さて、もっくん大人しく我慢できるでしょうか?
「ねぇ、元貴、元貴ってば」
「えっ?」
「どうしたの?何回声かけても反応しないからさ。今日なんか変だよ?」
「ああ、ごめん、ごめん」
久しぶりに家デートで涼ちゃんと会ったというのにボーっとしてしまっていた。
「何かあった?」
「別に何もないよ」
俺は慌てて手を振りながら答える。最近何をしていても涼ちゃんの選択の事が頭から離れず寝不足気味だった。
でも、まさか久しぶりに涼ちゃんと会えたのにボーっとしてしまうなんて…。
「最近忙しくて全然会えてなかったから俺、元貴に会えるのすっごく楽しみにしてたのに。元貴はそうじゃなかったの?」
ちょっとすねたように見上げてくる涼ちゃんはたまらなくかわいかった。
「すっごく会いたかったよ」
今すぐ飛び付いちゃいそうなくらい。
…ただ、会って選択の答えを聞くのがちょっと怖かっただけだ。
「前はこっちまで遊びにきてくれてたのに、最近は全然きてくれないしさ」
涼ちゃんはプイッとそっぽを向きながら横目でチラッとこちらを見る。
「それは…涼ちゃん、すっごく忙しそうだからジャマしちゃ悪いかな…と思って」
俺は笑ってみせたが、うまく笑えているか自信がない。
「やっぱり変!」
しばらく無言になった俺に、ズイッと涼ちゃんが顔を寄せてきた。
「えっ?」
「眉がハの字になってる!どうしたの?元貴らしくないよ」
「…俺らしいってどんなの?」
涼ちゃんからは俺はどう見えてるんだろう。
「いつも自信満々で頭いいけどちょっと暴走気味。あっ、でもけっこう繊細な部分もあるなぁ。んっ?じゃあ今は繊細モードって事?」
涼ちゃんは首をかしげる。
「とにかく、悩んでる事があるなら全部言ってよ。俺バカだからちゃんと相談にのれるかわかんないけど、話し聞くだけなら聞けるよ?」
繊細モード。確かにそうかもしれない。繊細な自分と暴走する自分。俺はどっちの自分が好きだろう。
……どうせなら暴走する方がいい。
「ねえ、涼ちゃん!前に「この先の事考えなきゃいけない」って言ってたよね?もう決まった?」
いきなりの質問に涼ちゃんはちょっと戸惑っている。
「俺さ。涼ちゃんの将来がかかってるんだから、口出ししちゃダメだ、待ってようって思ってた…」
涼ちゃんの目をしっかりみつめる。
「でも、でも!やっぱり黙ってられない!ねぇ涼ちゃん。音楽科じゃなくてバンドを、俺を選んで。俺、絶対バンドを成功させて涼ちゃんを幸せにしてみせるから!」
そう言って俺は涼ちゃんをきつく抱きしめる。
「元貴…」
お願い、と必死にすがりつく俺に涼ちゃんはポンポンと背中を叩いて頭を撫でてくれた。
「元貴、それで悩んでたんだ」
涼ちゃんの肩に顔を埋めながら頷く。
「ずっとずっと俺と一緒にいて」
この手を離したくなんかない。
そんな俺を見て涼ちゃんは優しく頬を擦り寄せた後、チュッっとキスしてくれた。
「…ごめん。ちゃんと言っとけばよかったね。俺、最初からバンド辞めるつもりなんかなかったよ」
「えっ?でも迷ってたんじゃ…」
「バンドしながらだとどうしても課題こなせないでしょ?でもバンドは続けたいし。だから覚悟決めてちょっと前に教授に相談に行ったんだ」
驚いて涼ちゃんの顔をみつめる。
涼ちゃん真剣に将来の事、バンドと生きてく覚悟を決めていたようです。
それにしてもやっぱりもっくん我慢しきれなかったね😅
コメント
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あはぁ!可愛らしい二人だなぁ…✨
暴走したもっくん可愛すぎ"(∩>ω<∩)"優しい涼ちゃん⸜🫶🏻️︎⸝ この2人の掛け算やばいよね