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#フライギ
にもあえ
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**読んだよ〜〜〜!!!😭💕✨** しゆらちゃんが魔獣に「怖くないだけです」って言ったシーン、めっちゃ胸にきた…。人間はずっとできなかったことを、彼女はあたりまえにやってのけるんだね。統括とのやりとりも静かで重くて、地下に戻ったときの温かさとのギャップがもう…尊すぎて泣く。ルカかわいいし、子供の絵に予紬が「俺こんな黒いのか」って返すのも好きすぎるw 最後のセンサー異常、次が気になりすぎる…!続き待ってるよ葉菜さん🥺💕
硬い毛並みの奥で、小さく喉が鳴った。
「予紬さん、持ってきました」
しゆらが戻ってくる。
しゃがみ込んで包帯を広げる姿は慣れたものだった。
「消毒液」
「はい」
「固定板」
「こっちです」
周囲の研究員達が見ていることなど気にも留めず、しゆらは淡々と動く。
その手つきは無駄がない。
最初は怖がっていたはずなのに、いつの間にか簡単な処置なら補助できるようになっていた。
「……手、貸せ」
「はい」
しゆらが包帯の端を押さえる。
その指先へ、魔獣がそっと鼻先を寄せた。
「……あ」
しゆらが目を瞬く。
魔獣は少しだけ匂いを嗅ぐみたいに鼻を動かしたあと、安心したように目を細めた。
周囲が静まる。
研究員達は、まるで信じられないものを見るような顔をしていた。
「懐いてる……?」
誰かが小さく呟く。
だがしゆらは首を横に振った。
「違います」
静かな声だった。
「怖くないだけです」
その言葉が、妙に胸へ残った。
怖くない。
それだけのことを、
人間はずっとできなかった。
「予紬さん」
「ん?」
「この子、まだ小さいですね」
「たぶんな」
「なのに、こんな拘束……」
しゆらはそこで言葉を止める。
代わりに包帯を巻く手が、少しだけ優しくなった。
魔獣もそれを感じているのか、大人しく目を閉じている。
「……お前、ほんとそういうの好きだな」
「命ですから」
即答だった。
迷いがない。
しゆらは当たり前みたいにそう言う。
人間とか魔物とか、
そういう線引きをする前に。
“生きているもの”として見ている。
だからなんだろう。
周囲は、しゆらを怖がる。
境界が曖昧な存在だから。
「終わりました」
包帯を結び終え、しゆらが小さく息を吐く。
その瞬間。
魔獣がゆっくり頭を持ち上げた。
警備兵達が一斉に身構える。
だが魔獣は暴れなかった。
代わりに。
しゆらの手へ、そっと額を擦り寄せた。
「……っ」
周囲から小さなどよめきが漏れる。
しゆらは少し驚いたあと、困ったように笑った。
「大丈夫ですよ」
そう言って、恐る恐る頭を撫でる。
魔獣は目を細めた。
まるで子供みたいな顔だった。
その光景を見ていた若い研究員が、ぽつりと呟く。
「……本当に、危険なんですかね」
空気が止まる。
すぐ隣の研究員が顔を強張らせた。
「やめろ」
低い声だった。
若い研究員ははっとしたように口を閉ざす。
まるで、
“考えてはいけないこと”に触れたみたいに。
しゆらは何も言わない。
ただ静かに、魔獣の頭を撫で続けていた。
中庭に流れていた緊張が、少しずつほどけていく。
警備兵達も完全には警戒を解いていないが、先程までみたいな殺気立った空気はない。
魔獣は包帯を巻かれた脚を庇うように丸まりながら、小さく喉を鳴らしていた。
「……子供だな」
俺がぽつりと呟くと、しゆらが小さく笑う。
「甘えん坊です」
「お前にはな」
