テラーノベル
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会話が弾みかけているのを意識して、正源はなるべく力強い声で言った。
「ロボットになるかどうかは分かりませんが、何かの新しい機械に生まれ変わる、そういう事でしょうね」
「そうですね。ピーちゃんはまたどこかの工場で新しい何かに生まれ変わって、また人様の役に立てるのでしょう。私はそう信じる事にします」
それから数分、他愛もない世間話をして、女性はその場を辞した。門の所まで女性を見送り、正源は何度も振り返って深々とお辞儀をしながら去って行くその後ろ姿を見送った。
それからしばらくは何も変わった事はなく、寺の経営は相変わらず火の車のまま、梅雨が過ぎ夏が来た。
七月のかんかん照りのある日、正源の寺の本山から依頼があった。日本海側のある町へ行って死者の供養をして欲しいという内容だった。
その宗派の、その町の寺は数年前に廃寺になってしまっていて、供養ができる僧侶がいない状態だということだった。
提示された依頼料は悪くない金額だった。正源はその場で依頼を快諾した。
北陸新幹線で最寄りの都市へ行き、改札を出たところで市役所の職員が迎えに来ていた。
汗でよれよれになった半袖開襟シャツを着た中年の職員は、正源がまだ若いのに一瞬驚いたようだったが、すぐに愛想笑いを浮かべてワンボックスカーまで案内した。
正源を後部座席に座らせ、職員がエンジンをかけた。車体全体が小刻みに震え、久しぶりにエンジンの始動音を聞いた。
「ガソリン車ですか? いまどき珍しいですね」
そう言った正源に市役所の男は、唇をゆがめて苦笑いを浮かべて応えた。
「うちみたいな田舎の自治体じゃ、電気自動車だの燃料電池車だの、そんな高い車はとても買えませんよ。和尚さんは東京の方だから、そんな物飽きる程見てらっしゃるんでしょうね」
そこから車でたっぷり一時間の山あいが依頼された仕事の現場だった。その間、正源は職員から仕事の詳細を聞いた。
「それで仏さんは何人ですか?」
「ええっと」
職員はダッシュボードの上のファイルケースを手に取り、片手で開いてちらっと見ながら答えた。
「三十三人ですね」
驚いた正源は思わず身を乗り出した。
「何か、事故か災害でもありましたか? 一度にそんなに多くのご遺体が出るとは」
職員は言いにくそうな口調と表情でゆっくり答えた。
「いえ、それが、ここ半年で出たホトケなんですよ」
コメント
1件
いやー、今回も良かったわ…! 最初のピーちゃんの話、掃除機に魂があるって発想がすごく温かくて、正源さんの優しさがにじんでた。で、後半でいきなり「33人」って数字がドンと来て、日常から一気に非日常に引きずり込まれる感じがたまらん。この緩急の付け方、マジで好み🔥 次どうなるか気になりすぎる!