コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は綿の精霊たちの欲望を満たす者《もの》として綿の精霊たちがいる世界に招《まね》かれた。
「なあ、綿の精霊の女王様よ。俺はいつまでここにいればいいんだ?」
「この世界には温《ぬく》もり不足の子がわんさかいます。正確な数は分かりませんが、おそらく百万匹はいると思います」
そ、そんなにいるのか……。
あー、気が遠くなるなー。
「あー、そうなのかー。じゃあ、俺はこれで」
「あなたがここから出るには、私と子どもたちの欲望を満たす以外に方法はないですよ」
「いや、それは分かってるんだけどさ、俺一人でどうにかなる数じゃないだろ」
「では、数を少なくすれば良いのですね」
「え? あー、まあ、そうだな」
そんなことできるのか?
「分かりました。では、そうしましょう。子どもたちよ! 融合して一つの存在となりなさい!」
綿の精霊たちの女王が指をパチンと鳴らすと、綿の精霊たちは融合し始めた。
細胞分裂の逆再生を見ているような感じだった。
「ず、ずいぶんでかくなったな」
「そうですねー」
なんだろう。白くて巨大な綿の塊《かたまり》のはずなのに、繭《まゆ》にしか見えないな。
「コットンキング……いや、コットンエンペラーだな、これは」
「コットンエンペラー……いい名前ですね。よしよし」
女王様は俺のことを子ども扱いしている。
まあ、見た目が子どもだから仕方ないんだけどな。
でも、執拗《しつよう》に頭を撫でるのはやめてほしいな。
「あんまりベタベタしないでくれ。あと、子ども扱いするのもやめてくれ」
「えー、別にいいじゃないですかー。ねー? 子どもたち」
『はいー』
お前ら……。
まあ、いいか。早く帰れるのなら万々歳だ。
「そうか、そうか。よし、じゃあ、来い!」
『やー!』
コットンエンペラーが俺めがけて転がってくる。
これは目を閉じた方がいいのかな?
まあ、一応閉じておこう。
「では、私も失礼して」
「は? なんでそうなるんだよ」
「うーん、なんとなく?」
なぜに疑問形なんだ?
「あー、はいはい、分かりましたよ。女王様も一緒にコットンエンペラーの中に入りましょう」
「よろしい」
彼女はニッコリ笑うと、俺をギュッと抱きしめた。
コットンエンペラーが俺と女王様を包み込む。
一応、目は閉じている。
「少年。目を開けてみてください」
「いや、それだと目に綿が入るだろ」
「いいから開けてください。ほらほら」
「ちょ、それ、やめっ!」
女王様に脇の下をくすぐられてしまった俺は思わず目を開けてしまった。
目を開けると、そこは綿の楽園だった。
全身にふわふわとした感触が伝わっていく。
「ね? 大丈夫だったでしょう」
「そ、そうだな。というか、顔が近いぞ」
目と目でキスするつもりか?
「近いと何か良くないことが起こるのですか?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど。ただ、俺は一応男だからさ、異性にハグされたり近づかれるとドキドキするっていうかなんというか」
彼女はクスッと笑う。
な、なんだ? 俺、なんか変なこと言ったか?
「少年は面白いですね。将来、私のお婿《むこ》さんにしてあげてもいいですよー」
「おねショタは嫌いじゃないが、自分がやられるのは嫌なんでね、丁重にお断りさせてもらうよ」
「あら、残念」
こいつ、俺をからかってるのか?
それとも本気なのか?
なんか掴みどころのないやつだな。
俺は綿の精霊たちが満足するまで、コットンエンペラーの中で女王様に抱きしめられていた。