テラーノベル
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瀬名 紫陽花
#創作
『人間は、溶けて終わるんだよ』
目の前の男は言った。
咄嗟にその男の胸ぐらを掴む。
「お前…っ、なんでそんな平然と…!!」
「逆にどんな風に言えばいいんだ?僕はこの世界の末路を言ってるだけさ」
淡々と、砂鳴(さなき)は言葉を放つ。
青白いランタンだけが希望の光のようにそこにある。その光だけが、砂鳴の瞳に映る。
光があっても、部屋はただただ暗く、儚く、流れる水が滴る。
声はよく反響するくせに、水の音に乱される。
「希雄(きゆう)くん。君の言い分もわかるよ。地獄の雨に打たれ家族が死に、愛犬も死に、親友も死んだんだろ。そんな絶望の中、この雨を終わらす方法があると知ったなら、そりゃあ希望を抱かずにはいられないだろう」
「わかってるなら、なんで、なんで俺を騙したんだ…!」
俯きながら、涙を堪え希雄は言った。砂鳴を掴む手に力が増していく。
「お前が…唯一俺に残された友人のお前が、教えてくれたんじゃないか…。この死の雨を終わらす方法があるって…!!終わらすためなら俺はなんだってやる、俺の命がどうなろうがなんだっていい!」
「諦めろ。人間は神の怒りに触れたんだ。神に、人間の言葉は届かない」
「じゃあその石はなんだ?」
希雄の言葉に砂鳴は咄嗟に手を隠す。
砂鳴の手の中、石が紫に光り輝いていた。
「…っ」
「それには世界を救う力があるんじゃないのか?神の力の宿る洞窟の中に眠る宝石に、この雨を止める力があるってお前は言った!だから手伝ったのに、それでここまできたのに、石を見つけた瞬間これか!?」
「…じゃあもう全部言ってあげるよ。僕は、神をここまで追い詰めた人間に腹が立ってるのさ。身勝手に生きたくせに死が近づけば許しを乞うなんてね…!身勝手も甚だしい。…この石を破壊すれば、もう世界はこの雨を止められない。人間なんて全員溶ければいいさ。君を利用したことは謝ろう。だが全部は神のためだ」
次の瞬間、鈍い音が部屋に鳴り響いた。そして砂鳴が倒れ込む。砂鳴は何も言わず、光のない空虚な瞳のまま、殴られた箇所を手で押さえる。
「そんなの、許すわけねえだろ」
「…君が許す許さないじゃない。君は独裁者にでもなったつもりか?それが愚かだって言ってるんだよ」
もう一度希雄が殴りかかったとき、砂鳴は希雄を本棚の方へと蹴り飛ばす。
本棚にぶつかった反動で、埃の被った本がいくつも希雄の頭にぶつかった。
「僕はこの石を破壊しにいく。この洞窟にはそれがあるんだ」
「待てよ、行かせるわけねぇだろ…っ!!」
「うるさい騒ぐな。君は僕には追いつけないよ。この洞窟の内部構造は僕は全て把握しているしね。…せいぜい足掻けばいいさ」
そういい砂鳴は駆け足でこの部屋を去った。
「なんだ、どうすればいい…!」
希雄は焦り周りを見渡すと、先ほど落ちた本の一冊が目に入る。
その本は落ちた衝撃でとあるページが見開かれていた。そこには__先ほどの砂鳴の持っていた石が描かれていた。
咄嗟に希雄はその本を手に取る。
「…!これだ…!!これをやれば、世界は救われる!」
『紫に光り輝く神秘の宝石、その姿蒼き塗料で光封じ込めよ。さすればたちまち神の力は封じられる』
そう綴られた文字の上に、その蒼き塗料のことと、宝石のことが記された図があった。
そして、その部屋の机の上に目をやると地図があった。開くとそれはこの洞窟の内部構造。
「…これ…来る時あいつが持ってたやつ…」
世界を救えるということを言った時の砂鳴の顔と声を思い出す。光の入った瞳で、笑っていたあの頃。…あれは演技だったのか…?
「いや、もうあいつは世界の敵だ。余計なことは考えてる暇なんかない、早くあいつを止めないと…!!」
希雄は地図を持ってその部屋を後にした。
本の別ページに残された__代償という言葉を知らずに。
コメント
16件
神作品ですねこれは(???)
うわ、これ1話から重い展開来たな…!「人間は溶けて終わる」って冒頭の台詞が一気に世界観に引き込むし、砂鳴の裏切りの動機が「人間の身勝手さへの怒り」ってのがめちゃくちゃ生々しい。希雄が唯一の友人に利用された絶望と、それでも世界を救おうと足掻く姿にぐっときたわ。そして最後の「代償」の伏せ方、上手すぎる。続きが気になる…!🔥