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一匹の鳩が、目をぱちくりしながら青年の前をうろついている。青年は、何もないよシッシと手で追い返した。
彼ははたと、どきっとした。自分自身もうろついていることに気づいたからだ。面接をしても、今自分がやったようにして追い払われる。日々を泳ぐのに必死で、何かしようとは思うけど、思うだけで何も進んでない。水平線の向こうが見えない。
「バカだなんて笑わないでほしいんだけど」段に佇む青年の頬が、赤味を帯びはじめた陽に照らされている「地球って本当に、丸くて一つなのか?」
「確かに、一つだった」旅人の口調は確信に満ちていた「でも、何で?」
青年は、イスラム、キリスト、ブルーモスク、アヤソフィア、アジア、ヨーロッパとブツブツ言いながら、プラスチックのさじで紙コップの中をかき混ぜている。底の粉が湧き上がり、渦巻きの筋ができた。
「一つって割りには、みんなバラバラに見えるからさ」と青年は言った。
旅人はコーヒーを飲んでいる。
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