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藤塚 太陽
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耀聖(ようせい)
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「……死ぬ。今日こそ僕は、社会的に抹殺されて死ぬんだ……」
自室のデスク前で、僕は魂の抜け出た顔でモニターを見つめていた。
配信画面に並んでいるのは、いつもの可憐な「天使ミラ」のアバター。
そしてその隣に並ぶ、一目見てヤバいとわかる派手なアバター。
金の髪を雑に結い上げ、片手にはハイボールの缶、口元には紫煙をくゆらせたタバコ——ルミナスプロが誇る**最大手・稼ぎ頭VTuber、「セーラ先輩」**だ。
**【セーラ(26歳・設定上は魔界のギャンブラー)】**
・ルミナスプロのチャンネル登録者数100万人超えトップライバー。
・配信中の9割が酒、タバコ、パチンコ、競艇の話。
・超絶毒舌で数多のリスナーと新人ライバーをトラウマに叩き落としてきた狂犬。
「未来さ〜ん、顔色悪いですよ? 事務所トップとのコラボ、光栄に思ってくださいね♪」
隣の部屋(オンライン)から聞こえる坂田さんの声が、悪魔の囁きに聞こえる。
光栄なわけあるか!!
普段から配信中に平気で缶チューハイを開け、「おいコメントのクソガキ共、今日も万札すったわガハハ!」とか笑ってる人と、なんで「清楚な天使」の僕がコラボしなきゃいけないんだ!!
スマホが狂ったように震える。
『三日月茜:セーラ先輩は天界の敵(悪魔)です。どれだけ罵倒されても「愛と慈愛」で包み込んでください。タバコの煙を吹きかけられても「甘い香りがしますね♪」と微笑むのです。分かっていますね?』
『金城空斗:お前終わったな。セーラ先輩の毒舌でメンタルズタズタにされて泣く未来の姿、超楽しみにしてるわw』
三日月さんの無茶振りも、空斗の煽りも、今の僕にはただの死刑宣告にしか聞こえなかった。
【コラボ配信開始】
[リスナーA]きたあああああ! 事務所の稼ぎ頭と話題の事故天使!!
[リスナーB]混ぜるな危険すぎるwwww
[リスナーC]ミラちゃん生きて帰ってきてくれ……
「は、はじめましてぇ……っ! 天界から舞い降りました、天使のミラです……っ! 今日は、セーラ先輩とお話しできて、とっても光栄なのです……♪(極限の裏声)」
声が震える。画面の中の天使モデルがガタガタと小刻みに揺れる。
すると、スピーカーから「プシューッ!」という勢いのある缶を開ける音が響いた。
『あ〜、よろしくね〜。……てかさ、ミラちゃん?』
氷のカラランという音とともに、セーラ先輩のハスキーでドスの効いた声が響く。
「ひ、はいっ!? 何でしょうかセーラ先輩……っ!?」
『お前、配信前から画面越しにビクビクすんのやめてくんね? 胃が痛くなるわ。あとその『〜なのです♪』って声、裏声作ってんの丸わかりで聞いてるこっちが恥ずかしいんだけど』
**ズドン。**
開始10秒で心臓にダイレクトアタックを食らった。
毒舌のキレが鋭すぎる!! 直球で刺しに来てる!!
[リスナーA]初手から容赦なさすぎて草wwww
[リスナーB]ミラちゃんのメンタルが早くも限界www
[リスナーC]セーラ先輩通常運転で安心した
「うっ……あ、あらあら〜……ミラは本当の天使だから、これが地声なのです……♪(泣きそうになりながら耐える)」
『ハッ、嘘つけ。お前、こないだのホラゲーで「死ね」とか「殺す」とか言ってたじゃん。あの低音イケボ、めちゃくちゃ良かったぞ? なんで今日もそれで行かねぇの?』
「そ、それは悪魔の仕業で……っ!」
『面倒くせえなぁ! ほら、酒飲め酒! 飲んで素出せ! ハイボールかレモンサワー持ってねぇの!?』
「僕、お酒弱いですし……いま昼の14時ですよ……!?」
『昼から飲む酒が一番うまいんだろうがよ!! ほら、一缶開けろ! 飲まねぇならパチンコの確変演出のモノマネやらせるぞ!!』
横暴だ!! 脅迫だ!! 天使に対するハラスメントだ!!
