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先月僕の好きな人が死んだ。
警察の調べによると自殺だったらしい。
僕は涙が出なかった。驚かなかった。
彼女が近いうちにいなくなってしまうような気はしていたから。
「 僕さ、めっちゃ勘当たるんだよね 」
「 生まれてこの方勘外したことないんだ。嘘みたいでしょ? 」
『 うん。嘘みたい笑 』
『 でも…..、なんだかホントのような気もする 』
『 夏くんってどこか人間離れしてるところがあるから笑 』
「 なにそれ、僕が化け物だって言いたいの?笑 」
『 あははっ、違うよ笑 』
『 人間離れしてる超人ってこと!スーパーサイヤ人! 』
彼女の名前は はるこ といった。
春に恋をすると書いて春恋だ。
僕達が初めて会った時、春恋はこう言った。
“ 春恋なんて漢字は可愛いかもしれないけど、ちょっとおばあちゃんみたいで私は嫌なの “
頬を膨らませながらそう言う春恋はとても愛らしかった。
春恋に出会い、異性に対して愛らしいという感情が僕にも湧くのか、と安心した事を覚えている。
そこからは早かった。
僕は春恋に恋愛感情を抱き、春恋も僕に恋愛感情を抱いてくれていた。
でも僕と春恋が恋人になることは無かった。
『 …….ねぇ、夏くん 』
「 なあに? 」
『 ……..ふふっ、 』
「 えー!なに?何を言おうとしてたの?笑 」
『 いいや、何を話そうとしたか忘れちゃったわ笑 』
「 ははっ、なんだよそれ笑 」
今思えば、こんな他愛もない会話の中に春恋のこれまでの人生が詰まっていたのかもしれないなと思う。
春恋は、春恋はきっと、僕に伝え忘れている事があると思う。それもたくさん。
僕も春恋に伝えなきゃいけない事がまだ山ほどあるのに。
悔しいな。悔しいな。なんで春恋が。
なんで春恋が自殺なんて ─────
ごめん、春恋。
僕はもう無理だ。
春恋なしでは生きられない。
春恋は僕の命より大切で、他の人より何百倍もの幸せを感じて欲しかった。
あのお日様みたいな笑顔で助け出してほしかった。
もう殺しなんてしなくていいんだよ、もう明るい世界で生きていいんだよ、って。
ああ。僕が春恋にして欲しかったのはそんな事だったのか。
慰めて欲しかったのか、今まで人を沢山殺してきた罪を一緒に償ってほしかったのか。
春恋ならこんな僕でも認めてそばにいさせてくれると思い込んでいたんだろうか。
生まれて初めて心の底から守りたいと思った人。大好きな人。
そんな人の死の真相を、僕は黙っておくことなんて出来ない。
今からちゃんと話すね。春恋。
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