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#溺愛
桜咲かな
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桜咲かな
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#百合
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みぅです🤍🥀 第48話、読ませてもらいました…。 「返すまで、預かってて」ってメモが彼女の字に似てるって、もうそこだけで胸が締め付けられました。二人ともお互いの本名すら知らないのに、過去のどこかでちゃんとつながってたんだなって。 キーホルダーの「M」、写真の「返す」、そして箱の中の紙。断片が少しずつ重なって、見えてきた輪郭が切なくて美しかったです。今はまだ答えを急がない二人の距離感も、すごく好きです。 クラリスさんの紡ぐ言葉、一つ一つが大事に感じられます。続きも静かに待ってますね🌙
第四十八話 返せなかったもの
その日の夜。
彼女は、机の上に置いたキーホルダーを眺めていた。
青いリボン。
古い傷。
そして、裏側に刻まれた「ずっと」という文字。
昨日までは、ただの思い出の品だと思っていた。
でも今は違う。
これはきっと、過去の誰かと自分をつなぐものだ。
それが誰なのかは、まだ分からない。
彼女はキーホルダーを裏返した。
リボンの端に残っている、あの一文字。
「M」
気になって仕方がなかった。
けれど、それだけでは何も決められない。
誰かの名前かもしれない。
ただの印かもしれない。
彼女は写真を撮り、彼に送った。
『これ、やっぱり気になる』
『Mのこと?』
『うん』
『俺も』
少しして、彼から続けてメッセージが届く。
『でも、今はまだ調べない方がいい気がする』
『どうして?』
『先に答えを決めちゃったら、違うものまでそう見えそうだから』
彼女は画面を見つめた。
確かに、その通りだった。
二人とも、まだ何も確かめられていない。
だからこそ、
分からないままの部分も大切にしておきたかった。
『じゃあ、今分かってることだけ整理しよう』
『うん』
二人は一つずつ確認していった。
写真に残っている場所。
駅。
キーホルダー。
青いリボン。
事故の前後にある記録。
そして、彼の中にある記憶の空白。
どれも単独では意味を持たない。
けれど、全部を並べると、
何かがあることだけは分かる。
『やっぱり、事故の前に何かあったんだと思う』
彼女が送る。
『俺もそう思う』
『でも、それが何なのかはまだ分からない』
『うん』
そこで会話が止まった。
彼はスマートフォンを置き、部屋の中を見回した。
ふと、棚の奥にある箱が目に入る。
昔から持っている箱。
これまで何度も開けたことがある。
けれど、中身を一つずつ確認したことはなかった。
彼は箱を取り出した。
古い写真。
使わなくなった小物。
手紙。
そして、一枚の小さな紙。
見覚えがない。
紙を開く。
そこには、短い文章が書かれていた。
「返すまで、預かってて」
彼は息を止めた。
キーホルダーを手に取る。
そして紙を見る。
「返す」という言葉。
昨日見つけた写真にもあった。
偶然とは思えなくなってきた。
彼は急いで彼女に写真を送った。
『また見つけた』
『何?』
『これ』
写真を送る。
彼女はしばらく既読のままだった。
やがて、
『……これ、私の字に似てる』
と返ってきた。
彼の手が止まった。
『本当に?』
『分からない。でも、文字の書き方が少し似てる』
彼は紙を見つめた。
もしこれが彼女の字だったら。
もし、この紙を書いたのが過去の彼女だったら。
それなら――
自分は事故の前に、
彼女と何かを約束していたことになる。
けれど、今の二人はまだお互いの本名を知らない。
過去の自分たちが誰だったのかも。
彼は紙をそっと箱に戻した。
今すぐ答えを出すことはできない。
それでも、一つだけ分かった。
返すはずだったものを、彼は今も持っている。
そして彼女もまた、何かを持ったまま生きている。
二人はまだ、その意味を知らなかった。