追い詰められた僕は、テンパりすぎてパニックになり、キーボードの横に置いてあったエナジードリンク(無糖)の缶を一気に煽った。
そして、過呼吸気味にむせた拍子に——**フットスイッチを踏み外した。**
「ゴホッ……! ゲホッ……!!」
『おい大丈夫か? 勢いよく飲みすぎだろ』
**「……ゴホッ……っふぅー……ゲホッ……っあー……喉痛ぇ……」**
ボイチェンが切れ、部屋の中に僕の「素の超絶低音ハスキーイケボ」が虚しく響き渡った。
『…………』
一瞬、セーラ先輩の缶を置く音が止まった。
[リスナーA]出たああああああああああ!!
[リスナーB]1分持たなかったwwwwwww
[リスナーC]イケボ助かる!!
(やってしまった……また地声を漏らしてしまった……!!)
「ひ、違っ! 今のは喉の妖怪が——」
『……へぇ』
スピーカーの向こうで、セーラ先輩の声のトーンがガラリと変わった。
楽しそうな、肉食動物が獲物を見つけたときのようなニヤついた声。
『お前……マジでええ声してんな……。おい、もう一回なんか喋ってみろよ』
「えっ、あ、あの……嫌です……」
『「嫌です」じゃねぇよ。ほら、私に向かってなんかイケボで文句言ってみろ。煽ってみろ。それできたら今日のコラボ解放してやるよ』
「解放」という甘美な響きに、僕のゴミカスな脳みそが飛びついた。
ここでイケボを一言発すれば、この地獄から逃げられるのか……!?
(よし……言うんだ彼方未来……! 一言だけ……一言だけ言って終わらせるんだ……!)
僕は深呼吸をし、腹に力を入れ、マイクに向かって全神経を集中させた。
**「……セーラ先輩。昼間から酒飲んで後輩イジめて……楽しいですか?(極上の低音吐息セクシーボイス)」**
画面の向こうで、セーラ先輩が「ブッ!!」と酒を吹き出す音が聞こえた。
『〜〜〜〜〜〜っっっ!?!?(盛大にむせるセーラ先輩)』
[リスナーA]ギャアアアアアアアアアアッッッ!!!
[リスナーB]セーラ先輩が照れてて草wwwwwwww
[リスナーC]破壊力やばすぎるwwwwwwww
[スパチャ¥50,000](アーク):天使様が堕落した悪魔を成敗された……!! 素晴らしき神罰!!
『っ〜〜〜〜〜〜あー! びっくりした!! お前、声の威力がバグってんだよ!! なんだその「耳元で囁かれてる感」は!!』
「ひ、約束通り解放してください……っ(裏声に戻る)」
『ダメに決まってんだろバカ!! お前、最高のおもちゃ見つけたわ!! 今からパチンコの演出に合わせてそのイケボで『確定演出!』って叫べ!!』
「話が違うじゃないですかぁあああああ(泣)」
結局、その後の2時間。
僕はセーラ先輩に弄ばれ、パチンコの激熱演出を低音イケボで叫ばされ続け、リスナーは大爆笑、スパチャの雨が降り注ぐという大カオス配信となった。
配信終了後。
僕は机に突っ伏して、息も絶え絶えになっていた。
スマホを見ると、三日月さんから『天使がパチンコの確定演出を叫ぶなど言語道断です(長文の説教)』というLINEと、マネージャーの坂田さんから『未来さん! セーラ先輩とのコラボ動画、切り抜きでバズりまくってます! 「セーラを照れさせた男」としてトレンド入りです!』というLINEが来ていた。
「……トレンド入りなんて……いらないから……静かに……暮らさせてよぉ……」
僕の悲痛な叫びは、エナジードリンクの空き缶に虚しく反射するだけだった。
コメント
1件
わー、今回も最高にカオスでした😂 清楚な天使が開始10秒でズタボロにされたかと思ったら、ボイチェン切れのイケボで一気に形勢逆転……「セーラ先輩が照れてて草」のコメント欄の沸きようが目に浮かびます。最後の「静かに暮らさせてよぉ」の叫びも、絶対叶わなそうで笑っちゃいました。次回も地獄のコラボ待ってます!