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APH夢・🇺🇸
この作品は「ヘタリア」やその作者様、また実在する国家や地域とは一切の関係を持ちません。
作品中でのキャラクターは人名・愛称で記させていただきます。
この作品は夢小説です。単語の意味が分からない人、または何らかの地雷をお持ちの方はブラウザバック(前の画面へ戻ること)を推奨します。
「じゃあ、気を付けて帰りなよ。でも、もしハイジャックに巻き込まれたりしたら何時でも呼ぶんだぞ。ヒーローである俺の出番だからね!」
「大袈裟ね⋯そんなの有り得ないよ。じゃあ、もう行くね」
もう暫く会えないというのに最後までこんなギャグを言うなんて、私の彼氏には別れを惜しむ繊細な心は無いのかしら⋯と、夢主は呆れ返った。
3ヶ月に1度は必ず直に会おう、と約束してから、もう2年は経っただろうか。互いの国を行き来するにも大分慣れ、しかしまだ飛行機特有の離着陸の感覚には到底慣れそうに無かった頃。夢主は逢瀬の最終日にアルフレッドが必ずチープな冗談を言うことに呆れていた。
どうせまだ一緒に居たいとこちらが粘っても、彼はいつもと変わらない、しかし空気の読めないうざったい笑顔で出立を急かすのだろう。夢主はそう察して、足速に出発ロビーを退散しようと歩を進めたが。
「⋯まだフライトまで時間あるんだぞ」
「え。⋯でも、最低でもフライト20分前には搭乗してないと。それにまだ、手続きもあるよ」
真逆予想もしていなかった人物に邪魔をされ、夢主は若干戸惑った。また手を振って送られるのみだと思っていたからだ。
「大丈夫だよ。それでもまだここに居られる余裕はあるじゃないか」
アルフレッドが子犬のように項垂れながらそう零した。
夢主に逃げられないように、と彼女の右手首を捕まえたアルフレッドだが、それでもまだ足りぬと言わんばかりに無理やり恋人繋ぎへと早変わりをさせられる。
開いたままの夢主の指先を急かすように、アルフレッドは握る力をきゅっとリズミカルに強めると、夢主はやや遅れて意図を理解してそっと繋ぎ返した。
じわ、と手のひらに広がる温もりに、夢主は自分の頬に朱が差したと悟ってしまった。
何だか今日はおかしい、と夢主は思いを巡らす。だって、別れ際にこんなに追い縋ってくるなんて初めてだ、と。
そんな風に呆然として一言も発さ無くなってしまった夢主を見て、アルフレッドは夢主の右手を解放した。
「じゃあ、向こうに着いたらさ。また、電話かけてよ。いつでも出るからさ」
「え。うーん⋯でも、多分その時間だとアルフレッドくんはお仕事中だと思うよ」
単純計算でここニューヨークから東京までを飛行するとざっと10時間以上はかかり、尚且つ日本の空港に着いても居住区に移動するとなると落ち着いて電話ができる環境になるまでかなり時間がかかる。さらに時差もあるので、絶対に合わない時間ということは確かだ。
恋人の言葉に喜ぶ反面、現実的な観点では無理であると悟り、夢主は拗ねたような、しかし何処かほっとしたような声色で答える。
マァ、また時間合いそうなとき連絡してよ、と諭そうと口を開く前に、アルフレッドが
「それでもいいよ。絶対、夢主と話すんだぞ」
「⋯ばか。」
冗談めいた口調でも、いつもの殴りたくなるような空気の読めない笑顔でもなく。ただ真剣に、絶対に離さないと言わんばかりの目をしていた。
夢主はそれだけでドキッとしてしまい、あとはもう俯きながら小声で口約束に返事をするしか無かった。
その後いくつかの手続きを終え、夢主は無事に飛行機に乗り込んだ。
それと同時に、アルフレッドのせいで捨てようとした離れ難いという思いを手放せなかった、とは絶対言わないでやろうと夢主は固く決意した。