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「今は、、10時か」
ホストという職業柄家についたのは朝方の日が昇りかけたときだった。それからシャワーを浴び着替えてベッドに入ってからまだ2時間程しか経っていない。
確か今日のシフトは7時からだったはずだ。不破は再度予定を確認するとベッドから起き上がった。
さすがに
最近はどんなに寝ようと思っても目が覚めてしまい睡眠が浅い日が続いている。
ヒステリックな姫にミナトは私のものだなんて叫び迷惑をかける姫、ホストのミナトという虚像に向かってひたすら一方的に話し、そして去っていく。
表面的には仲の良い同僚はNo.1ホストという座に常に嫉妬と嫌悪を抱き裏では悪口のオンパレード小さな嫌がらせの数々。
ホストは人を沼らせお金を入れて貰う職業である。そんな事はわかっているが心は疲弊していく一方だ。
なんて事が続き、何時からか他人に嫌悪感すら抱く様になってしまった。
それでも不破はホストだった。姫がくれば笑顔を振りまき同僚には風当たりの良い先輩後輩を演じていた。否、それが、出来てしまう。
「薬まだあったけ」
棚の中から、睡眠薬を取り出して飲む。さすがに眠れない日が続くとぶっ倒れてしまうから、定期的に睡眠薬を使っている。しかも、結構強い薬を使っているからすぐに眠気が来る。
定期的に使っていると体がだるくなったり頭痛がしたりするけど隠していれば誰にもバレない。
みんなが求めているのはホストのミナトであって本当のミナトではない。結局のところ姫達は俺 の事を好きだの愛してるだの言ってくるけど、体調の変化にさえ気づかない。まぁ隠すのが上手って言うのもあるけど。
ピピピーとスマホがなった
「ん…」
スマホを見るともうすぐ仕事が始まる時間だ。
起きなければ。重たい体を起こして、軽く軽食を摘むと支度をし始める。
支度を終え、いつものように鏡を覗き込むと闇を吸い込んだように暗い紫の瞳がこちらを覗いていた。
その瞳を細め口角を上げお手本の様な笑顔のホストであるミナトを作り不破は家を出た。
ホストクラブでは酒、金に加えて常にあちこちで会話が飛び交い会話に集中するのも苦労する。
「ミナト〜聞いて!こないだね〇〇が〇〇でね、」
この姫は兎に角喋る事が大好きな姫だ。その為相手に喋らせつつ会話が膨らむように質問を投げかける。
「へぇ~そうなんすか?でも〇〇ちゃんこないだ〇〇だったよね?」
「そうそう!それはそうなんだけど〜」
「あ、ねぇねぇミナトこのシャンパン「あ、姫!申し訳ありませんミナトは只今あちらの姫からご指名が入って降りまして。」
とボーイが話しかけてくる。
「あ〜、じゃあ姫ごめん行かなきゃだ!」
「え!何で!今シャンパン頼もうとしてたのに今日のミナトは私のものでしょ?!」
「ごめんね姫すぐ戻るから良い子で待ってられる?」
「私ミナトがいなくて寂しいんだよ?ちゃんと理解してよ!」
「うん、ごめんなぁ」何て思ってもないことを口にする。これがホストという職業で染み付いた癖になっていた。
姫を宥め、示された席に向かうと
「あ、ミナトさん来てくれたんすか?じゃあヘルプお願いします!」
「は?俺姫に呼ばれたって聞いたけど?」
「え?あ〜〜そうっすそうっす呼ばれてたんで」
「・・・」
そういう事か、、あの姫はいつも結構な額を使ってくれる大事なお客様だ。
大方姫との仲を壊して売り上げを落とそうとしたってところだろ。さっきシャンパンを頼もうとした姫に割り込んだのもそういう事だ。
あぁ〜〜〜、、めんどくせぇ
どうにか姫のご機嫌を取りつつ接客し、業務を終える事が出来た。
時刻は1時を回り、とっくに日付は超えていた。
帰り道歩いていると路地裏に差し掛かった。すると 男女の揉めた声が聞こえた。
いつもならスルーするが今日はなんだか違った。
路地裏を覗いて見ると太った男とフードを被った小柄な人物…顔は見えないが背格好からしておそらく女性を見つけた。
明らかに男の方が不審で女性の手を掴んで離しそうとせず、女性は怯えているようで体中ガタガタと震えながらも手を振りほどこうとしている。
時刻は1時、周りの家も寝静まっていて人なんかほとんどいない。いくら人を嫌いになりつつある不破とはいえ、さすがにこの状況を無視するほど薄情ではない。
ズカズカと路地裏に入り今だ女性の手を掴んでいる男の手を掴み振りほどいた。急なことに男はびっくりし、体を崩して尻から床にダイブした。女性も少し寄れたが壁に背中を預けてゆっくりと床に座った。
「おい、おっさんさっきから何やってんねん」
と不破は今だ尻もちをついている男に迫った。男は不破の圧に負けて、泣きながら逃げ帰って言った。
不破はホッと息を下ろすと、女性に視線を向けた。
女性は黒のフードパーカーに灰色の半ズボン、しかも足は靴どころか何も履いてなく裸足だった。逃げてたのであろう足は傷つき所々は青く腫れて血が滲み出ている。座ったまま動かない女性を不破は、心配した。
「このままにしておくのは流石にまずいか」
不破は、少し女性に近づいて膝を着いき呼びかけた。
「あの、すいません!大丈夫ですか?もしもし?」
「………」
しかし、女性は反応しない
「全然反応ないやん。大丈夫か?これ」
取り敢えず足以外見える部分には怪我はなさそうだし、呼吸も安定している。
もし何か訳ありなら警察に連絡するのもまずいか?と考えていると女性が急に倒れた。
びっくりして咄嗟に体を掴むとフードが取れた。
「!?」
日本じゃ珍しい薄い青色の髪しかし不破が驚いたのはそこではなく
「…兎ッ!?」
女性の頭には兎の耳が生えていた