゃあ、11時に「トロワ」に集合』
待ち合わせ場所のカフェに向かう。 雨上がりの空に虹がかかっている。この橋がきっと、僕たちを巡り合わせてくれる。 あの日から、幾つ朝日を見たことか。2人はどんな暮らしをしているのだろう。 何を話そうか。どれから伝えようか。一つずつ考えていくたびに胸が高鳴る。
・・・
時は僕、赤木陸の小学生時代に遡る。
「りく、そら!あそぼ!」
話しかけたのは例の親友の一人、緑谷薫。おてんばで、誰にでも心を開いて快く接する。僕は 彼女のそんな性格が好きだ。
「うん」
答えたのはもう一人の、青山空。常に落ち着いていて、頭も良い。一緒にいると気楽だ。
僕たち3人は親友だ。放課後は毎日近くの裏山や公園で日暮れまで遊んだ。
・・・
カフェの前に、黄色いバラが植えられている。
「よっ」
メニューを見ている間に空が手を振りながら来た。
「おっ、久しぶりだな!」
「うわあ。陸、背高くなったなあ」
あの頃は同じくらいだった身長が、僕のほうが一回り高くなっている。改めて、久しぶりを感じた。
「あっ、薫だ」
それにつられて空が振り向くと、薫が向こうから走ってくるのが見えた。
「二人ともー!」
薫が手をふるたびに薬指のあたりがちらちら光る、あれは、、、結婚指輪か?あまりにびっくりし てリュックサックがずり落ちたけれど、空と薫は僕が気づいたことも知らずに頭の上にはてなマーク を浮かべていた。
「・・・薫、結婚したんだ。」
薫は僕たち2人と、もう1人大切な人を見つけたようだ。大人になったことを実感した。
・・・
あの頃、誕生日に自由帳を買ってもらったことがある。それに3人の絵を描いて、空と薫だけに見
せた。
「こっちがりくで、こっちがぼく?すごくにてるなあ」
「わたしのも!」
喜んでくれたことが嬉しかった。
「これ、2人にもかすよ。3人だけで順番にかいて、交換日記しようよ」
「いいね、それ!自由に好きなことをかけるの!」
「確かに。楽しそうだね」
その日から、3人で交換日記を始めた。楽しかったこと、悲しかったこと、思い出話から土産話ま で話したいこと、伝えたいことを交換し合った。
一度だけ、薫を好きじゃなくなったことがある。
いつか、小学校の廊下を歩いていた時。
「・・・これみてよ、すごいよね」
(この声、薫だ)
「ほんとだ、いいなこんな絵かけて。」
(絵?まさか、、、!)
「そらとりくと、交換日記やってるの!」
(3人だけって、言ったのに、、、!)
教室で、薫が彼女の友達に交換日記を見せていた。悪びれる素振りもなく。扉越しに薫と目が あった。
(3人、3人だけって、、、言ったのに!なんで!)
「かおりなんて、きらいだ!」
後先考えずに放った言葉で、結局僕はその日一日悩みっぱなしだった。
・・・
「・・・なんてこともあったなあ」
「ねっ」
「交換日記、あれ何だっけ、僕が失敗しちゃった話もあるよね・・・」
「空、先生が後ろにいることにも気づかずに授業中、日記見てるんだもん、ふふっ」 「俺、結構ショックだったよ、3人以外に僕たちの絵を見られるなんて、、、」
幾つも思い出し合っては、会えなかった分を取り戻していくように 笑って、また話して笑って、ずっと繰り返していた。話したいことが口から溢れ出していく。まるで昔 に戻ったみたいだ。
・・・
離れ離れになってしまったのは、小学校を卒業してからだ。
「僕、岩手県の学校に行かなきゃならなくなった。大人のジジョウってやつ。」 「私も2人と違う学校にいかなきゃ、、、。悲しいよ、、、。」
「いつか会えるよ、きっと!」
「「「それじゃ、またね」」」
大丈夫、僕たちはずっと繋がってる。たとえ、日記が途切れてしまっても、離れ離れになっても、 また出会える。 卒業の日から、受験勉強をして一人暮らしを始めて仕事をして疲れて、、、いろんなことがあっ た。目まぐるしく回っていく世界の中でも僕たちを結ぶ絆は解けない。
・・・
「陸!ストライクよ!」
「よおし、、、!それっ」
「・・・おおっ、本当にストライクだ!」
「よっしゃあああ!」
ボールが進んでいくたび、3人で過ごした日々がフラッシュバックしていく。ずっとこのままだった ら良いのに、、、。
「次はダーツと、カラオケと、、、」
「クレーンゲームもしよう!」
「よし、出発!」
それから、僕たちは遊んで遊んで、遊びまくった。明日のことも気にせず遊んでいたら、空が白 み始めていた。もうすぐ朝日が昇って、、、もう離れ離れにならなければいけないのか。疲れた体 にこの事実が堪えて、泣けてきた。でも僕たちは何度離れ離れになっても、絆は解けない、何度で も結び直せることを知っている。
「陸も薫も、変わったなあ。陸なんか、僕より背が高くなってるし」
「ねー、しばらく見ないうちに成長したわ、お互い」
「でも、案外変わって無いんじゃない?」 「そうかも。みんな違う生活してたけど、今日は昔と変わらなかったもん。」
あの日以来、進んで来た道は違う。でも、3人とは、あっけないほどあの頃のように過ごせた。交 換日記は一度途切れてしまった、けれど。またあの日の続きができて、本当に嬉しかった。この一 日だけでどれほどのページを埋められるだろう。
朝日が昇る。本当にお別れのときだ。卒業の日と同じ様にまたそれぞれの道を進む。いつかの 夕日も、青春の日々も、絶対に忘れない。何度でも出会って結び直して書き足して。また会える。
「・・・じゃあ、また明日。」
「明日?」
「あっ。ほんとに昔に戻ったみたいで、明日も会えるって思っちゃった。」
「ふふっ。また明日!陸、空!」
「・・・うん、また明日!陸、薫。」
「また明日、また3人で会おう!」