すちは、幼児化したみことの世話にずっと気を配っていたためか、少し疲れた顔をしてソファにもたれ掛かる。
「……ふぅ……ちょっと休憩」
みことはすちの胸に顔をうずめたまま、安心した吐息を漏らす。
その温もりに誘われるように、すちは自然と目を閉じ、肩の力を抜いた。
「……すち、ねんね……?」
小さな声で言うみことに、すちはかすかに笑みを浮かべる。
「……うん、ちょっとだけね」
やがて、すちはソファに深く腰掛けたまま、目を閉じる。
みことも安心しきったように目を閉じ、腕の中で小さく丸まった。
そのまま二人は、ゆっくりと穏やかな寝息を立てはじめた。
らん、こさめ、いるま、ひまなつの四人は、そんな二人の様子を見守りながら、そっと毛布を取りに行く。
「これ、かけてあげよ」
「寒くないようにね」
そっと毛布を二人にかけ、みことの肩までやさしく包み込む。
すちは眠ったまま、軽く息を吐き、みことの背中を抱きしめる腕を緩めなかった。
みこともその腕の中で小さく動き、安心したようにさらにすちにくっついた。
「二人とも、かわいいな……」
ひまなつが小声でつぶやくと、らんもこさめも同意するようにうなずいた。
四人はそっとキッチンへ向かい、夕食の準備を始める。
包丁の音や鍋の湯気が立ち上る間も、リビングには二人の寝息と、柔らかい静寂が漂う。
その光景に、誰もが自然と笑みをこぼした。
「すちもみことも、今日はよく頑張ったな……」
いるまが小声で言うと、こさめも「うん、ほんとだね」と頷く。
ソファの上で眠る二人を見守りながら、四人は慌ただしくも温かい時間を共有する。
外のざわめきとは無縁の、穏やかな午後のひととき――。
そっと目を開けると腕の中の温もりに気づく。
ソファの上で眠るみことを、すちはそっと抱き寄せたまま見下ろす。
小さな手はすちのシャツに絡まり、寝息は穏やかで、安心しきった様子だ。
「……ちょっとだけ」
すちはそっと毛布をかけ、みことが目を覚まさないように注意しながら、慎重に膝から下ろす。
「すぐ戻るからね」
小さな声でそう囁き、みことの頭を軽く撫でてから、ひまなつにこっそり声をかける。
「疲れたろ、風呂入ってこいよ」
ひまなつはにこりと笑い、既に沸かしていた風呂に誘導した。
すちは静かに水道の蛇口をひねり、湯を溜めた浴槽に浸かる。
長く抱き続けた腕の疲れと、緊張でこわばった肩の力が、湯の温かさでゆっくりほどけていく。
肩まで浸かると、自然と目を閉じ、静かに呼吸を整える。
「ふぅ……やっと、少し落ち着ける」
身体の芯まで温かさが染み渡るのを感じながら、すちは今日一日のことを思い返す。
みことの泣き顔、すちにぴったりとくっついて甘える仕草、周囲の友人たちの優しい笑顔――。
全部が、胸の奥にじんわりと暖かく残っていた。
「……でも、みことがあんなに安心して眠ってるんだから、俺も元気出さないと」
湯の中でゆったりと伸びをしながら、すちは少しずつ疲労が解けるのを感じる。
肩や腰のこわばりがほぐれ、腕の痛みも和らぐ。
深呼吸をひとつすると、心まで静かに落ち着いていった。
「よし、これでまたみことを抱きしめられる……」
湯気の向こう、静かに眠るみことの姿を思い浮かべ、すちは微笑む。
小さな休息時間は、まるで二人のための静かな祈りのように、ゆっくりと過ぎていった。
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