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【吸血鬼】と呼ばれるその種族。
この世界では吸血鬼は絶滅危惧種となっていた。
と言っても、吸血鬼の殆どを滅ぼされたのは人間族だった。
この世界には様々な種族がいる。
例えば“エルフ”、“獣人”、“妖精”…
中でも1番弱いのは先程出した人間族。その次に弱いのは妖精族、となっている。
吸血鬼族と人間族は日々戦いあっていた。人間族は1番弱いが吸血鬼族の殆どを滅ぼされたのがきっかけで更に戦いが増している。
これはそんな戦いを止めたい、 と願う吸血鬼の少女と、捨てられた人間の少女の物語である。
吸血鬼の名家、バンァー家。
バンァー家の娘である私の名前はレイチェル。
毎日戦いの音に鬱陶しく思いながら、窓を眺めている。
私がもっとも悲しいのが、お父様がこの戦争で戦っていること。
お父様が亡くなってしまうのは、何より悲しかった。
お父様は私の小さい頃、たくさんの魔法を教えてくれた。
私が強くなれたのも、お父様のおかげだった。
そんなお父様が亡くなってしまうのか、という不安が大きく、この戦いが1秒でも早く、今すぐ終わって欲しかった。
そんなある日、私は散歩へ出掛けた。
やはり街は酷い様子だった。こんなご時世、私はこの様子はもう見慣れていた。
「5枚…確認したよ。ありがとう、お嬢ちゃん。こんなご時世だから気をつけな。」
パン売りのおじさんから不思議な長細いパンを買う。
どうやら人間族が発祥で“フランスパン”と言うらしい。
試しに少しかじってみる。
少し硬いが、食べられないことでもない。
外の硬さと中のふわふわのギャップ(?)がとても良い。
今度来た時も売っていたら買おう、と思った。
そして私は家へ帰る道を歩いて行った。
すると人影のようなものを見かけた。気になって近寄ってみる。
茶髪で目が少し黒めの人物を発見した。
吸血鬼と言うよりは人間に似ている。羽もない。
戦いによって怪我をして羽をなくし、倒れていたのかもしれない。
とりあえず、私はこの人物を家へ連れて帰ることにした。
「お母様、ただいま帰りました。」
「レイチェル、お帰りなさい。あら?その子は…?」
お母様は私が背負っているその人物に目を向けた。
人物を背負っている。勿論、目を向けるのは当たり前だ。
「道中で倒れてたから連れて来ました」
名家の間では親立場の家族には敬語で話す事が義務付けられていた。
「あら、そうなの。可哀想に…羽もないし、怪我でもしたのかしら?」
良かった。私と同じ考えだ。
私は少し安心した表情を浮かべた。
「お母様、この人物を今晩、ここに泊まらせても良いでしょうか?」
「ええ、私は良いわよ。アランに許可が取れればいいのだけれど…。帰ってきたら相談してみるわ。」
アラン、と言うと私のお父様の名前だ。ちなみにお母様の名前はアイナである。
「ありがとうございます、お母様。」
私は部屋に戻るとその人物をベットに寝かせた。
そして間もなく、その人物は目を開けた。
「良かった、目が覚めたのね…」
その人物は驚いた様であった。
私は安心のため息がついた。
「えっと…?」
言葉を発してくれた。
良かった。ちゃんと話せる人物のようだ。
「貴方、大丈夫?道中で倒れていたのだけれど。」
「私、道中で倒れていたのですね…捨てられたのかと思ってました」
吸血鬼で捨てられた、と言うと力が弱くて約立たずで捨てられたのだろうか。娘の力が弱いとこの戦いに負ける、と親が思い捨てられたのだろうか。
「捨てられていたのね…。こんなご時世だもの、捨てられて仕方ないわ…」
「そうですね…。えっと、貴方は?」
「私の名前はレイチェル・バンァーよ。貴方は?」
私は自己紹介をした。捨てられた人物を拾ったとはいえ、捨てられた側は何者か分からずにパニックしてしまう可能性があるからだ。
「私はソラと申します。ソラ・ポッピン。」
ソラは目に1つの曇りもなく、穏やかな顔 で言った。 ソラ・ポッピン…その名を私は胸に刻んだ。 「ところで貴方は何の種族なの?」
気になっていた。
ずっと人間か吸血鬼なのかでずっと迷い続けていた。
「他の種族から言えば人間族です。1番弱いと呼ばれる種族です…。貴方は羽を見たところ、吸血鬼族でしょうか?」
人間族…?
お父様は人間族と会うのを戦い以外では全力で拒否をする。
もし人間族だとお父様にバレたら追い出されること間違いなしだ。
「ええ、吸血鬼よ。それにしても困ったわね。うちは人間族と会うのは全力拒否なの…。」
私は少し悲しんだ。
こんな素敵な人間の少女がいるならば、他にも人間族には素敵な人間がたくさんいるはずだ。
なのに何故こんな戦いが続くのだろうか…
「そうなのですね…。人間と吸血鬼、一緒にいた方が楽しいのに…」
「そうね…。でも、お父様やお母様には人間って言う事、絶対に秘密にしておくわ。バレたら私まで追い出されるもの。」
お父様は魔法を教えてくれたとはいえ、とても厳しかった。お仕置だ、と言われていた記憶が蘇り、苦笑しそうになった。
「ありがとうございます。早くこの戦いが終わると良いですね…。戦いがなければ私も捨てられるなんて事はなかったのですから。 」
「ええ、そうね…。強肉弱食なんて言葉があるけれど、本当にその通りだと思うわ。」
そう言って私は立ち上がる。
「さっ、もうご飯の時間よ。貴方もお腹が減っているでしょう?」
「ふふ、そうですね。」
つづく。