それから先生に許可を貰い車椅子ではあるものの、外出許可が出た。
「藍、まずはどこ周りたい?」
「ん…ここから近いのはショッピングモールなので洋服屋さんとか、アクセサリ屋さんがいいです…」
「ん、分かった。」
そして服屋で
「どう?なにか思い出すような事はある?」
「ん、特には…」
「そっか。」
「でも…なんか懐かしい感じはする…」
そう言う藍の顔は悲しそうだった。
そんな藍の顔を見るとなぜあの日
喧嘩してしまったのか、冷たく接して
しまったのかと何度も心の奥で自分を
責めてしまった。
そして思わず俺も暗い顔をしていると
ギュッ(身体を抱きしめられる)
「ん、石川さん…そんな暗い顔せんでくださいよ?ほら、笑ってください?石川さんが辛い時はいつでもこうやって抱きしめますから 」
藍は車椅子を降り俺を優しく抱きしめ
優しく微笑んだ。
「ん、ありがとう藍。本当は俺がこうしなきゃいけないのに、俺さ、藍に甘えてばかりだね」
思わず口から自分を責めるように
そう言うと藍は頭を優しくポンポンと撫でた
「別にええんですよ…?俺だって石川さんに
甘えてばかりなんですから?」
俺を慰めるようにそう言う藍にそうだねと
返事を返すと、藍を再び車椅子に乗せ
次の場所へと向かった。
そして藍の夢に出てきた順番通りの
場所に出かけ、最後に俺の家へやってきた。
「藍、鍵開けるから待ってね?」
鍵を開け藍を家の中へ入れるすると
「ッ…!?」
藍が他の場所に行った時には
見せなかったような反応を見せた。
「藍?どうかした?」
「あ、いえ…っ…この家…初めて…来たのに…この香りも…初めて嗅いだはずなのに…なんでか…懐かしく…感じます…」
藍は目に涙を溜め一生懸命に言う
「ッ…そっか、じゃあここ座ってみる?」
俺はいつも藍が座るソファーの位置をポンポンと叩き藍に聞いたすると。
「はい…座りたいです…」
ポスッ
いつもの場所に藍が居る。
しばらく1人で過ごしていた俺には
この光景はあまりにも毒で、
俺は思わず 口を開いた。
「ッ…そっか…あぁ…もう…俺だめだな…」
今は藍の記憶を取り戻すために2人の家に
来たのに、ここに二人きりと分かる度、
今隣に居る藍に触れたいと思ってしまう。
そして俺は無意識にそれを行動に移していた
「藍…っ…キス…していい?」
「ん…いいですよ?」
そして俺は時間もここに来た目的も
忘れて藍にキスの雨を降らせた。
これ以上先へ行かないようにと耐えながら
「んっ…はっ…藍…っ」
「んっ…ふっ…祐希さっ…」
「えっ…?嘘っ…藍…!?」
「ん…?祐希さん…?どうしましたか…?」
「えっ…えっ…?」
俺の目からは涙が溢れた、ずっと石川さんと呼んできた藍がまた呼んでくれたから。いつもみたいに愛しい声で俺の名前を。
「藍…っ…」
「ちょちょ…祐希さんどうし
ちゃったんですか?」
「藍…ごめん…」
「え…?」
困惑する藍を他所に俺の口から
ごめんという言葉しか出なかった。
「嫌だったよね…知らない女の人の…
香りなんてつけてきて…」
「しかもその上冷たい態度取って…事故にまで遭わせて…たくさん怪我させて…記憶喪失にまでさせて… そりゃあこんな最低な彼氏忘れられて当然だよね…本当にごめん…!」
俺は謝った。泣いて泣いて、目が腫れ上がる
ことなんて気にせずに。
「祐希さん…もう、そんな謝らんで下さいよ?それに、ほら、目、擦るのもダメですよ… ?」
「え…?」
「祐希さんの綺麗な目が腫れたりしたら
どうするんですか?」
泣いた目を擦る俺の手を藍は優しく
膝の方へと下ろした
「ッ…もう、別にいいじゃん…笑」
「もう、良くないです。その綺麗な俺を愛しそうに見る目が俺好きなんですから…」
「ん、もう…藍ったら…」
「ふふっ、それに、俺もう
怒ってませんから?」
「へ、ほんと?」
「はい…!正直腹は立ちましたけど…
でも、 今回はお互い様です!」
「ふふっ、そうだね?お互い様…だね?」
俺と藍は顔を見合せそう言うと
病院へ戻り記憶の事を話した。
それから藍は必死にリハビリを頑張り
再び日本代表の舞台へ戻ってきてくれた。
そしてこの出来事をきっかけに俺は
女性との会話はするものの触れられたり
するのを避けるようになった。
コメント
1件
とても良かったです♡♡ 祐希さん‥これからも藍君一筋でいてくださいね♡