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「先輩、これ見えてますか?」
そう言いながら、彼女は何かを持つ。
「あ、見えないんでしたよね? 」
「…”___”だから。」
色が感じられない。
そんな瞳に映るのは、
嫌味ったらしく嗤う彼女の姿だった。
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「…転校してきました、
“ 鈴 木 彩 “って言います。」
灰色の視界で生徒達は拍手した。
緊張しながら、狭い通路を通る。
やっとのことで自分の席に座り、溜め息を吐く。
「…よろしくお願いします。」
「よろしくね、鈴木さん。」
明らかに陽キャそうな生徒に話し掛ける。
意外にもちゃんとしてそうな人で、
優しい陽キャも居るんだと驚いた。
「僕は” 東 雲 彰 人 “って言います。
何かあったら言ってね。」
「はい…ありがとうございます。」
濃い色の髪に薄い色のメッシュ。
窓から射し込む光に反射して、
太陽のように感じられる。
もし、色が感じられたら…もっと…
綺麗に見えたんだろうな。
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「鈴木さん、何の色使う?」
「えっと…パールオレンジだけじゃないの?」
転校してきて初めての美術の時間。
今日の課題は、人物像を描く…というもの。
そして、それはペアで行われるんだけど…
「というか…この人は辞めない?」
「えぇ…えななんだよ!?
めちゃめちゃ可愛いのに…」
私達は喧嘩をしていた。
描く人物は私が決めて良いって言ってたのに…
えななんを描きたいと言ったら、
東雲くんは頑なに辞めさせようとする。
「…分かったよ。
けど…
使う色はパールオレンジだけじゃないから。」
「え…そうなの?」
私が知らなかったと言うと、
東雲くんは青の絵の具をパレットに乗せた。
「青色なんて…肌に使うの?」
肌は暖色だ。
それと真逆の青色を使うなんて…
どうかしている。
「混ぜたら綺麗になるし、
影を付けるのにも役立つから。」
「へぇ…」
東雲くんの筆はキャンバスの上を踊るように滑っていく。
その姿に見惚れていると、
東雲くんは不思議そうに聞いた。
「何で絵の具に色の名前を書いてるの? 」
見れば分かるのに__
そんな悪意のない言葉が私の心を蝕む。
「何となくかな…?」
傷付いた心を隠すように、私は嘘を重ねた。
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東雲姉弟に愛される物語が読みたい!
そんな気持ちで作られた物語です。
読んでくださると嬉しいです✨️
それでは👋
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