テラーノベル
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カゼル・ヴァルハイト(騎士団長の息子 / 脳筋狂愛)視点【攻めから見たテウル】:『頼りになる唯一の舎弟であり、妙に目の離せない奴』
「周囲の貴族のガキどもは、俺の顔や家柄を見てヘコヘコ媚びてくるか、ビビって逃げ出すかの二択だ。
だが、テウルだけは違った。俺がどれだけ威圧しようが脅そうが、顔色ひとつ変えずに『手入れの角度が違います』なんて冷ややかに小刀を研いで見せた。あの度胸、タダ者じゃねえ。
最近は俺の突飛な呼び出しにも文句を言いながら付き合うし、剣の手入れや身の回りのことに関しては親父より気が利く。完璧な『舎弟一号』だ。
……ただ、気になるのはたまに見せる『遠くを見る目』だ。
あいつ、俺と話してる時も、たまに遠くの木の上や物陰を観察するように目を細めてる。まるで『俺が将来何かやらかす』のを知ってるみたいな、生温かい目だ。
それに、この前市場で平民のガキ(※レイ)の手助けをしてただろ? ふだん『自分は空気ですから』みたいな顔してるくせに、ああいう時にサッと割り込む度胸があるのが意味分かんねえ。……まあ、おもしろい奴だから離す気はねえけどな」
シオン・アルスター(侯爵家の神童 / マッドサイエンティスト)視点
【攻めから見たテウル】:『この世界で唯一、僕の頭脳と等しく対話ができる希少な実験体(知人)』
「同年代の人間は全員、僕から見れば思考の鈍い有象無象に過ぎない。
だが、テウル・エクスだけは例外だ。僕が半年かけて組み上げた魔術式の欠陥を、彼は初見で『ここ、緩衝陣がないから爆発しますよ』と事もなげに指摘してみせた。魔導の家系でもないくせに、彼の知識の底の深さは異常だ。
彼はいつも『通りすがりのモブですので』と主張し、僕の研究室から一刻も早く逃げたがっている。……それが実に愚かで、愛おしい(観察対象として)。
僕の思考についてこられるのは彼しかいない。だからこそ、僕は彼を『共同研究者』として拘束している。
最近、彼が『遠距離観察用の極小魔法具』なんて妙なものを自作しているのを知った。一体何を見るつもりなのか……彼の頭の中を解剖して覗いてみたい欲望に駆られるよ」
ヴェイン・クロウ(暗部の保健医 / 年上背徳)視点
【攻めから見たテウル】:『食えないガキ。自分の手のひらの上で転がしているつもりが、実は観察されているような気味悪さがある』
「弱小子爵家の坊っちゃん……のはずなんだけどねぇ。
僕が暗部の秘伝で調合した毒薬をひと目で見抜き、しかも『還元反応が不完全です』なんて講釈を垂れてきた時は、本気でその場で首を飛ばそうかと思ったよ。あんな知識、王国の最高機密レベルだからね。
結局、口封じと監視名目で僕の『助手』として手元に置いているけれど……あの子、僕の殺気や威圧をまったく怖がっていないんだよね。表面上は『ひえぇ、助けてください〜』みたいな顔をして見せるけど、目が全然怯えていない。
まるで『この男がどういう人間で、どういう裏があるか全部知っている』かのような、達観した目をしている。
ふふ、大人を舐めた可愛いボウヤだ。学園に入ったら、もっとたっぷり可愛がって(使い倒して)あげないとねぇ」
攻めたちとの「ドライな知人関係」をキープした気になり、路地裏で主人公レイに遭遇して隠れフラグを立ててしまった俺(テウル・エクス、11歳)。
「……いや待てよ。カゼル、シオン、ヴェイン……これで攻略対象の主要メンバーは出揃ったはずだ。あとは学園で第一王子のジュリアス殿下を遠目に見れば、手札は揃う!」
俺は自室で『ほら滅』の攻略メモを前に、ふっと胸を撫でおろしていた。
だが、前世で全108ルートを走破した腐男子の脳裏に、すっかり失念していた「最凶のイレギュラー」の存在がプレイバックした。
(……待て。一人忘れてないか? 全ルートコンプリートの最後に解放された、あの隠しキャラ……『魔王』の存在を……!!)
『ほら滅』の隠しルート。
人間に化けて学園に潜入し、国を滅ぼそうとしていた魔王ベルゼ・ヴァルハラ。
原作ゲームでは、あまりに重すぎる愛で自滅・暴走する王子や騎士たちを見て、「人間の愛、怖……」「あいつら正気じゃない……」と引きまくり、最終的にレイを巡る泥沼劇の「巻き込まれ被害者」となるシュールなラストボスだ。
(大丈夫だ。魔王が人間に化けて王都に潜伏し始めるのは、本編(学園)が始まる直前のはず。幼少期の今、遭遇するはずが――)
「テウル様、お庭に珍しいお客様が迷い込んでおられますよ」
使用人に呼ばれて庭へ出た俺は、我がエクス家の庭園の池のほとりで、絶句した。
そこにいたのは――。
漆黒の髪に、吸い込まれそうな紫の瞳。
幼少期(12歳くらい)の姿に化けてはいるが、あまりにも圧倒的な美貌と、周囲の空気を凍りつかせる異質な威圧感を纏った少年。
そう、隠しキャラのラストボス――魔王ベルゼ本人だった。
(なんでぇぇぇぇぇ!!?? 幼少期から王都に潜伏してんの!? タイムスケジュール早すぎない!!??)
