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「1年ほどだと思います。」
この言葉が頭から離れない。
あと1年……?俺が…?
今まで大きな病気なんてしたことないし、体は丈夫な方だったから、いきなり余命宣告なんてされても頭は追いつかない。
医者は病室から去り、母は息子の余命宣告にショックで泣き崩れその場にいられず家に帰ってしまい病室にはまぜ太が1人
病気について説明されたが余命宣告にショックを受けすぎてほとんど聞いてないが、あと3日間は入院になるらしい。
昨日までぷーのすけと一緒にバカしてたのが嘘みたいで、昨日まで全力で恋してた俺も馬鹿みたいで、全部が嫌になる。
ただただベッドの上でボーッとすることしか出来なかった。
ボーッとしている間思い出すのは全部ぷーのすけとの思い出。幼馴染であり、想いの人。
小さい頃からずっと一緒で、恋に気づいたのは高校に入ってから。
最近ずっといい感じで、多分両思い。
なのに、あと一年しか生きれない?ふざけんな。これじゃあ今更付き合ったって1年しか一緒にいれない。
ぷーのすけに迷惑がかかるだけ。
なんでもっと早く恋に気づかなかったんだろうと初めて後悔した。
もうぷーのすけと関わるのは控えよう。そうでもしないと、ぷーのすけを嫌いになれない。俺が好きでいちゃダメなんだ。
ぷーのすけにも新しい人見つけてもらわないとだからね。
今にも涙が零れそうで気を逸らそうとスマホを手に取ると1件の通知があった。
それは昨日の夜に送られてきていて、確認するとぷーのすけからのLINEだった。
“目覚ましたら連絡しろよ。急に倒れて焦ってんの。普通に心配してるんやからね”
「そんな優しくするなよ…俺、諦めたいのに…諦めれないよ…」
“ありがと、今起きた。3日間入院らしいから学校行けない。心配かけてごめん、でも何ともないから大丈夫”
何ともないって嘘をつく。返信はいつもより素っ気なくしてやった。早く俺を嫌って欲しいから。そして早く諦めをつけたい。
画面を眺めてるとすぐ既読がついて返信がくる
“まじでよかった…ほんまに焦ったんやで?学校帰り病院寄っていい?会いたい”
「…ッ、」
“会いたい”という言葉にドキッとする
「俺も…会いたい、今すぐ、来て欲しい…」
けどもうこれ以上好きになりたくない、迷惑はかけられない、諦めるって決めたから。
“ごめん、入院中家族以外はダメなんだって。ありがとう”
また嘘の返信をすると
“そうなんや、ほな3日後学校待ってるからな、元気なまぜ太見せてや”
すぐに返事は返ってくる。
「…ごめん、ぷーのすけ…ほんとに。なんで、俺が…やだよ、会いたいのに、一緒にいたいのに…」
今まで堪えていた涙が零れ落ちてただひたすらに泣き続けた。
3日後退院し、 まぜ太は学校に戻った。
けれど、 その顔は、みんなが知るまぜ太とは違っていた。
「おーい!まぜ太、生き返ったか!」
教室のドアが開くと同時に、いつも通りの声が飛んでくる。
大げさに手を振るぷりっつ。
その声は明るくて、まるで何も変わっていない世界そのものだった。
だが、まぜ太は一瞬だけ笑ったあと、すぐに視線をそらした。
「うん……まあ。大丈夫。」
いつもより短い返事。
いつもより弱い声。
ぷりっつは首をかしげた。
「なんや元気ないやん。まだしんどいんか?」
「別に。問題ないよ。」
またそっけなく返す。
それきりまぜ太は、カバンから教科書を出しながらぷりっつのほうを見ようとしなかった。
倒れる前まではずっと自然に笑っていたのに。
――違和感。
ぷりっつの胸に、黒い種みたいなものが落ちた。
放課後。
「まぜ太、一緒に帰ろーぜ」
以前なら絶対に並んで帰っていた時間。
でも、まぜ太は無表情で言う。
「ごめん。寄るところあるから。」
「そーなんや…病院?」
「……そんなとこかな。」
ぷりっつの明るさが、ほんの少しだけ曇る。
「なぁ、なんか冷たくない…? 俺、なんかした?」
「してないよ。」
「ならええけど……」
ええけど、じゃない。
でも聞けない。
聞いたら、まぜ太がさらに遠くへいってしまいそうで。
ぷりっつは喉の奥が苦くなるのを感じながら、ぎゅっと拳を握ったまま言葉を飲み込んだ。
その後もまぜ太の態度は変わらなかった。
昼休みも席をずらすようになり、LINEの返信も極端に短い。
一緒に登校も帰宅もなくなった。
あまりに態度が急すぎて、周りの友達もざわつく。
「まぜ太くん、なんかあったのかな……?」
「この前倒れたときから様子変だよな。」
みんなが疑問を口にする中、
ぷりっつだけは、不安で胃が痛くなるほど苛立っていた。
なんでだよ。
俺、避けられるようなことした?