「予紬さんにもですよ」
「そうか?」
そう返すと、しゆらは少しだけ悪戯っぽく目を細めた。
「だって、さっきから撫でるのやめないじゃないですか」
「……」
気づけば、無意識に魔獣の首元を撫で続けていた。
周囲の研究員達の視線が微妙に変わる。
“冷酷な研究者”を見る目ではなかった。
だがその空気を壊すように。
「予紬研究員」
低い声が響く。
振り返ると、会議室にいた統括が中庭へ降りてきていた。
周囲の研究員達が慌てて姿勢を正す。
統括は眠る魔獣を一瞥し、それからしゆらへ視線を向けた。
ほんの一瞬だけ。
値踏みするような目だった。
「騒ぎは収まりましたか」
「見ればわかるだろ」
「……相変わらずですね」
統括は小さく息を吐く。
その視線が、包帯の巻かれた脚へ落ちた。
「処分前個体にそこまでする必要がありますか?」
空気が冷える。
しゆらの指先が、ぴたりと止まった。
「まだ生きてますけど」
静かな声だった。
統括はしゆらを見る。
周囲もまた、何も言わず二人を見ていた。
「生きているからこそ危険なんです」
「……」
「情は判断を鈍らせる」
淡々とした口調。
まるで事実を述べるだけみたいに。
しゆらはしばらく黙っていた。
だがやがて、小さく視線を落とす。
「じゃあ」
ぽつりと呟く。
「怖いから、いなくなってほしいんですか」
その言葉に、周囲が静まり返った。
統括は眉一つ動かさない。
「必要な管理です」
「管理」
しゆらはその言葉を小さく繰り返す。
どこか寂しそうな声だった。
俺はその横顔を見る。
彼女は怒っていない。
責めてもいない。
ただ。
本当に理解できないんだろう。
“怖い”という理由だけで、
命を檻へ閉じ込めることが。
「……しゆら」
俺が名前を呼ぶと、しゆらははっとしたように顔を上げた。
さっきまでの空気を振り払うみたいに、小さく笑う。
「すみません。変なこと言いました」
だが。
白衣の裾を掴む指だけは、少し強く震えていた。
地下区画へ続く階段は、地上より少しだけ暖かかった。
配管の熱が壁へ伝わっているせいだ。
しゆらは俺の白衣を軽く摘んだまま、隣を歩いている。
さっきまでの沈んだ空気は、少しだけ薄れていた。
「……今日は騒がしいですね」
「上が勝手に騒いでるだけだ」
「でもみんな落ち着かないです」
地下へ近づくにつれて、微かに鳴き声が聞こえてくる。
低い唸り声。
小さな羽音。
何かが床を引っ掻く音。
その中へ。
「しゆらーーーっ!!」
元気な声が響いた。
直後、小さな影がものすごい勢いで飛び込んでくる。
「うわっ」
しゆらが慌てて受け止める。
猫くらいの大きさの魔獣だった。
黒い毛並みに、小さな角。
「おかえりっ!」
「ただいま、ルカ」
しゆらは笑いながら、その頭をわしゃわしゃ撫でる。
ルカと呼ばれた魔獣は嬉しそうに尻尾を振り回したあと、今度は俺の方を見る。
そして。
ガブッ。
「痛っ」
白衣の裾へ噛みついた。
「……おい」
「ルカ、だめです」
しゆらが慌てて引き剥がす。
だがルカは不満そうに唸った。
「予紬、またしゆら連れてった」
「人聞き悪い言い方するな」
「朝起きたらいなかった!」
「会議だ」
「知らない!」
完全に拗ねていた。
俺は小さく息を吐き、ルカの額を軽く小突く。
「飯は」
「食べた!」
「薬は」
「……半分」
「残り飲め」
「えぇ……」
露骨に嫌そうな顔をする。
しゆらがくすっと笑った。
その笑い声を聞いた瞬間、さっきまでの重苦しさが少しだけ遠くなる。
地下区画はいつもこうだった。
地上では居場所のない連中が、
勝手に集まって、
勝手に生きている。
騒がしくて、