「……ふむ。我が結界を潜り抜け、この屋敷の庭に迷い込むとはな」
ベルゼは池の鯉を冷ややかな目で見下ろしながら、フッと不遜な笑みを浮かべた。幼少期にしてすでに「世界の覇者」の風格である。
「我の名はベルゼ。……人間よ、我を恐れぬか? 我の内に秘められし途方もない滅びの力に」
(出たァァァ!! 隠しルート特有の『中二病チックなラスボスのお披露目セリフ』!!)
本来なら、ここで主人公レイが「まあ、綺麗な髪……! お腹空いてますか?」とか天然で懐に入り込み、魔王の毒気を抜いて落とすイベントである。
だが、今ここにいるのはレイではない。
前世が腐男子で、全108ルートの死因を知り尽くしたモブ悪役令息(俺)だ。
(関わるな……! 刺激するな……! 魔王に目をつけられたらエクス家ごと灰になる!!)
俺は瞬時に「無害なモブ貴族の笑み」を貼り付けると、優雅におじぎをした。
「これは失礼いたしました、ベルゼ様。迷子になられたのでしたら、お茶でもいかがですか?」
「……ほう? 我の圧倒的な気配に恐怖せぬとは。……ただの人間ではないな」
「いえ、ただの子爵家の長男です。それよりベルゼ様、あちらに見えます大木をご覧ください」
俺は庭の隅にそびえる、いつもの俺の定位置(大木)を指さした。
「あそこは日当たりが悪く、人が滅多に来ないため、高みの見物……失礼、静かに人間観察をするには最高の特等席でございます。旅のお疲れでしたら、あそこで静かに街を見下ろされると心が落ち着きますよ」
ベルゼは不快そうに眉をひそめた。
「ふん、バカめ。我が興のあるのは人間の愚かな争いと滅びのみ。そのような木の上で――」
「あそこからだと、遠くの市場で男たちが一人の美少年(レイ)を巡って見苦しく腕引っ張り合っているドタバタ劇が、魔法具越しに実に高画質で観察できます」
「……何?」
ベルゼの紫の瞳がピクリと動いた。
「人間どもは愛だの恋だのと言いながら、互いに嫉妬し、自滅していく愚かな生き物です。それを安全圏から『あいつらまたやってるよ……』と冷ややかに高みの見物をする……これ以上の娯楽がありましょうか?」
俺は前世の腐男子としての「高みの見物論」を、あたかも『冷徹な人間観察』であるかのように語ってみせた。
ベルゼは数秒間、俺の顔をじっと見つめたあと――ふっと口元を緩めた。
「……面白い。貴様、幼い身でありながら、人間の愚かさと醜悪さをすべて見透かしているような目をしているな」
(よしっ!! 『人間嫌いの魔王』に【解釈の一致】を感じさせたぞ!!)
ベルゼは軽やかに跳躍すると、俺の定位置である大木の枝の上に上手に着地した。
そして、懐から怪しい魔導具を取り出すと、遠くの王都を見下ろした。
「なるほど……木の上からの景色も悪くはない。我が自ら手を下さずとも、人間どもが勝手に愛憎で滅びていく様を観察する……実に嗜好のよい余興だ」
「でしょう? では私はこれで失礼いたしますので、ご自由にどうぞ」
よし! 交流は最小限! 立ち去ろうとした俺の背中に、魔王の声が降ってきた。
「待て。テウル・エクスと言ったな」
「はい?」
「貴様を、我が『人間観察の同伴者』と認めてやる。またこの木の上に来るぞ」
「(なんでそうなるのーーー!?)」
◇
その日の夕方。
我が家の庭の木の上で、魔王(ベルゼ)と並んで遠くの王都を眺めるという、狂気的な絵面が完成していた。
カゼル(騎士): 舎弟一号
シオン(魔導士): 共同研究者
ヴェイン(保健医): 危険薬品の助手
ベルゼ(魔王): 人間観察の同伴者
(隠しキャラまで網羅して、攻め(男たち)の知人フラグがフルコンプしちゃったじゃねえか!!!)
俺は木の上で、隣で優雅に果実をかじる魔王を見ながら、遠い目をした。
「にいさまー! おやつできたよー!」
下から弟のルークが手を振っている。ルーク、助けてくれ。兄ちゃんの隣にいるの、将来この国を滅ぼしかけるラストボスなんだ。
「ふむ……あの幼い弟も、我が配下に引き入れてやってもよいぞ?」
「それだけは断固拒否いたします(※即答)」
学園入学まで、あと数年。
テウル・エクスの「絶対安全圏からの高みの見物ライフ」は、本編開始前からすでに全方位爆破されていたのであった。
ありんす
981
隼人
71
99
コメント
1件
ふふ、読了しました。第5話、すごく面白かったです! まず構成の巧みさにやられました。3人の攻め視点でテウルがどう映っているかが一気に描かれ、それぞれ「ただ者じゃない」と感じているのが——しかも理由が違うのが秀逸。カゼルは度胸、シオンは知識、ヴェインは目——この3方向から浮かび上がるテウルの謎が楽しい。 そしてラストの魔王登場! あの「なんでぇぇぇ!?」の叫びに思わず声が出ました。腐男子の知識を逆手にとって「人間観察の同伴者」に仕立て上げる切り返し、大好きです。高みの見物ライフが全方位爆破される予感、続きが気になりますね!