それさえ聞けない自分が情けない。
ある日の放課後。
まぜ太が帰ろうとした瞬間、ぷりっつが腕を掴んだ。
その手には必死さが滲んでいた。
「まぜ太。ちょっと話そ。」
「……今、忙しいんだ。」
「忙しいとか言い訳すんなって。ずっと避けてるやろ。」
まぜ太の背中が固まる。
「気のせいだよ。」
「気のせいちゃう!!」
教室の空気が止まった。
普段怒らないぷりっつの声が、思わず響いてしまったから。
けれどぷりっつは構わず続けた。
抑え込んでいたものが溢れてしまった。
「お前、なんで急に冷たくなったん? 俺な、めっちゃ不安なんや。 なんも言わず離れられるの、一番しんどい。」
まぜ太は唇を噛んだ。
その表情は、痛いほど苦しそうで、悲しそうで
でもやっぱり、何も言わなかった。
「……ぷーのすけには関係ないよ。」
その一言。
刃物みたいに鋭くて、ぷりっつの胸を深くえぐった。
「…てことはなんかあるって事やろ。教えてや。俺ら昔からの仲やん。」
「だから。ぷーのすけには、関係ない。」
ぷりっつは、その言葉に息が止まった。
声がひゅっと細くなる。
「……それ、ほんまに言っとるんか。」
「うん。」
「俺とお前の時間って……そんな軽かったんか…?」
まぜ太は俯いたまま返さない。
沈黙が、二人の足元まで黒く落ちていく。
やがて、ぷりっつの手がゆっくり離れた。
「……わかった。もうええよ。」
その声は笑っているようで、全然笑えてなかった。
ぷりっつは振り向きもせず、教室を出ていく。
残されたまぜ太は、その背中を追うことすらできなかった。
扉が閉まる音が、教室に響く。
「……ごめん。でも……言えないんだよ。」
まぜ太は目を閉じて、机に手をついた。
必死でこらえていた涙が落ちる。
好きだから。
好きすぎるから。
君を巻き込みたくない。
君に悲しんでほしくない。
そんな想いを、胸の奥で必死に押し殺した。
家に帰ったまぜ太は、カレンダーを見る。
そこに書かれた文字は「余命一年」。
その一文字一文字が、心を締めつける。
慣れない孤独がじわりと広がって、目の奥が熱くなる。
「……好きにならなきゃよかった…」
こぼれた独り言は、空っぽの部屋で虚しく響いた。
翌日
ぷーのすけが話しかけてくることは無かった。
これで、やっと、諦めれる。ぷーのすけもきっと俺の事嫌いになった。
嬉しい、嬉しいはずなのに、いつものおはようが無くて、ぷーのすけのうるさい声が足りなくて、辛い。寂しい。
今日はいつもよりつまらない1日だった
一人重い足取りで家へ帰る。玄関を開けていつも通り「ただいま」と声をかけるが返事がない。今日は誰からの声も聞けないらしい。
リビングの扉を開けた瞬間息が止まった。
力も入らずそのまま崩れ落ちる。
「、お母、さん…?な、んで…」
リビングで首を吊って自ら命を絶ったらしい。
首に縄が括り付けられ吊るされている。
「う”、ッ…おぇ”、」
人の死を目の当たりにして、お腹が苦しくて吐き気が込み上げてきた。胃酸で喉が焼けつけるように痛くて、目の前の出来事が理解できなくて、ただただその場でジッとすることしか出来なかった。
葬儀の日、黒いスーツに包まれた親戚の視線が痛かった。 父は離婚して、母親一人の生活だったから余計に。
「まだ若いのに」「かわいそうに」そんな声すら、もう耳に入らなかった。
俺はただ、祭壇の前で固まっていた。
しばらくして、葬儀屋の人に渡された封筒。
母の字で俺の名前が書かれていた。
震える指で開くと、中には短い遺書。
『あなた一人残してごめんなさい。 でも……あなたが私より先にいなくなるところを見るのが怖かった。 それだけは絶対に耐えられなかったの。 母さんを恨んでいいよ。』
手が震えた。肩も震えた。
読めば読むほど、ひどい言葉が胸に刺さった。
俺のせいだ。
俺の余命を知って、母さんは……。
