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「お、大さじ⋯⋯。大さじ⋯⋯? って、お玉いっぱいってことか__ 」
おもむろにお玉を取り出して砂糖をすくい始めるもんだから、私は急いで止めたんよね。
「えんま!? 何してん、んなわけないやろ!」
「は?」
えんまが元から鋭い目を、一層細めて怪訝そうに私を見つめる。
「お玉1杯なら、はじめっからそう書くやろ。」
「⋯⋯あ⋯⋯」
目を泳がせながら、えんまは握っていたお玉をゆっくり離す。
拗ねるえんまと私の間に、洗い物を終えた燈萌が顔を出した。
「あはは、ほんと料理とかしないんだね、えんま。イナミ、あんまいじめちゃ可哀想やよ」
「しゃーないやろ⋯⋯いつも燈萌がお菓子くれるもん、自分でわざわざ作らんわ」
えんまが改まって計量スプーンで測りながら言う。
そう言うえんまが珍しく「お菓子を作りたい」なんて言ったから、今日は燈萌の家に集まっているのだ。
こんなに不器用なのに__一体どういう風邪の吹き回しなのか。
「それにしても、マカロンって作るの難しいんやね」
器用な方だと自分では思っていたけど⋯⋯想像ほど思うように上手くいかない。
「まあね、マカロンはお菓子の中でも何度高めだから」
お菓子好きな燈萌が鼻高々に解説し始める。
「難しいとこはウチに任せて、えんまはコレ泡立ててくれない?」
「ん⋯⋯わかった」
テキパキと、慣れた手つきで場を回す。
いつもは扱いが大変なえんまも燈萌の働きぶりに呆気にとられたのか、随分大人しくなっている。
私も遅れを取らないよう作業を進めた。
「「「で、できたーーーーーー!!」」」
散らかり放題の台所に歓声が響き渡った。
三人の目の前には色とりどりのマカロン。
えんまは、口角は上がっていないものの__嬉しそうに頬を赤らめて、それの写真を撮る。
燈萌もマカロンの難しさを分かっていて失敗すると思っていたのか、随分驚いていた。
私だってそうだ、こんな風なら、3人でたまにはお菓子作りもいいかもしれない。
そう思って、二人が食べ始める微笑ましい風景を眺めていたときに、
えんまが保存袋を取り出して、うちの数個をしまうのを、私は見逃さなかった。