──────ラテ視点──────
「あははッ!当たってないよ〜?」
そう言いながらダークが四方八方から刀を繰り出す。どうやら鏡と闇を操るようで、私の攻撃は鏡に反射してかえってくるし、相手側からは鏡を通して死角を狙われる。
相手側には私の攻撃は通らず、相手側の攻撃は当たる。最悪だ。こんな一方的なことは無いのではないだろうか?そして、極めつけは。一緒に戦っている見方はいえもんであった。───人間。能力を持ってしても弱い。相方としては1番望ましくない。願わくは、ウパと───。なんて、叶わない望みを抱えながら私は試行錯誤を繰り返す。
「効かないよ〜?ほーらっ!もっと頑張って!」
そう言いながら攻撃の速度がさらに上がる。かわすのに専念することにする。そうでもしないと避けきれない。後ろ、前との同時、斜め上、斜め左、右。捌ききれないほどの数に、いつしか致命傷を避けるに変わる。非常にまずい展開だった。しかし、あいつに攻撃を当てる手段がない。
だから。やるしか無かった。そうそうに手札を切る。
(召喚───『ケロベロス』ッッ!!!)
心の中でそう叫ぶと、三つの顔を持つ大きな狼が現れる。私の親友の『ケロベロス』だ。いつから友達だったのか、会った日も覚えてないほど昔からの付き合いだった。
「───お前か。愉快な奴は。」
そう言ってダークはケロベロスを視界に入れることなく鏡によって切られる。
───が、甘い。ケロベロスが三つ頭があることを知らないのか。そのままダークはケロベロスに頭から丸かじりされる。
───パキンッ
硝子が割れるような、しかし、どこか軽い音が聞こえる。続け様にバキンッパキッと言った割れる音が響く。どうやらケロベロスが噛み砕いているようだ。しかし、おかしい。普通こんなガラスの音は聞こえないはずだ。天使の体だからだろうか?しかし、と思っているといえもんさんの叫び声が聞こえる。あんなにも叫んでいる様子は見たことがなかった。
「───ダークは死んでなッッ!!!」
そんな声とともにケロベロスは背後からあっさりと切られる。いや、切られたのかすら分からない。ケロベロスはダークが刀を振るのと同時に姿を消す。何が起きたのか、私には見えなかった。
「仲間を召喚するなんて卑怯じゃない!」
そうダークが言うが、その表情は笑いで満ちている。責めるような物言いではなく、まるで諭すかのような言い方だった。
「ケロベロスをどこにッ!ウ”,ッッ!?」
脳内に記憶が流れ込む。私が知らない記憶。存在しない記憶。その記憶が私の記憶を上書きし、侵食する。───どちらが本物の記憶か分からなくなってくる。思考が濁る感覚。ひたすらに不快感が募るが、ある時思考がサッと明るくなる。───いえもんが裏切った、と。
いえもんがウパを殺したシーンが脳内を巡る。いえもんが狂気的な笑いを浮かべながら、ウパを滅多刺しにした光景。ウパの悲痛で歪む表情。その時の私の感情が鮮明に思い出せる。
───あぁ、思いだした。そうだ。今こそ復讐を果たすときなのだ。
私は火炎を手から操る。ウパの敵討ちである。
──────いえもん視点──────
あぁ、やらかした。情報共有がすんでいなかった。そんなことを悔やむが、もう遅い。ラテさんは俺に炎をぶつけ始める。
あんなにも距離があったというのにそれを一瞬で詰める反射神経。先程までダークの猛攻のほとんどを裁き切っていたその強さが仲間に牙を剥くのは驚異である。
(安心しろ。俺に任せろ。)
心強いことを言うのはノイズである。俺にはどうすることも出来ないので体の主導権をノイズに受け渡す。
───ノイズ───
いえに託された。俺は、いえのためではない。ただ、最高神と話がしたい。俺と最高神が交した契約。下界に手出しをしない。それをことごとく破りやがった。俺は、神に合わなければならない。
「能力───『解放』───ッッ!!!」
何度でも言う。俺は『勇者』だ。神に嫌われている人間の中で唯一神の寵愛をこの身で受け、勇者と言う人外を殺す役目を与えられた。『下克上』を命じられたもの。
神の手下でしかない天使や悪魔なんかの能力を無効化するなんて御茶の子さいさいであった。
「───はッお前が噂の勇者様かッ」
ラテさんがプツンと意識が切れ、そのままふわふわの雲の上で倒れる。
ダークは冷や汗をたらりと流し、こちらを見る。驚いたのは、俺が勇者だと一目で気付いたことだった。
「俺を知ってるのか?」
俺が尋ねればダークは乾いた笑いを浮かべながら
「そりゃそうだろ。神の寵愛を受けた人間なんて。有名に決まってる。───それが転生したとなれば尚更だ。」
「転生…俺がか?」
転生───言われてみればしっくりと来ることだった。勇者だった俺の魂がただの人間の器に耐え切れるわけないのだから。ただ、俺の転生体ならば納得は行く。確かに容姿は似ているしな、なんて無理に納得いく要素を並べていくが、いまいちピンとくる事はなかった。とりあえず、目の前の敵を斬ってから考えることにした。
ここで切ります!なーんか最近情報量多いですねー。ぶっちゃけ番外編で明かそうとしてたものを本編で無理やりめくってるのでこうなってしまった…みたいな感じですかね。個人的にはラテさんを簡単に戦線離脱させてしまったのが1番腑に落ちない。まあ、ラテさんの1番の見所はまだ残ってるので許してください。お察しの通り、しばらく視点がコロコロすると思います。ご了承ください!
それでは!おつはる!
コメント
4件
記憶上書きされるまでその認識があるのにされてからはそれに違和感持てないのかしらね、表現難しそう
らてさんうぱさん倒したのはひなちゃん!!(だったはず)