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「……雪之丞、大丈夫か? いけそう?」
「多分大丈夫。まだわからない部分もあるけど、彼女に聞きながら出来る限りやってみるよ。ロボットの方は、ある程度の基礎的な動きがプログラミングしてあるから問題なく動かせそうだし、微調整位ならボクにでも出来そう」
「そうか、雪之丞が居てくれてよかったよ」
「……ッ」
素直な気持ちを述べれば、ほんの僅かに間が出来た。何か言いたげに口を開きかけたが何も言わず、赤くなった頬を誤魔化すようにそっぽを向いてしまう。
その様子に悪戯心が芽生えてしまい、つい意地悪したくなった。
「……照れてるの? 可愛いなぁ雪之丞は」
「っち、ち、違うからっ! ボ、ボクッ、プログラム終了させて来る!」
耳元でそっと囁いただけで、真っ赤になって耳を押さえながら逃げて行く。
その様子が面白くて、もっと揶揄いたい衝動に駆られたが、これ以上やると本気で怒りそうなので止めておく事にした。
「お兄さんってほんっと、節操ないよね」
「なに? ヤキモチか?」
「……ッ違うし!」
横で呆れたような声を挙げるナギに意地悪く口角を上げて尋ねれば、案の定彼は不機嫌そうな表情でこちらを睨んできた。
「そんな可愛い顔で睨まれても、意識してるのかって思うだけだよ」
「……~っ、そういうとこ、ほんっとムカつく!」
ぷいっと顔を逸らすナギの頭を撫でると、思いっきり足を踏みつけられそうになりギリギリのところで足をずらして避けた。
「危ないな。踏んだら痛いだろう?」
「くっ、避けないでよ」
ムッとした表情でそんな事を言う。いや、普通に今のは避けるだろう。痛いのは嫌だし。
こういうところはまだ子供っぽいんだよなぁ……。思わずニヤけそうになるのをなんとか堪えながら、コホンと咳ばらいを一つして、気を取り直すと蓮は部屋全体を見渡した。
取り敢えず、CGの件はきっと雪之丞がきっと何とかしてくれるだろう。彼には負担を増やしてしまい申し訳ないとは思うが、緊急事態だ。致し方ない。
残る問題は……資金調達をどうするか、だが……。
「――とにかく、後はどうやってスポンサーを獲得するか、よね」
美月の言葉に一同は再びうーんと頭を悩ませる。
「やっぱり地道に声を掛けて回るしかないんじゃないでしょうか?」
「でも、それだと効率悪くない?」
「うーん……」
皆、一様に困り果てた表情を浮かべていた。
「あ、あのう……。皆さんは配信とかされないんですか?」
すると今まで黙っていた二階堂が恐る恐るという感じで手を挙げた。
一同が一斉に彼の方へと視線を向ける。それに驚きビクつきつつも二階堂は言葉を続ける。
「あっ、いえっすみません! 最近は番宣で配信をされる所が多いって聞いていたので、放送の間だけでも番宣用のアカウントを作ったらどうかな?って、奈々先輩と以前話していただけなんです……」
「そ、そ、それだ!!」
成程、確かにそれは名案かもしれない。確かに、動画配信サイトに動画を投稿すれば、広告収入で収益を得られる。つまり、この案件を上手く利用できれば、制作費が捻出できるという事ではないだろうか。
「盲点だったわ! そうね、配信と言う手があったじゃないの!」
「そうですね、二階堂さん。ナイスアイディア。ありがとうございます!」
「は、はひっ!」
弓弦にガシッと手を握られ、彼女は今にも顔から火が出そうになるほど顔を赤く染め上げていた。
相変わらずモテる男だなぁと苦笑しつつ、彼女の反応を見ているとどうやらまんざらでもないらしい事が窺える。
それもそうだろう。技術職で番組制作に携わっているとはいえ、こんなに間近で今を時めく人気俳優と握手が出来る事なんてめったにない。
自分だって、長年アクターとして制作に携わってきたが、内部に入るのはコレが初めてだ。
「では、新たなスポンサーを探しつつ配信で収益を得るという方向で行こうと思うが異論がある奴は居るか?」
凛の問いに、メンバーはみな顔を見合わせ、そして首を横に振った。
「……あの、兄さん……?」
ソファに凭れながら蓮は、戸惑いの声を挙げた。皆と別れた後、珍しく家に来ると言い出した兄を連れて帰ったまでは良かった。
一緒に軽い夕飯を済ませた後、ソファに座る蓮の膝に突如頭を乗せかけて来たのだ。
「どうした?」
膝枕が気に入ったのか、凛が上目遣いで蓮の顔を覗き込んだ。柔らかい髪が膝をくすぐり、蓮は一瞬顔を顰める。
「こういう事は、彼女にやってもらった方がいいんじゃない?」
「俺に彼女を作る暇があると思うのか?」
「それは……」
兄の仕事を見ていればどれだけ忙しいのか容易に想像がつく。
これからは監督業も兼任するというのだから、恋人を作る暇など無いに等しいだろう。
でも、だからと言って弟に膝枕を要求するとはどういう了見だ。
「……こうすると落ち着くんだ」
「僕は変な気分だけどね」
苦笑しながら手を伸ばし、凛の乱れた前髪を梳いた。普段は厳しい兄の意外な一面を見た気がして、なんだかくすぐったい。
気持ちよさそうに目を細める姿はまるで大きな猫のようだ。
「なんだ、ヤりたくなったのか?」
ククッと喉で笑いながら冗談交じりに言われ、蓮は思わず眉を寄せる。
「……ハハッ、冗談でしょ。いくら何でも兄さんには勃たないよ」
流石にそこまで見境がないことをするつもりは無いし、欲求を満たすだけの相手なら沢山いる。
「俺はいつでもお前を抱きたいと思っているが」
「……」
さらりととんでもない事を言ってのける兄に、蓮は呆れたように溜息をつく。
「冗談キツイよ。兄さん」
「本気だと言ったら?」
「……そういうとこ、ほんとタチ悪い。僕にそんな事言うのは兄さんだけだと思うけど?」
「ふっ、そうだな」
抱いて欲しいと迫られたことは多々あるが、抱きたいなどと言われたのはこれが初めてだ。冗談とも本気とも取れない兄の言動に思わず失笑が洩れ蓮は呆れたように肩を落とす。
「……ねぇ、もしかして酔ってる?」
「いや? 今日は酒は飲んでいないぞ?」
「じゃあ、なんでそんな事……」
「たまにはこういう日もある」
「……兄さんのキャラじゃないだろ」
兄らしくもない。いつもはクールで冷静沈着。誰よりも大人びていて、弱音なんて一切吐かない人なのに。