面倒で、
統率もない。
なのに妙に落ち着く。
「予紬さん」
しゆらが小さく袖を引く。
「ん?」
「見てください」
指差した先では、小さな半魔の子供が物陰からこちらを覗いていた。
目が合った瞬間、びくっと肩を震わせる。
「……また怖がられてるな」
「予紬さん、顔怖いので」
「お前も最初怯えてただろ」
「今は好きですよ?」
さらっと言う。
ルカが「うわまた言ってる」みたいな顔をした。
「しゆら最近すぐそういうこと言う」
「え?」
「予紬、毎回固まるし」
「ルカ」
「痛いっ」
しゆらが軽くデコピンした。
その様子を見ていた半魔の子供が、小さく笑う。
地下の空気が少しだけ柔らかくなる。
その時。
壁際の古いモニターから、ニュース音声が流れた。
『——政府は本日、半魔管理法改正案について——』
誰かが慌てて音量を下げる。
地下に、一瞬だけ静かな空気が落ちた。
だが次の瞬間。
「予紬ー! ルカ薬飲んだら褒めて!」
「ガキかお前は」
騒がしい声が地下へ響く。
しゆらは笑いながら薬瓶をルカへ押しつけていた。
「ちゃんと全部飲んでください」
「苦い!」
「昨日も同じこと言ってました」
「だって昨日も苦かった!」
「当たり前だ」
俺がそう言うと、ルカは露骨に嫌そうな顔をした。
その様子を見ていた半魔の子供達が小さく笑う。
地下区画には、地上にはない妙な緩さがあった。
誰も誰かを“研究対象”として見ていない。
少なくとも、ここでは。
「予紬さん」
しゆらがふとこちらを見る。
「今日は疲れてます?」
「別に」
「嘘です」
即答だった。
「眉間ずっと怖いです」
「元からだ」
「いつもの怖さと違います」
細かい。
俺は小さく息を吐き、近くの机へ腰を預ける。
するとルカがじっとこちらを見たあと、ぽつりと呟いた。
「上のやつら、またなんか言った?」
空気が少し静かになる。
しゆらも笑みを引っ込めた。
……妙なところで勘がいい。
「いつものことだ」
そう返すと、ルカはむっと耳を伏せた。
「嫌い。上のやつら」
「ルカ」
しゆらが小さく名前を呼ぶ。
だがルカは止まらなかった。
「だってすぐ怖い顔するし、閉じ込めるし、変な薬打つし」
その言葉に、部屋の隅にいた魔獣達まで静かになる。
地下にいる連中は、大なり小なり似た経験をしていた。
だから誰も否定しない。
しゆらは少し困ったように視線を落としたあと、ルカの頭を撫でる。
「……でも、予紬さんは違うですよ」
「違う?」
「うん」
ルカが首を傾げる。
しゆらは少しだけ笑った。
「予紬さん、怖い顔しててもちゃんと見てくれるので」
「褒めてるのかそれ」
「褒めてます」
真顔で返された。
周囲から小さく笑いが漏れる。
その空気に混ざるように、物陰にいた半魔の子供がそっと近づいてきた。
さっきまで予紬を怖がっていた子だ。
おずおずと俺の白衣を引っ張る。
「……なんだ」
子供は少し迷ったあと、小さな紙を差し出した。
ぐしゃぐしゃに折れた紙だった。
開くと、クレヨンみたいなもので描かれた絵が出てくる。
黒い塊が二つ。
あと白っぽい何か。
「……これは?」
「しゆらと、よつむ」
「俺こんな黒いのか」
「いつも黒い服だからです」
しゆらが横から覗き込みながら笑う。
子供は少し恥ずかしそうに俯く。
「……あと、ルカ」
「ボクちっちゃ!」
ルカが抗議し始めた。
地下にまた笑い声が広がる。
その時だった。
ピシッ。
小さなノイズ音が鳴る。
壁際のモニターが、一瞬だけ赤く点滅した。
誰も気づかないくらい、短い音。
だが。
俺だけは、ゆっくり視線を向ける。
地下区画外周センサー。
異常反応。
……誰かいるな。