テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,409
1,332
「勇ちゃん捻挫したんやって?大丈夫なん?!」
舜太が勇人の元に駆け寄る
柔太朗と一瞬目が合ったけど俺はスマホに目を落とす
「そんなに痛くないから大丈夫だってー
大袈裟すぎるわ!!」
勇人が笑いながら楽屋に入ってきた
何だか視線は感じたけど無視してスマホを見続けた
「見せてー?どんななん?腫れてるー?」
大智は勇人のジャージの裾めくろうとしてるし
うるせぇな
さわんなよ
そいつは俺の…だし…
俺の横に座ってた柔太朗がきっと俺にしか聞こえない溜め息をついてタブレットを机に置いた
「どれくらいで治るの?ライブは無いけど歌番組はあるよ?」
柔太朗は勇人を心配そうに見つめる
「テーピングで固定して、マネージャーと相談して痛み止めも処方してもらったから平気だって」
ケラケラ笑う勇人に皆暗い笑顔になる
皆知ってるんだ…こういう勇人は無理して我慢してるって
勇人が来る前にマネージャーから説明があったが彼は知らない
勇人が怪我をしたこと、安静にするように医師に言われたこと
俺は朝に聞いたから知ってたけど言わなかった
「取り敢えずレッスンは勇人抜きで4人でやって、後で合わせる感じで…
番組収録とかは普通にしてもらえば…」
あいつのポテンシャルなら数日で合わせてくるだろってマネージャーに発言した
不安はあるけど今の俺にはそれしか言えない
「せやな!捻挫はクセついたらあかんし!ゆっくりしてもらお!」
何よりも皆で踊るのが好きな大智がいつもより一際明るい声で返した
なんか横目でチラッと見てくるのがきしょかった
舜太と柔太朗は変な顔して見つめ合ってたけど、その場は収まった
そんな話をした直後にこれだよ
勇人のバカ元気作り笑い
舜太がボソッと呟いた
「仁ちゃん心配やろうなぁ……」
勇人がピクっとする
俺は一瞬で顔が上気するのが分かった
なんだか苛ついた
多分恥ずかしいのじゃなくて怒りだと思う
何で?
他の皆は勇人を心配してるのに俺は怒ってるの??
自分の感情がよく分からないけど
舜太の言葉で、ぐちゃってなったのは分かった
「舜太…ダメだよ」
柔太朗の優しい声が聞こえて
「コーヒー買ってくる」
誰にも気付かれないように少し唇を噛んで楽屋のドアを開けた
「吉田さーんコーヒーなら楽屋にあるでー?」
分かってるのか何も分かってないのか大智の声が後ろの方から聞こえた
「それじゃないのが飲みたいから」
小さく言ってドアを閉めた
ロビーにある自動販売機までの家出
ぼーっと真っ黒な缶のコーヒーをすする
変な空気になってないかな?
俺ちょっと態度おかしかったよな
見てもいないのに勇人の悲しそうな顔が浮かぶ
病院で恥ずかしくなって逃げて、今は無視して
俺だって喉やったりインフルエンザで休んだり迷惑かけてるのに
俺ってワガママすぎる……?
やっと落ち着いてきた謎の怒り
戻ろう…楽屋に…
空き缶を捨てて立ち上がると、柔太朗が歩いて来た
「30分待機だって」
あまりにも普通に言うから気が抜けた
「何かあったの?渋滞で衣装届いてないとか?
たまにあるよね」
こくんって頷いてじっと見てくる
今日は自分たちの番組の収録だからオープニングは私服で撮れば別にいいのになぁって思ったけど
押し黙ってる柔太朗が何か変でしっかりと目を見た
何かあったんじゃないかと
柔太朗はすぐに目を逸らすと下を向いて
俺の一番しんどいことを言った
「勇ちゃんが泣いちゃって」
は?
「でも、大ちゃんと舜太が話きいて必死に慰めて…
収まったんだけど…目元真っ赤だから
今アイシングしてるところ」
はぁ??!
「仁人ごめんー俺のせいでごめんー!!ってずっといいながら泣きじゃくってた」
「きっと責任感じちゃってたのかもね
仁ちゃんが楽屋出てって急に泣き出して」
え?何?アイツ馬鹿すぎる
楽屋に急ごうとした俺の手首を強く引かれた
柔太朗ってこんな力強かったっけ?
「よっしーは勇ちゃんのこと好きで」
「勇ちゃんはよっしーが好きなんでしょ」
俺はゆっくりと柔太朗を見上げた
体が止まった
自分はきっとすごくおかしい顔だったんだろう
真剣な顔して俺を見ていた柔太朗がすぐに笑顔になって
「楽屋戻ろ 勇ちゃん待ってるよ」
心臓の音って本当に聞こえるんだ
耳がどくどく鳴ってる
多分顔赤いんだろうなぁ
柔太朗に手を引かれて早歩きで
どこまでも純粋な大好きな人の元へ行く
でも、柔太朗のこういう所たまに怖いわ
優しすぎて
早くいかなくちゃ
もうこれ以上泣かせないように
てか!
アイツなんで捻挫したの??
どうせしょうもない理由なんだろうなぁって思ったら小さく笑っちゃった
柔太朗がこっち見るから
ん?って見返したら
「よっしー、その顔はダメだって…」
柔太朗にぷいってされた
また俺変な顔してたのか
コメント
3件
こーのさん、第3話読了しました〜! 仁人の心の葛藤がすごく丁寧に描かれていて、胸がぎゅっとなりました。勇人の元気な作り笑いと、それに気づいてるメンバーたちの空気感がリアルで…。特に舜太の一言で仁人がぐちゃっとなる瞬間、ドキドキしました。柔太朗の優しいけど鋭い視線も好きです。早く2人がちゃんと向き合えますように…!続きが気になります🌷