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精霊竜アヴィオルのおかげもあり、おれたちは孤島を脱する。陸地続きの島に降り立ったところで、アヴィオルはひとまずルティの魔石に戻った。
ルティの精霊でもあるので願えば出て来られるということらしい。
そして、ミルシェと相談していた問題のサンフィアについてはというと。
「――ふん、くだらん。元より我は貴様たちと仲良く動くつもりなど無い。だが、アック! 貴様は我が認めた男だ。貴様が半端な考えを保つ以上、我は貴様から離れるつもりはない!」
などと一喝された。
「追い出すのは駄目なのだ。エルフ、森人! シーニャ、エルフにいて欲しいのだ」
一喝されたことに加え、シーニャからもお願いされたので本人の意思を尊重することになった。ミルシェは嫌そうにしていたが、こればかりは仕方が無い。
「アック様、あそこが入口じゃないですかっ?」
「どこをどう見てもそうに決まっているなの。これだから小娘は足りないなの」
「足りなくなんかありませんっっ! アック様には、はっきりと場所をお知らせする方が有効なのですっ!」
「むきー!!」
ルティが指差したのは、上空から見えていた点在する丘らしきものだ。アヴィオルはここのことを、”ロネード丘陵地”と言っていた。
なだらかな土地のように見えるが、起伏のある丘が連続しているので丘陵地といって間違いない。ちなみにレイウルム側から入った遺跡を後からサーチしたところ、奥まで行っても行き止まりだった。
ザームの連中はすでにいなかったが、奴らには移動魔法が使える魔導士がいた。奴らは魔導士の協力で別の道を行ったのだろう。
「全く、あの娘たちは何をやっているんだか……」
「悪いな、ミルシェ」
「エルフのことでしたら、何も気にしていませんわ。相性が合わないのは仕方が無いことですもの。それよりも、お気づきですか?」
「あの丘のことか?」
「……ええ。レイウルムの地下遺跡とはまるで気配が違うように思えますわ。ここからが本当に厄介な場所なのでは?」
ミルシェが言うように、入口と思しき丘からは強い魔力が漂っている。盛り上がった場所には目印となるような太い柱が何本か建っているが、関係しているかは不明。
そこから感じる気配は精霊が発する気配のように思える。近付いてみないと入れそうにないので、そこまで歩いて行くしかなさそうだ。
ふと後ろを見ると――ルティとフィーサは相変わらず騒がしく、シーニャはサンフィアの近くをついて歩いている。ずっと狭い所にいたこともあって自由にさせているが大丈夫だろうか。
「そうだろうな。ミルシェの勘もここのことを言っていたんだろ?」
「……それは買いかぶりすぎですわ」
元々レイウルム半島に来たのはミルシェの希望だった。そこにザームの連中がいたとはいえ、遺跡を巡るのは想定外なことだ。しかし連中が狙う遺物が敵の強化につながるとしたら、それは潰さなければならない。
「アック様、お待たせしました!」
「フィーサとのスキンシップは楽しんだか?」
「むふふ……それはばっちりですよ!」
ルティの相手をしてフィーサは疲れ切っているようだ。それはともかく、シーニャたちも入口付近に合流した。
「アック、アック! ここが入口なのだ?」
「そうみたいだな」
「さっさと中に入って敵を倒すのだ! 遠慮したら駄目なのだ。ウニャッ!」
「分かった。そうするよ」
「ウニャ」
盛り上がった丘の足下に石扉が見えている。シーニャが言うように中に入りたい所だが、開閉出来そうな窪みがどこにも見当たらない。
目に見える罠ならともかく、仕掛けがされているとなると入りようが無い。力任せでは開かない仕組みだとすればまずはそこから解かなければ。
「うーん……押しても駄目そうだな」
「ではっ、ここはわたしが!」
「どうするつもりだ? 力ではどうにも出来ないぞ」
「拳ですっ! 拳でいきますよ~!!」
ルティの力は瞬撃ではおれよりも上だが、そう上手くいったら苦労は無い。
「ふん。ドワーフごときの力で開いたら、貴様の方が弱いことになるのではないのか?」
「はは、それならそれでも……」
「腑抜けたことを言う奴め」
サンフィアは相変わらずおれに厳しい。態度も以前と同じだが、精霊の力を得たせいか余裕のようなものが感じられる。その意味でも、彼女の力もどこかで必要になるはずだ。
しばらくして――。
「ゼーハーゼーハーゼーゼー……びくりともしませぇん~はへぇぇぇ……」
「情けないなの。拳だけでは何にも解決出来ないなの」
「ふん、そんなもんか? ドワーフ娘」
「そ、そんなこと言われましても~」
どうやらルティの拳でも扉はどうにも出来ないらしい。そうかといって、フィーサやサンフィアが何かをするつもりは無いみたいだが。
「ウニャ? アック。ドワーフが息を切らせているのだ。扉が開かないのだ?」
「力では開かないみたいだな」
「シーニャの爪なら何とかなるのだ?」
「……いや、物理的な攻撃では開かない気がするな。そうかといって、魔法というのも……」