テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
236
53
コメント
3件

いろいろありすぎてる😭
しゅんの手の温もりに包まれながら、僕は自分の過去を、その歪んでしまった幼少期からの道のりを、ぽつり、ぽつりと紐解くように話し始めた。
それは、これまでの僕のすべてだった。
大学での僕はさ……
今までと同じように特別仲のいい友達も作らず、マイペースに過ごしてた。
学費と生活費を稼ぐために、居酒屋とカラオケのアルバイトを掛け持ちして、単位を落とさないように学校にもちゃんと行って。
……そこそこ、真面目にやってたつもり。
友達がいないこと以外は、ごく普通の大学生だったと思う。
でも、この年齢になると、否応なしに色々な人間と関わることが増えていく。
そうなると、自分のまわりからの評価というか、自分が周囲からどういう目で見られているか、…嫌でも分かってしまうんだ。
僕のこの顔。
すらっとした身体。
病的なまでに白い肌。
どうやら、他人の欲をそそるらしい。
……それも、男女問わず。
僕の意思なんて、これっぽっちも関係なく。
思い返せば、思い当たる節目は幼い頃からいくつもあった。
小さい頃から僕の周りにはいつも勝手に人が集まってきたし、バレンタインには話したこともない子からチョコレートをもらったりもした。
周りから見れば、いわゆる「人気者」だったんだと思う。
でも、学年が上がるにつれて、僕の中身を見ようとせず、ただ見た目だけの価値で近づいてくる人が増えていった。
僕は、ただの綺麗な飾り物なのかな。
誰も、僕の心になんて興味はないんじゃないか。
そう感じるたびに、僕の心は徐々に、人間不信という名の冷たい檻に閉じこもっていった。
理不尽な恐怖は、それだけじゃなかった。
小学生のころ、公園で遊んでる時に、知らないおじさんに車へ連れ去られそうになったこともあった。
……あれは、本当に怖かったな。
中学に上がると、電車通学が始まった。
そこで、日常的に痴漢に遭うようになった。
はじめは頭が真っ白になって、家に帰ってから自室でひとりで声を殺して泣いた。
でも、何度も、何度もそれを経験するうちに、徐々に心の感覚が麻痺して、鈍くなっていくのが分かった。
――自分さえ我慢すれば、波風は立たない。
そう自分に言い聞かせるうちに、いつしか泣くこともなくなった。
高校生の頃には、見知らぬ年上の女性に、執拗にストーカーをされたこともあった。
数え切れないほどの理不尽を経験して、その分、僕はただ「無駄に我慢すること」だけが上手くなっていった。
さらに中学校では、僕が周囲から好かれていることを面白く思わない奴らから、徐々にいじめを受けるようになった。
最初は無視や陰口といった、よくある軽い嫌がらせだった。
けれど、中学2年生に上がった頃には、自分の教科書や私物がなくなったり、ボロボロに傷つけられたりすることが日常茶飯事になった。
そして中学3年生になれば、物だけじゃなく、僕の身体そのものに直接、暴力を振るわれるようになった。
親には、何度も言おうとしたんだよ。
……でも、言えなかった
僕は幼い頃から要領が良かったし、愛嬌もあった。
それに、この顔のせいで、親からはいつも勝手に高い期待をかけられ、都合のいい理想像を押し付けられていた。
そんな環境にいたから、他人の顔色を伺うことだけは人一倍得意になっていたんだ。
別に、親のことは嫌いじゃない。
愛されていることは確かに感じていたし、大切に育ててもらったという感謝もある。
でも、だからこそ、がっかりされたくなかった。僕のせいで、親を傷つけたくなかったんだ…。
結局、誰にも、何ひとつ言えないまま。
僕は中学校生活の地獄を、たったひとりで耐え抜いた。
高校に上がるとき、僕は誰も僕を知っている人がいない、遠く離れた街の高校を受験した。
逃げるようにして、地元を離れたんだ。
高校生での慣れない一人暮らしは想像以上に大変だったけれど、誰にも何も期待されず、誰にも干渉されないその部屋は、僕にとって極上の隠れ家だった。
髪を長く伸ばして前髪で目を隠し、度の強い眼鏡をかけ、常にマスクをして顔を隠した。
クラスでもできる限り目立たないように、壁のシミにでもなったつもりで、ひっそりと過ごした。
それでも、電車に乗れば、僕の隣にぴったりと近づいてくる人はいた。
暗闇で手を伸ばし、僕の身体を触ってくる人もいた。
大人しそうに、無抵抗に見えるから、余計に標的にされやすかったのかもしれない。
でも、僕はもう、その頃には完全に”慣れっこ”だった。
だって、殴られたりするわけじゃない。
服の上から触られるくらい、実質なんともない。
僕がほんの少しの間、息を止めて我慢さえすれば、それで全てが丸く収まるのだから。
そんなこんなで、高校の3年間は、わりと何事もなく過ぎ去っていった。
……あの頃の自分のことは、結構好きだったんだよ。
僕なりに、幸せだった。
だって、あの場所には、僕を助けてくれた優しい人(――しゅん)もいた。
あの雨の日の記憶があったから、世界はそれなりに平和に見えていたんだ。
to be continued……