喉からひゅっと音が漏れた。
涙が勝手に溢れて、止まらなかった。
「……俺、が……」
視界が揺れて、膝が崩れそうになる。
「まぜ太」
背後から声がして振り返ると、喪服姿のぷりっつが立っていた。ぷりっつも葬儀に呼ばれていたらしい。
眉間にしわを寄せて、真っ直ぐ俺を見ている。
「なんか……隠してるやろ。」
「……隠してなんか、ない」
声は出たけど、かすれてた。
ぷりっつの眉がさらに寄る。
「嘘や。 泣き方がちゃう。 “悲しい” だけちゃう泣き方や。 まぜ太、なんか……自分を責めてる顔してる」
俺の手に握りしめた遺書の紙を、ぷりっつがそっと見た。
「……それ、なんなん」
「見るなよ……!」
思わず紙を握りつぶしそうになったけど、 ぷりっつはいつもの軽口の気配すらなく、静かに手を伸ばした。
「見せて。
俺は……まぜ太の全部、ちゃんと知りたい」
その声があまりにも真剣で、
俺は抗えなかった。
遺書を震える手で渡すと、
ぷりっつはゆっくり読んで、目を伏せた。
「……まぜ太」
「俺のせいなんだよ」
喉がひりつく。涙が止まらない。
「俺が……母さんより……先に死ぬかもしれないから…… それ見たくなくて……! 母さん、俺なんかのせいで……!」
ぷりっつの肩がびくっと揺れた。
「……“先に死ぬ”って……どういう意味や」
もう隠せなかった。
ここで言わなかったら、俺はきっと壊れる。
「……俺……余命、宣告されてるんだよ」
泣きながら吐き出した瞬間、
ぷりっつの表情がすべての光を失った。
「は……何年……?」
「……一年、もつか……どうか……だって」
空気が止まったみたいだった。
ぷりっつはしばらく動けなくて、呼吸すら忘れてるみたいだった。
でも次の瞬間、ぐっと俺の腕を掴んで引き寄せた。
「なんで……なんで言わんかったん……!」
声が震えてる。
「言えるわけねぇだろ……! 言ったら……お前、絶対悲しむし、俺ばっか気使うじゃん…」
俺は泣きじゃくって、まともに立ってもいられない。
ぷりっつはそんな俺を、
ぎゅっと、壊れ物みたいに抱きしめた。
「そりゃそうに決まっとるやろ……! まぜ太が死ぬかもしれんって、そんなもん… 笑って聞けるわけないやん……!」
肩が震えてる。
声も震えてる。
俺の背中を必死で抱きしめ続けながら、
ぷりっつは苦しそうに言う。
「でもな、まぜ太。 お前がどんな状況いようと……俺は……絶対、離れへん。 怖いなら言え。苦しいなら頼れ。 全部、俺に……背負わせろ……」
その言葉に、胸の奥がぐしゃっと潰れた。
「……ぷーのすけ……っ」
「まぜ太、お前が何も言わずに死ぬなんて……俺、絶対に……許さんからな……」
葬儀場の静けさの中で、
俺たちはただ必死で、お互いにしがみついていた。
世界が崩れていく中で、
唯一残った温もりを、離せなかった。
葬儀場の外に出ると、冷たい風が肌を刺した。 昼間なのに寒くて、まるで世界が急に色を失ったみたいだった。
俺はさっきまで泣き続けて目が腫れたまま、 ぷりっつに腕を支えられながら歩いていた。
ぷりっつはずっと黙っていた。 泣いているのかどうかも分からないくらい、感情を押し殺している。
「……まぜ太」
ぽつりと呼ばれて立ち止まる。
振り向くと、ぷりっつは下を向いたまま拳を握りしめていた。 その震え方が、今にも崩れそうで、見ているこっちが苦しくなる。
「……一年って… ほんまに……一年も……もたへんの……?」
かすれた声。
聞いてほしくないけど、聞かせなきゃいけない。
「……医者は……そう言った」
ぷりっつの肩がびくっと跳ね上がる。
そして——
「……っ、う……あ……」
声にならない声が漏れ、ぷりっつは顔を両手で覆った。
「ぷーのすけ……?」
「…ごめ、耐えれんかった、 」
堰を切ったみたいに、 ぷりっつの涙がぽたぽたと地面に落ちていった。
