テラーノベル
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朝のキッチンは、昨夜より少しだけ明るかった。
それでも空気は重いまま。
若井は、昨夜よりも丁寧に手を動かしていた。
火加減を見て、味を整えて、皿を並べる。
静かに整った朝食。
そこに、元貴が入ってくる。
「……またやってんの? 」
寝起きのままの笑いを含んだ低い声。
若井は少しだけ笑う。
「うん、昨日よりちゃんと作ってみた」
元貴は返事をしないまま席に座る。
一口。
無言。
もう一口。
やっぱり無言。
そして、何も言わずに皿を押す。
「……いいわ、」
それだけ言って立ち上がる。
流しに置かれる皿。
水の音。
料理はまた、手をつけられた形のまま残される。
若井はその皿を見て、少しだけ目を伏せる。
悲しそうに眉が下がる。
でもすぐに、いつもの笑顔に戻る。
「そっか」
小さく、それだけ。
責めることも、問い返すこともしない。
ただ受け止めるだけの声。
そのあと、静かに皿を片付ける。
少し遅れて、元貴は玄関で靴を履く。
「レコ行くよ」
短い声。
若井も頷く。
「うん」
二人は並んで家を出る。
外はまだ少し冷たい朝の空気。
車に乗るまでの間、会話はない。
それでも同じ方向に向かって歩く。
音楽の現場へ。
同じバンドとして。
ただ、昨日と何も変わっていないようでいて、少しだけ違う静けさを抱えたまま。
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ささくれ
コメント
3件
ついに言葉に出さなくなってしまったよ😭 どうなんの?😭
読ませていただきました。朝食のシーン、特に元貴が無言で皿を押すところがすごく刺さりました。言葉にしない拒絶と、それを受け止める若井の「そっか」が切なくて。静かなのに、二人の距離感が手に取るように伝わってきました。昨日と変わらないようでいて、少し違う静けさ……その表現がとても好きです。続きが気になります。