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( ^o^)<こんにちわぁぁぁぁ!
では、
注意書きは1話を
どうぞ。
knmc視点
偶然、なんて言葉で
片づけられる距離じゃなかった。
でも、
計画して会いに行くほど、
僕は強くもなかった。
駅前のカフェ。
甲斐田が、
一人で座っているのを見つけた瞬間、
心臓が、嫌な音を立てた。
——やめよう。
そう思ったのに、
足が止まらなかった。
【……甲斐田くん】
名前を呼ぶ声が、
自分でも驚くほど掠れていた。
甲斐田が顔を上げる。
一瞬の戸惑い。
それから、
すぐに取り繕った表情。
[もちさん……久しぶり]
その“久しぶり”が、
優しすぎて、
胸が痛んだ。
【……座ってもいい?】
聞く前から、
断られないと分かっている聞き方。
甲斐田は、
少し間を置いて、頷いた。
[どうぞ]
向かいの席に座る。
テーブルを挟んで、
安全な距離。
——それでも、
近い。
沈黙が落ちる。
コーヒーの湯気が、
やけに目に沁みる。
[……元気ですか?]
甲斐田が聞いた。
簡単な言葉。
でも、
答えが出てこない。
元気って、
何だっけ。
【……うん】
嘘だ。
でも、
これ以上の言葉を出したら、
何かが決壊する気がした。
甲斐田は、
それ以上突っ込まなかった。
その“触れなさ”が、
逆につらい。
[……社長と不破さん]
口に出した瞬間、
喉が、ひりっと痛む。
甲斐田の指が、
カップの縁で止まった。
——やっぱり。
気づいてる。
[……うまく、
いってるみたいだね]
甲斐田は、
そう言った。
肯定でも、
否定でもない。
ただの、
事実の確認。
僕は、
笑おうとして、
失敗した。
【そう、だね】
声が震えた。
【……よかったね、って
言わなきゃいけないんだと思う】
“いけない”。
その言葉に、
自分で驚く。
甲斐田は、
何も言わない。
待っている。
——逃げ道を、
くれている。
【僕さ】
指先が、
小さく震える。
【全部、
僕が悪いってことに
なってるでしょ】
甲斐田の表情が、
ほんのわずかに曇る。
否定しない。
それが、
一番残酷だった。
【……本当はね】
言葉が、
勝手に溢れ出す。
止められない。
【浮気なんて、
してない】
言った瞬間、
世界が、少し静かになった。
甲斐田が、
目を見開く。
[……え?]
その反応を見て、
分かってしまう。
——知らなかった。
甲斐田くんは、
本当に知らなかった。
【でも】
僕は、
続ける。
続けてしまう。
【今さら、
言えない】
【言ったら、
壊れる】
【ふわっちも、
社長も】
声が、
笑いに近づく。
【だからさ】
視線を落とす。
テーブルの木目が、
歪んで見える。
【僕が悪いってことで、
いいんだよ】
【その方が、
みんな、
安心できるから】
甲斐田くんの呼吸が、
少し早くなるのが分かった。
[……もちさん]
名前を呼ばれる。
その響きだけで、
胸が詰まる。
[それ、
誰が決めたの?]
——決めてない。
誰も。
だからこそ、
終わらない。
【……決めてない】
正直に答える。
【でも】
顔を上げる。
【誰かが、
止めなきゃいけなかった】
【僕が、
一番いらなかったから】
言い切った瞬間、
少しだけ、楽になった。
甲斐田くんは、
しばらく黙っていた。
それから、
静かに言った。
[……それ、
罰だよ]
その言葉が、
胸の奥に落ちる。
罰。
そうだ。
【うん】
頷く。
【僕、
罰を受けてる】
【そうじゃないと、
耐えられない】
甲斐田くんは、
それ以上、何も言わなかった。
でも。
その沈黙は、
拒絶じゃなかった。
——それだけで、
十分だった。
店を出るとき。
[もちさん]
甲斐田くんが、
もう一度、名前を呼んだ。
[……一人で
抱えなくていいから]
その言葉に、
胸が、ぎゅっと縮む。
……それは、
救いじゃない。
救いだったら、
壊してしまう。
【ありがとう】
僕は、
ちゃんと笑った。
そして、
背を向けた。
——これでいい。
誰かに、
“本当”を一度だけ
見せられた。
それだけで、
少し、罰が軽くなった。
でも。
帰り道、
ふと、思う。
もし。
もし甲斐田くんが、
このことを
誰かに話したら?
社長は、
どうするだろう。
ふわっちは、
どうなるだろう。
……考えない。
考えちゃいけない。
僕は、
罰を受ける役なんだから。
では、
また24話で、