普段あんなに強がって、噛みつくようなツッコミをするくせに、 今は息をするだけで精一杯みたいに肩が震えている。
「なんで……なんで言わんかったん… 俺、まぜ太が死ぬなんて……考えるだけで……頭おかしなる…」
「ごめん。 言ったら、悲しませるなって…」
俺も泣きながら言うと、
ぷりっつは首を振って近づいてきた。
「当たり前やろ、でも何も言わず消えてく方や嫌や… だって……俺……まぜ太のこと……」
そこで言葉が止まり、唇が震えていた。 まるでそれ以上言ったら、自分が壊れてしまうと分かっているかのように。
ぷりっつは俺の胸に顔を押しつけた。
喪服のシャツが涙で濡れた。 俺の手も震えてるのに、ぷりっつの震えの方がずっと強い。
「……まぜ太、おらんようなるとか……絶対やだ… いやや……そんな未来……考えたくもない……」
「……俺も……死にたいわけじゃないよ」
「分かっとる… でも……怖い……めちゃくちゃ怖い…」
泣きじゃくるぷりっつの背中に手を添えると、 彼は何か壊れたみたいにしがみついてきた。
「まぜ太… 離れんといて… 今だけでも……ほんまに……そばにいて……」
「……離れないよ、 俺はまだ生きてる。ここにいるだろ」
そう言うと、ぷりっつは俺の胸のあたりをぎゅっと掴んだ。
「……じゃあ俺も……守るわ… まぜ太がどれだけ弱っても、崩れても……全部受け止める…… 俺、強くなるから……。まぜ太が泣きたい時は泣いていいように……。 しんどい時は、俺の名前呼んだらええから……」
涙まみれの顔で必死にそう言うぷりっつの姿に、 胸の奥がじんっと熱くなる。
「ぷーのすけ …ありがとな」
「当たり前や…… まぜ太のこと……好きとかそんなんちゃう。 もっと……深いねん……」
ぽつりと漏れたその言葉に、俺は息を飲む。
でも——今はまだ、答えられなかった。
恋とか愛とか言葉にするには、あまりにも世界が壊れすぎていたから。
ただ、互いの涙が止まるまで、 俺たちは長い時間抱き合っていた。
葬儀が終わって、みんなが帰ったあと。
家の中には、異様なほどの静けさが満ちていた。
誰もいないリビング。
いつも母さんの声がしていた台所。
全部がやけに広く見えて、息が詰まりそうだった。
ぷりっつは靴を脱いで俺の後ろをついてきた。
「ひとりにしたらあかん」と、まるで当たり前みたいに。
「……母さんの部屋、片づけなきゃ」
声に力がなかった。
自分の口から出た言葉なのに、他人のものみたいに聞こえた。
「無理やったら、やらんでええ。 俺も手伝えることやれるで」
「いや……やるよ。 ……やらなきゃダメなんだ」
足が震えながら母の部屋の扉を開ける。
淡い柔軟剤の匂いがまだ残っていた。
“帰ってきたら普通にそこに座っていそうな気配”が、そのまま残っている。
ベッドは整ったまま。
読んでいた本には開いたページにしおり。
タオルが洗われて畳まれたまま。
全部が“生活の続き”のままで止まっている。
俺の目から勝手に涙が溢れた。
「まぜ太……」
「生きてた時のまんまだ… なんで……なんで……母さん……」
声が震えながら勝手に高くなる。
情けないほど涙が次から次へと落ちていく。
「……俺、どうしたらいいんだよ… 母さんもいなくて… 余命だって……一年もないって… 怖いよ……」
「怖かったら……怖いって言え。 泣きたいなら、泣け… 俺が全部受け止める…」
「……ぷーのすけ、」
「まぜ太がいなくなるなんて……俺は……嫌や…… どれだけでも側にいるから……ひとりにせえへんから…それまで どこにも行かんといて……」
気づいたら俺も抱き返していた。
お互いの涙が服に染みて、温度だけが確かで。
その夜、俺たちはずっと離れなかった。
泣き疲れて、何度も崩れて。
それでも、ぷりっつは一度も手を離さなかった。