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みことは困り顔で鼻をすすり、すちの腕にぎゅっとしがみついていた。


「ほら、ゆっくりでいいから」


すちは優しく背中を撫で、みことの頭を軽く撫でながら声をかける。


その横で、ひまなつがそっと手を差し伸べた。


「みーこと、これ……食べる?」


手にはカラフルな棒付き飴がひとつ。

みことは驚いた顔で手元を見るが、まだ警戒している様子。


「ね、ほら、少しだけでも食べてみる?」


「……うん」


すちはそっと手を伸ばし、飴をみことの小さな手にそっと置いた。

みことはぎこちなく指で握り、ゆっくり舐めてみる。


「あま……い……」


「でしょ?おいしいんだよ」


ひまなつは優しく頷く。


「…お、おにいちゃん……ありがと……」


ぽろぽろと涙が残った頬を、ふにゃっとした笑顔が照らす。


ひまなつはその表情に思わず微笑んだ。


その様子を見ていたらんが、にこっと笑う。


「みこと、少しずつ慣れてきたな」


みことは飴を持ったまますちから離れようとはしない。

それでも、すちに守られながら、ほんの少しずつ周囲を見回す目に興味が湧いてきていた。


「みこちゃ~ん、こさともあそぼ~」


こさめも手を差し伸べ、声をかける。

みことは一瞬躊躇したが、すちの腕の中でそっと手を伸ばし、こさめの手を握った。


ぎこちなく、でも確かに触れ合うみことの手。

すちはその小さな様子を見守りながら、微笑んだまま背中をさすった。


「そうそう、その調子だよ、みこと。少しずつね」


みことはすちの胸に頬を擦り寄り、安心した吐息を漏らす。

でも心の中では、ちょっとずつ――

他のみんなとも、笑顔を交わせる気持ちが芽生えてきていた。


ひまなつにもらった飴を舐めながら、涙目だけど笑顔を見せるみこと。


すちはその顔に軽くキスを落とし、腕の中で抱きしめ直した。


「うん、だいじょうぶ。みんな優しいから、ゆっくり慣れようね」


「……なんこれ、かわいすぎん?」


こさめが思わず口を押さえて笑う。


「なぁ、ほんまにみこと本人なん?」


「間違いなく、みことだよ」


いるまが目を丸くすると、すちが苦笑しながら答えた。


「いやぁ~、あの遠慮しがちだったみこが、こんなに甘えん坊になるとは……」


らんが頬を緩めて言うと、ひまなつも肘をつきながらにやりと笑う。


「しかも、すちのこと離れたくないとか……かわいいなぁ。すち、モテ期到来やん」


「モテ期って……」


すちは少し困ったように笑いながら、みことの頭を撫でた。

みことは撫でられるとすぐに甘えた声を漏らし、すちの胸に顔をうずめる。


「……ん……すち……だいすき……」


「ほらみろ! 完全にすち命じゃん!」


こさめが笑いながらソファに倒れ込み、ひまなつも手を叩いて笑う。


「すちから離れたくないんだな~」


「てか、幼児化しても“すちのこと大好き”は変わってないんだな」


その言葉に、すちは少し照れくさそうに眉を下げた。


「……まぁ、俺も変わらないけどね」


そう言って、膝の上の小さなみことをそっと抱きしめ直す。


みことは、くすぐったそうにすちの胸元に頬をすり寄せ、安心したように目を細めた。


「すち……だいすき……ずっと、いっしょがいい……」


「うん、ずっと一緒にいようね」


すちの優しい声が響くと、みことはようやく笑顔を取り戻す。

その小さな笑顔に、誰もが自然と笑みをこぼした。


「……やっぱり、みことって、すちの前だと一番かわいい顔するよな」


らんのつぶやきに、みんながうんうんとうなずき、 すちは照れたように頭をかきながらも、みことの髪に口づけた。


その一瞬、空気がほんのり甘くなったように感じた。

ひまなつたちは目を合わせてにやりと笑いながら、こっそり「やっぱり恋人だなぁ」とささやき合うのであった。






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