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――記録者:狂犬がるる
患者名:リーゼ(18)
診断名:PTSD/摂食障害(人肉依存)/愛着障害的依存傾向
初診時、彼女の笑顔は「祈りの形」だった。
微笑は崇拝の儀式の名残。
感情のない笑みの奥に、痛みを「神の試練」として受け入れてきた痕跡が見える。
飢餓状態で入院。
体重の減少、皮膚は透けるように白く、血中に異常な酵素反応――
“ヒトの肉”でしか満たされない身体。
医学的には説明不能だが、信仰と行為の積み重ねが肉体を変質させたと考える方が理にかなう。
最初の数日は拒食と嘔吐を繰り返した。
「神以外の肉は、穢れている」と。
だが、“神”がもういない世界で、彼女は何を喰らえばいいのだろう。
私は彼女に問うた。
――「リーゼ、もし神がもういないなら、誰を信じるの?」
その瞳が私を見た。まっすぐに、痛みを宿したまま。
そして、静かに答えた。
――「あなたを、信じたいです」
その日を境に、リーゼは私の食事を口にするようになった。
味の感想を言うたびに笑う。
その笑顔が“信仰の延長”なのか、“愛のはじまり”なのか、私には判断できない。
けれど――
彼女の視線が、私の喉や指先に落ちる瞬間がある。
呼吸が荒くなり、瞳孔が開く。
彼女はまだ、自分の“神の肉”を探している。
【接触制限:必要なし】
【観察強化:推奨】
――記録終了。