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綿の精霊たちの欲望が満たされたのはナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)の体感時間で約三時間後だった。
「や、やっと……終わった……」
「お疲れ様でした。よく頑張りましたね、よしよし」
綿の精霊たちの女王様は俺の頭を執拗《しつよう》に撫でている。
あんた、もしかして俺のこと狙ってるのか?
「気安く頭に触るな。というか、もうここにいる必要はなくなったんだから早くここから出してくれよ」
「……うーん、それは……ちょっと無理ですねー」
「は? ちょ、それどういう意味だよ」
彼女はニッコリ笑うと、俺をギュッと抱きしめた。
「私、あなたのことが気に入りました。なので、あなたにはずっとここにいてもらいます。これは決定事項です。異論は認めません」
「は? ちょ、ふざけるな! 俺は早くみんなのところに帰らないといけないんだよ!」
「あなたの体は複数の存在に侵食されています。今は大丈夫でも、そのうち体が壊れていきます。しかし、私ならそれを治すことができます」
「何が言いたいんだ?」
俺は抵抗するのをやめた。
「ここに残ってくださるのなら、あなたの体を治して差し上げます。ですが、もしそうしない場合は」
「場合は?」
数秒間の沈黙の後《のち》。
彼女はゆっくりと口を開いた。
「あなたの体に聖痕《せいこん》を刻み込んで私に逆《さか》らうことができなくなるようにします」
「それはどこのクェイサーだ? というか、それはあれだろ。令呪とかいうやつだろ?」
「令呪? ではないと思います。なぜなら、それは私があなたに命令する度《たび》に発動するからです」
な、なんてこった。綿の精霊たちの女王のくせにそんな恐ろしいことができるのか。
まあ、女王ならそういう力が使えてもおかしくないな。
「えっと、どうしても俺を元の世界に返すつもりはないのか?」
「はい、ありません。あなたは私のものです。誰にも渡しません」
独占欲がすさまじいな、おい。
はぁ……いったいどうすればいいんだろうなー。
「なら、もし俺がその前に自害する……って言ったらどうするんだ?」
「それは……困ります。けれど、あなたはそう簡単に死ねません」
「よく知ってるな。けど、やろうと思えばできるんだぞ? 体をバラバラにした後、体の各部位をそれぞれ別の場所で冷凍保存するとか、細胞一つ残さず破壊するとか……」
「そんなことはしませんし、したくありません。私はただ、あなたを……あなたの温《ぬく》もりを感じていたいだけなのですから」
それが迷惑なんだよなー。